へなちょこな詩 その３９ 宮尾昌成

僕は、こないだ、福島県のいわき市へ行った

北陸新幹線で上野まで行って

上野で常磐線に乗り換えて湯本まで行った

僕は常磐線の電車の中で駅弁を買って食べたいと思っていた

でも、最近、車内販売をやめてしまう電車が増えている

常磐線でも車内販売をやってるのか不安になってきた

それで、僕は、上野駅での乗り換え時間に

駅のお弁当屋さんのおばさんに、たずねてみた

「あのーーーーー　常磐線ってーーーー

車内販売ーーーやってますかーーー？」

すると、そのおばさん、即答で答えてくれた

「常磐線は、やってないですよ！車内販売ーーーーー」

僕は、聞いて良かったと思った

危うく、弁当食べ損なうとこだったーーーって

ラッキーって思った

で、僕は、そのおばさんの店で、駅弁を買って

常磐線の電車に乗り込んだのだった

ところが、電車が動き出した頃、車内放送が流れてきた

「車内販売からのご案内です・・・・・・・」

「え？」

僕は一瞬、耳を疑った

「車内販売？」

「ある？」

だけど程なくして、前の車両から

車内販売のワゴンを押す女性が現われた

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あのおばさん

上野駅の弁当屋さんの、あのおばさん

マジな顔してた

そして優しい顔してた

僕の目をまっすぐ見て言った

だけど、嘘だった

まっ赤な嘘だった

僕にお弁当を買わせるために

たった一つのお弁当を買わせるために

車内販売は無いと嘘をついた

さらりと、あっさりと、嘘をついた

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僕は、あのおばさんを、どう思ったらいいんだろう？

あのおばさんのことを、どう考えたらいいんだろう？

僕に、お弁当を買わせるために

自分のお店のお弁当を買わせるために

ただそのことのために

そんなに簡単に嘘をつけるんだろうか？

商売って、そういうものなんだろうか？

人って、そういうものなんだろうか？

生きるって、そういうものなんだろうか？

世の中って、そういうものなんだろうか？

僕は、そんなのはイヤだ

絶対に嫌だ

だけど、あのおばさん、勘違いしてたのかも知れない

きっと、勘違いしてたんだ

そうだ、そうに決まってる

僕は、そう思った

そう、思いたかった

そう、信じたかった

あのおばさんを、信じたかった