1963

主に昭和の頃の思い出と旅行の備忘録
ときどき愚痴

2025最初に観た映画〜焼肉ドラゴン〜

2025-01-04 20:57:00 | 映画
元旦にAmazonプライムで視聴

高度成長期、万博が開催された1970年
伊丹空港近くの集落で焼肉屋を営む在日コリアン家族のドタバタコメディ

正直、バラック小屋の風景も
すぐに罵り合うシーンも決して美しいとは言えず
最初、元旦に観る映画じゃないかもと少し後悔した
でも次第に引き込まれた

元は戯曲だという
舞台は韓国でも3度上演され高評価だったらしい

〈登場人物〉
▪️アボジ(韓国語で父)
焼肉ドラゴンの店主
名前の一文字の龍を店名にした
長女と次女を連れて再婚
戦争で左腕をなくしている

▪️オモニ(韓国語で母)
四・三事件でチェジュ島から逃げて来た
来日して三女を連れて再婚

▪️長女
子どもの頃のケガが原因で片足が不自由
後に次女の夫と結婚する

▪️次女
長女の幼馴染と結婚するが
夫はもともと長女が好きな事を知っている
離婚前に露骨に別の男性と付き合い再婚する

▪️三女
クラブ歌手
既婚の支配人と付き合っており
その妻とは店内で取っ組み合いの喧嘩をする
妊娠し支配人と略奪結婚

▪️長男
現在の夫婦両方の血を引く唯一の子
父親の希望で私立中学に進むも
酷いイジメにあい不登校になる
留年になり絶望して自殺してしまう

三姉妹はいずれも美人だけど
揃いも揃って気性が激しい
だけどたくましい

対して長男は若干弱い
でもあれだけ酷い事を毎日されてたら
絶望するのもわかる
もし公立中学か韓国学校に行かせていたら
違っていたかも知れない
アボジは日本で生きていく為に
教育が必要と思ったのだろうけど
いきなり背伸びし過ぎた

彼らのバラックは国有地にある
滑走路増設の為、立ち退くよう再三命じられるが
勝手に住み着いたわけじゃないらしい
アボジ曰く「醤油屋のさとうさんから買うた!」
戦後のドサクサで詐欺にあったのだとしたら
気の毒だ

さんざん抵抗をするが
結局は立ち退きを受け入れてそれぞれ旅立つ

長女夫婦は帰還事業で北朝鮮へ
次女夫婦は韓国へ移住
三女夫婦だけが日本に残りスナックを始める
アボジとオモニはリヤカーを引いてどこかに向かう

桜が散る中、明るくそれぞれの道に向う
でも彼らは本当は知っている
次に行く場所も苦難が待っている事を

観ている私たちも知っている
この家族はもう全員が集まる事は出来ない
特に北に行った長女夫婦とは
手紙のやり取りさえ難しいだろう

三女が妊娠して略奪した夫を実家に連れてきた時の父親の昔語り
戦争経験、前妻を亡くした事、全財産が一瞬で無くなった事
「働いて働いて」のセリフが何度も出てくるのには泣ける
それでも「これがワシの人生」と静かに受け入れていた

アボジとオモニを演じたのは
どちらも韓国の実力派俳優
特にオモニは映画「パラサイト」に出ていたので知っている人が多いかも知れない

ちなみに国有地を売った(騙した)
醤油屋のさとうさんの話は
監督自身の姫路城近くにあった実家の実話との事

1970年の万博の頃は
日本人だってまだ貧しい人が多かった

でも今と違うのは明日、来年、いつか
未来への希望が持てる明るさがあった

焼肉ドラゴンの家族も
それぞれの場所で明るく生きていたらいいな


2024最後に観た映画〜PERFECT DAYS〜

2025-01-01 06:45:00 | 映画
大晦日の夜、お雑煮の下ごしらえをしながら視聴
2023年 日本・ドイツ合作
主演 役所広司(カンヌ国際映画祭 男優賞受賞)

