確か、小学5年くらいのとき
父の日に、僕は絵を描いて
父に渡した
ネクタイの絵をクレヨンで描いて
父に渡した
夕食のとき 家族みんながいる前で
僕は、その絵を父に渡した
僕は、絶対、喜んでくれるだろうって思っていた
だけど、父は、ありがとーって言ってくれたけど
ただそれだけだった
まわりにいた家族も、ほとんど
リアクションが無かった
父は、「さー、ごはん、ごはん」と言って
ごはんを食べ始め
母も姉も祖父母も
それぞれ、次の話題に移っていってしまった
僕は、なーんだ、つまんないーって思った
あの絵じゃ、ダメだったのかなあって思った
もっと他の絵にすれば良かったのかなあって思った
そもそも、絵なんてもらっても嬉しくないのかなあって思った
だけど、最近になって
たまたま、母が話してるのを聞いてしまった
近所のおばさんに話してるのを聞いてしまった
「あの子もまだ子供だったし、お金も、もってないし、
だから、ネクタイの絵、描いて、お父さんに
プレゼントしてくれたの」って
・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は、びっくりした
あれから、もう数十年経ってるのに
母は、ちゃんと憶えていてくれた
あんまり、リアクションが無かったはずの
あの日の出来事を
ちゃんと憶えていてくれた
しかも、嬉しそうに、懐かしそうに
母は、話していた
もしかしたら
父も、本当は、凄く喜んでくれていたのかも知れない
きっと、そうかも知れない
多分、そうかも知れない
って、僕は思った
そして今年も、父の日がもうすぐやってくる