乾いた猫 2004年07月02日 | ログ 水分は彼の猫には、一滴たりとも残されていなかった 毛の抜けた頭部から干乾びた爪先にいたるまでの、徹底した乾き 首に括られた鈴だけが憂いを帯びた光沢を放っている 「・・・これは一体・・・」 隻眼の紳士が搾り出すような声を出した 傍らのエドヴァード婦人は既に気を失い身体を後ろに控えていた召使に任せている 成るほど。確かに「人あらざる殺人だ」 私は周囲の環境情報を記憶素子により結い上げ脳内に一つの本を作り出す タイトルは「乾いた猫の物語」 そうしておこうか。
寝不足な海 2004年07月02日 | ログ 鯨は目を赤くしたまま沈んでいった 誰も彼を責めなかった 海が眠りを忘れてから既に120日 誰もが睡眠を欲し、だが眠れずにいた 鯨が沈んでゆく 誰も彼を責めなかった それは海の終わりを意味していたけれど