東京スカイツリーが見える古いアパートに住む
初老の男性平山は渋谷区内の公衆トイレを巡回して清掃の仕事をしている

彼の1日は早朝から始まる
缶コーヒーを買ってワゴン車で現場に向かう
車内で聞くのは古い洋楽のカセットテープ

仕事は丁寧で真面目に取り組む
無口だけどお人好し
お昼はいつも神社の境内のベンチで
コンビニで買ったサンドイッチと牛乳

朝早い分、明るいうちに帰り
自転車で開店間もない銭湯に行く
そのあと浅草の地下居酒屋で軽く飲む
夜は古本を読み就寝
毎日同じ生活

淡々とした生活なのだから
映画も淡々としたものになる

退屈しそうなのに不思議と飽きずに観られる
よく考えたら場所や職業が違うだけで
毎日変わらない生活は
ほとんど自分と一緒だった

彼には趣味がある
読書と植木を育てる事と植物や風景の写真を撮る事
趣味も物静かだ

このまま2時間終わるのかと思ったら
ほんの少しだけさざなみが立った
同僚の若い男性の恋愛沙汰や
家出した姪っ子が訪ねて来たり
ちょっといい感じのスナックのママの元夫との邂逅とか
でもどれもすぐに丸く収まった

ラストシーンで平山がワゴンを運転しながら泣き笑いする
理由は明確じゃないので想像するしかない
年齢的にやり直しはきかない
俺の人生、これでよかったのか?
いや、良かったんだ、、
そんな葛藤に見えたけど
この泣き笑いの尺が長過ぎて
かえって解りにくくなってしまった

でもきっと彼は今日も明日もずっと
また同じ日々を生きるのだろう
大抵の人がそうするように

淡々とした平凡な毎日の繰り返しが
実は幸せで尊いという事に普段は皆気がつかない















最近観た映画〜6888郵便大隊〜

2024-12-31 08:47:00 | 映画
クリスマスイブにNetflixで視聴
2024年製作 アメリカ映画

第二次世界大戦中の実話
有色人種の女性だけで構成された6888大隊
露骨な差別や妨害に立ち向かい任務を全うする女性達の活躍

ある日、ルーズベルト大統領夫人が帰宅すると
門の前に1人の婦人が佇んでいた
執事に尋ねると何日もいるらしい

大統領婦人は彼女に何か話があるのか聞くと
ヨーロッパに派兵された息子からずっと手紙が届かないという

調べさせると
戦線では家族から息子達への郵便も
息子達から家族への郵便も
どちらも長く配達が滞っていた

戦地では家族からの手紙が励みになる
兵士達の士気を高めるため
6888大隊に手紙を配達させる特別任務が与えられた

訓練を受けてヨーロッパに派遣される6888大隊の女性たち
船酔いのシーンは辛そうだった😭

いよいよ任務開始
郵便物は広い格納庫に山盛りに積まれている
しかもそれがいくつもある
全部で1700万通
これを僅か6ヶ月で仕分けし配達しなければならない
6888大隊の指揮官アダムズ大尉(のちに中佐)は
「できると思われて選ばれたのではない
出来ないと確信したから送り込まれたのだ」と檄を飛ばす

郵便物の仕分けから始めたものの
日にちが経っているので宛先が判別不能だったり
同姓同名が7000人もいたりする
しかも所属部隊は移動するから
今どこにいるのか判らない

皆のモチベーションも下がり最初のうちは遅々として作業が進まない

こんな状況なのに
上層部の白人男性どもは急かすばかり
しかも必ず侮蔑的な発言をする
黒人だから、女だから、、
頭が悪いとか能力が劣るとか平気で口にする💢
本当に意地悪過ぎて観ているこちらが恥ずかしくなったわ😤

ひどい事を言われても軍隊は階級社会
立場上、言い返せない
アダムズ大尉はグッと拳をにぎる
他の女性隊員達も拳を握りしめる
彼女達のセリフにもある
「生まれた時から戦っている」のよ

皆んな見返してやろうと俄然頑張る
封筒に隊員がしるした部隊のマークに気づいて
居場所を特定できたり
驚いたことに手紙に付けられた香水から
相手を特定したりで
なんと期限の半分の3ヶ月で郵便1700万通は配達されたのだ

これには馬鹿にしていた白人男性達も
敬礼で敬意を払っていた

映画の最後に現在100歳の元女性隊員が登場する 
彼女(リナ)は婚約者を戦闘で亡くし
悲しみから自分も志願して6888に入隊した人
とても100歳に見えない💦
目に力があり、話し方も力強い

