砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

♯40 リアリティ

2006年02月10日 | ログ

ワドさんの「リアリティーって何さ」を読んで考える。
リアリティーとは何か。
砂蜥蜴は○○とは何か、という問題に対し常に一言で言えばどういうことなのか考えます。
リアリティーとは「現実性」の意味を持った記号です。
では現実とは何か。
最も厳密な意味で解釈するならば「事実」を基本とした世界でしょう。


しかしリアリティーは事実世界と矛盾しながらも認識される言葉です。
世界に一例も存在しない物語でも「リアリティーがある」と言われる作品もあれば
その逆もまたしかり。
仮に人類がほうきに乗って空を飛べる人間が過去に存在したとしても
「ほうきに乗って自在に空を飛ぶ女の子」にリアリティーはないでしょう。多分。


では事実として存在しない物語はどのようにリアリティーを獲得するのか。
砂蜥蜴学ではこれを「日常的記号」「描写」「論理」だと考えます。


日常的記号は最も簡単にリアリティーを獲得できる方法です。
「赤いマラフーを買った平凡な顔立ちの女性が強盗殺人に遭う」
これがニュースに流れても私達はそれにリアリティー、いやそれ以上の「事実」として認識するでしょう。
それは文章に使われた単語が全て日常的記号で構成されるからです。
世界に赤いマフラーを買った女性が強盗殺人にあったという事実があったかは問題ではないのです。
その現象を構成するパーツにどこまで共感性があるか。
それが重要なのです。
逆にパーツを非日常にするとこんな現象が出来ます。
「蜂蜜700キロを購入した絶世の美少女が殺人鬼を返り討ちにする」
初期のライトノベルのような展開ですね。
この手の「荒唐無稽型ライトノベル」の面白さは一部に日常性を持たせながら
非日常性を効果的に使う所が・・・って話が逸れましたね。



第二に「描写」があります。
私が好きなSF作品のの一つに小川一水の「復活の地」は強いリアレティーを感じさせます。
内容が「近未来の別惑星で起きた災害復興物記」にも関わらずです。
その理由の一つに「描写の精密性」があります。
復活の地では災害に対し混乱する人々やそれに対応する様々な民間組織、官僚組織、警察組織が描かれています。
その描写が非常に細かいからこそ読み手は物語に現実を感じるのです。
もちろん砂蜥蜴は書かれている細かな内容が実際にそうなのかは知りません。
しかし描写されること。情報を与えられることはそれ自体が事実性を持つと私は思っています。
もちろんケースバイケースですけど。
私は文学論について無知ですが小説で補足情報(高価な品を出すことで身分の高さを補足することや説明的な台詞を嫌い代用説明させる)や情景自体に意味がある場面以外でも多々状況描写が行われるのは
現実性、事実性の補完要素なのかなぁと思っています。


第三の論理ですがこれは前項でも出た「情報を与えられる事自体が意味を持つ」と強く関係しています。
ガンダムは当時としては非常にリアリティーの高いアニメ作品として有名です。
それは単純な戦闘だけでなくその背後に戦闘が起きる原因。
すなわち「政治」「思想」を背景として与えたことが有名ですが
それ以上に「ロボットに関する論理」がファンを喜ばせたのだと思います。
ガンダムにはビームサーベルなる近接武器があります。
時代は近未来なので当然ミサイルやレーザーが存在します。
誰だって戦闘するのなら長距離で戦闘すればいいと思います。
そこで作者は「ミノフスキー粒子」という仮定の粒子を使いました。
簡単に言えばこれを使うと従来までのミサイルやレーザーの命中率が下がります。
これにより大鑑巨砲主義的であった過去の兵器が淘汰され
機動性に優れたMSが活躍する時代がやってきます(かなりはしょってるのでガノタの人は許してください)
もちろん現実にミノフスキー粒子は発見されていません(あったらいいですね)
ですが人々はこれをリアリティーと呼びました。
なぜか。
「どうして接近戦を行うのか。どうして人型高機動兵器が必要なのか」
という疑問に理由を与えたからです。
そこに事実性は関係しません。
あるのは設定されたルールが設定された世界観の中で矛盾していないかどうかです。

また「論理」の側面として「権威」がありますね。
科学的に証明されていれば一般人はそれは正しいと認識します。
これはロジックが正しいかを判断しているのではなく
科学がこれまで為した功績を信仰しているということでしょう。
古代で「これは科学的に証明されたことです」といっても誰も信じないでしょう。
少なくともその言葉の論理を自分で解釈した上で人々は判断するでしょう。


長くなってきたのでここらで一応まとめておきます。
砂蜥蜴学におけるリアリティーの定義とは。

「現象を構成する要素が共感性、想像的共感性をもつこと」
「十分な描写性を持つこと」
「一定のルールを所有すること」
「現象を権威が保障すること」

としておきます。