元旦にAmazonプライムで視聴
高度成長期、万博が開催された1970年
伊丹空港近くの集落で焼肉屋を営む在日コリアン家族のドタバタコメディ
正直、バラック小屋の風景も
すぐに罵り合うシーンも決して美しいとは言えず
最初、元旦に観る映画じゃないかもと少し後悔した
でも次第に引き込まれた
元は戯曲だという
舞台は韓国でも3度上演され高評価だったらしい
〈登場人物〉
▪️アボジ(韓国語で父)
焼肉ドラゴンの店主
名前の一文字の龍を店名にした
長女と次女を連れて再婚
戦争で左腕をなくしている
▪️オモニ(韓国語で母)
四・三事件でチェジュ島から逃げて来た
来日して三女を連れて再婚
▪️長女
子どもの頃のケガが原因で片足が不自由
後に次女の夫と結婚する
▪️次女
長女の幼馴染と結婚するが
夫はもともと長女が好きな事を知っている
離婚前に露骨に別の男性と付き合い再婚する
▪️三女
クラブ歌手
既婚の支配人と付き合っており
その妻とは店内で取っ組み合いの喧嘩をする
妊娠し支配人と略奪結婚
▪️長男
現在の夫婦両方の血を引く唯一の子
父親の希望で私立中学に進むも
酷いイジメにあい不登校になる
留年になり絶望して自殺してしまう
三姉妹はいずれも美人だけど
揃いも揃って気性が激しい
だけどたくましい
対して長男は若干弱い
でもあれだけ酷い事を毎日されてたら
絶望するのもわかる
もし公立中学か韓国学校に行かせていたら
違っていたかも知れない
アボジは日本で生きていく為に
教育が必要と思ったのだろうけど
いきなり背伸びし過ぎた
彼らのバラックは国有地にある
滑走路増設の為、立ち退くよう再三命じられるが
勝手に住み着いたわけじゃないらしい
アボジ曰く「醤油屋のさとうさんから買うた!」
戦後のドサクサで詐欺にあったのだとしたら
気の毒だ
さんざん抵抗をするが
結局は立ち退きを受け入れてそれぞれ旅立つ
長女夫婦は帰還事業で北朝鮮へ
次女夫婦は韓国へ移住
三女夫婦だけが日本に残りスナックを始める
アボジとオモニはリヤカーを引いてどこかに向かう
桜が散る中、明るくそれぞれの道に向う
でも彼らは本当は知っている
次に行く場所も苦難が待っている事を
観ている私たちも知っている
この家族はもう全員が集まる事は出来ない
特に北に行った長女夫婦とは
手紙のやり取りさえ難しいだろう
三女が妊娠して略奪した夫を実家に連れてきた時の父親の昔語り
戦争経験、前妻を亡くした事、全財産が一瞬で無くなった事
「働いて働いて」のセリフが何度も出てくるのには泣ける
それでも「これがワシの人生」と静かに受け入れていた
アボジとオモニを演じたのは
どちらも韓国の実力派俳優
特にオモニは映画「パラサイト」に出ていたので知っている人が多いかも知れない
ちなみに国有地を売った(騙した)
醤油屋のさとうさんの話は
監督自身の姫路城近くにあった実家の実話との事
1970年の万博の頃は
日本人だってまだ貧しい人が多かった
でも今と違うのは明日、来年、いつか
未来への希望が持てる明るさがあった
焼肉ドラゴンの家族も
それぞれの場所で明るく生きていたらいいな