彼女達は頑張ったのに
アメリカに戻ってからも評価はされず
75年も経ってこの実話の本が出版されて
やっと活躍が陽の目を見るようになった
遅すぎるけどね

途中で何度も泣いてしまった
クリスマスに観るなら
ホームアローンとかブリジットジョーンズの日記の方が軽く楽しめたかも知れない
でも私には最もクリスマスに相応しい映画だった
アメリカ映画らしく最後はスッキリ

劇中驚いたのは6888大隊の兵舎に
美容室があった事
パーマもかけられる設備があった
暖房の効きが悪い劣悪な環境とはいえ
身なりを整える余裕があったのね
制服もロングスカートにポシェットみたいのを下げてたし可愛いかった
日本のモンペ姿とか美人女優が着ても全くかわいくない

そういえば昔観たベトナム戦争映画(タイトル忘れ)で
アメリカ兵達の移動のヘリに
ロープでサーフボードが吊るされていた時も
戦争中もサーフィンする余裕があるんだと驚いたことがあったわ

どんな時も休憩やリフレッシュは必要ね

最近観た映画〜幸せの列車に乗せられた少年〜

2024-12-13 21:48:00 | 映画
久しぶりにイタリア映画を観た
映画館ではなくNetflixだけど

第二次世界大戦後のイタリア
生活が困窮している南部の子ども達を
比較的豊かな北部の家庭が一時預かりをする
そんな制度があった
北部に行く為の「幸せの列車」
「子ども列車」とも言うらしい

共産党の女性連合が中心となった運動で
7万人の子ども達が里親の元で
食事や衣類、教育も提供され貧しさから救われた(一時的にだけど)

舞台はナポリ
そこで母のアントニエッタと2人で暮らすアメリーゴ少年
衣類は汚れ破れて靴も履いていない
他の子ども達も同じく貧しいみなりでお腹を空かせている

母親達は子どもを豊かな北部に行かせるように誘われるが
毒で殺されるとか
かまどに入れられるとか
周りの雑音もありなかなか決断できない

それでも食べるにも困る生活
意を決して子どもを幸せの列車に乗せる母親たち

見送りのシーン
列車が動き出す時
子ども達は寄付されたのであろう
温かな上着を脱いで一斉に窓から親に渡す
弟や妹達に着せるために😭

到着した北部は豊かで人々も皆優しい
実に善人だらけ
食べ物も沢山ある

ここで私は緊張していた
優しさは見せかけで
きつい労働をさせられたり
性的虐待を受けるのではないか

全くそんな事はなく
最後まで里親家庭はみな優しく温かい
地域ぐるみで大切にしてくれるのだ

最初は警戒していた子ども達も
どんどん馴染んでいく
実際にそのまま自宅に戻らず北部に残る子もいたようだ

アメリーゴ少年は
里親のデルナを母親のように慕う
子どもが苦手だったデルナもアメリーゴに愛情を注ぐようになる

デルナの兄から手作りのバイオリンをプレゼントされたアメリーゴ
もともと才能があったのだろう
初めてとは思えないくらい上手だ

北部に到着した頃、青かった麦畑
黄金色になったら家に帰る、、
その約束の時が来た

デルナや豊かな北部に後ろ髪をひかれながらも
ナポリの母の元に帰るアメリーゴ
しかし2人はギクシャクする

母親のアントニエッタは
あまり愛情表現が上手くない
北部の里親への幼稚な嫉妬もある

アメリーゴが大切にしていたバイオリンを
質屋に売り食料に変えてしまう

絶望したアメリーゴは北部のデルナの元へ行く
その後、実の親子は会う事なく40年以上の月日が経つ

ラストはあえて書かない

以下お気に入りシーン
アメリーゴにバイオリンをプレゼントしてくれた男性の息子ルツィオ
彼は最初からアメリーゴが気に食わず
ことある毎に意地悪をする
2人は取っ組み合いのケンカもするが
ある事がきっかけで助け合う

黄金色の小麦畑でこの2人の少年が戯れ合うシーンはとても美しかった

『ひまわり』のひまわり畑のラストシーン
『ニューシネマパラダイス』のキスシーンを集めたラスト

やっぱりイタリア映画は美しい