砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

ボクス

2004年07月05日 | ログ

「『適切』が肝要なのよDJ」

戦略担当のマネージャーは言った

「亜高速のフットワークやメガトン級の破壊力もいらないわ。
 
 ただ適切な状況で適切な一撃を相手に与える。それがボクシングよ」

頷く。彼女の言葉はデータ上でも私の電子脳による思考演算の結果とも一致する

「イエスマム。『適切』が肝要です」

彼女は私の返答に満足そうな笑みを浮かべた

「今回の相手はディジェⅦ型。追加兵装のレールジャブに注意して」

Ⅶ型。つまりは私より七回り程優秀な新型ということになる

データ上での彼我の戦闘能力差は実に35倍

勝率に至っては小数点の五つ程数えてようやく数字が出てくる程だ

だがそんなものは関係ない

適切が肝要なのだ

タイミングよく、必要な力で、殴る

戦闘用アンドロイドの兵装は例え骨董品クラスの旧式でも十分な破壊力を持つ

フロアの音楽が切り替わる。始まりの合図だ

「頑張りなさいDJ。そして勝ちなさい」

頷く。そして答える

「イエスマム。私にとって戦場は適切な場です」

メス

2004年07月05日 | ログ

メスは暴れる

悲しみを喰らうように

細型の金属片は孤独を嫌い皮膚組織を泳ぎ回る


血が 出る

メスはその血流を川と捉え自らを一匹の魚に例える

肉を喰らいながら つまりは裂きながら

メスは泳ぎ 暴れる

悲しみを喰らうように

身体を苛め抜く

川より海へ至ろうと