タイ国経済概況(2020年1月)


1.景気動向
(1)タイ中央銀行が12月30日に発表した11月の経済報告書によれば、タイ経済は引き続き減速傾向にある。輸出額は相手国の景気低迷、停滞する電気・電子部品市場の回復の不透明感等の影響を受けて前年同月比▲7.7%。また、民間投資指数も商用車の購入、建材の販売、資本財の輸入等すべての指数がマイナスとなり、同▲6.1%だった。一方で、民間消費指数は同+2.4%、外国人旅行者数も同+5.9%とプラスを維持。到着ビザを無料化している中国、インドおよび台湾からの旅行者のほか、ロシア経済が回復したことで同国からの旅行者が増加した。

(2)タイ工業連盟(FTI)が12月18日に発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比▲21.8%の15.4万台で、7ヵ月連続でマイナスとなった。内訳は国内向けが同▲19.1%の8.2万台、輸出向けが同▲24.7%の7.2万台。1~11月の累計生産台数は、前年同期比▲5.9%の188.0万台となり、FTIは、10月に下方修正した年間生産台数目標の200万台には到達する可能性が高いとしている。また、11月の国内販売台数は自動車ローンの引き締めが影響し、前年同月比▲16.2%の7.9万台にとどまった。輸出台数は同▲19.2%の7.5万台。1~11月の国内累計販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲1.1%の91.8万台、同▲6.1%の98.2万台となっている。

(3)FTIが12月18日に発表した11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲16.7%の20.3万台で、3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。内訳は完成車(CBU)が同▲9.4%の17.2万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲42.2%の3.1万台。1~11月の累計生産台数は、前年同期比▲10.9%の211.6万台。また、11月の国内販売台数は前年同月比▲7.0%の13.5万台だった。輸出台数は同+9.1%の9.4万台で、8ヵ月連続のプラス。


2.投資動向
(1)12月11日、中央賃金委員会が決定した最低賃金(日給)の引き上げを2020年1月1日から適用することが閣議で承認された。バンコクをはじめナコンパトム、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカーン、サムットサコン、チョンブリ、プラチンブリ、プーケットの9都県で一日あたり6バーツ、それ以外の県では5バーツの引き上げとなった。最低賃金が最も高いのはチョンブリとプーケットの336バーツで、最も低いのはナラティワート、ヤラ―、パッタニの313バーツとなる。最低賃金の引き上げは2018年4月以来。

(2)タイ投資委員会(BOI)は12月18日、EEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)への投資恩典パッケージの拡充を決定した。EECエリアに該当する3県を事業地とし、基本恩典で5年以上の法人税免除が付与されている事業に関しては、ほぼすべての業種が追加恩典の対象になった。また、科学技術人材の開発事業への投資、EECi(EECイノベーション)、EECd(EECデジタルパーク)、EECa(東部航空都市)、EECmd(メディカルハブ)に拠点を設ける投資事業にも追加恩典が付与される。同パッケージの申請期限は2021年末までだが、EECi、EECd、EECa、EECmdへの投資事業に関しては申請期限を設けない。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年11月末時点の金融機関預金残高は20兆3,657億バーツ(前年同月比+4.5%)、貸金残高は24兆7,452億バーツ(同+3.9%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のバーツ金利はすべての年限で低下。月初、米中通商交渉の早期合意期待の剥落等からリスクオフの動きとなりバーツ金利低下。中旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)は大方の予想通り政策金利は据え置きとなった反面、先行きの見通しが想定よりもハト派的であったが、バーツ金利への影響は限定的となった。その後トランプ米大統領が米中貿易合意を承認、それに伴い対中追加関税の発動が見送られたことでリスクオンとなったが、新未来党の大規模抗議集会開催でタイSET株価指数は下落、バーツ金利上昇となった。タイ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利据え置きとの見方がコンセンサスではあったが、予想外の利下げへの警戒感強くバーツ金利も上値重く推移。18日のタイ中銀MPCでは、全会一致で現状維持が決定された。下旬には中国政府が関税引き下げを表明したことでリスクオンとなる中、バーツ金利は低下。ウィラタイ・タイ中銀総裁が講演にて、来年の景気は回復が見込まれるものの経済成長のペースは満足できる水準ではなく、潜在成長率を下回っていることを指摘し、一段の金融緩和を排除しない考えを示したことや、中銀のインフレ目標が従来の2.5%プラスマイナス1.5%(1~4%)から1~3%に引き下げたこと等が背景。タイ国債10年物利回りは1.48%台、同5年物利回りは1.25%台と前月末対比それぞれ0.12%、0.14%低下となった。

(2)(1月の展望)
先月のバーツ金利は、米金利との相関性が低くリスクオン局面であっても金利上昇にはつながらなかった。あたかも、マーケットが中銀に対して利下げを促している感であった。来月までタイ中銀MPCの開催は予定されていないが、その間のタイおよび世界景気動向を確認する時間帯となるであろう。

〈為替動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のドルバーツ相場は月末に向けて徐々に下値を切り下げ、年内最終営業日となる30日の引け近くに急落し30を割った。月初、ドルバーツは30.2台前半でオープン後、米中通商交渉の早期合意期待の剥落等からアジア通貨安となった中、ドルバーツも30.3台まで上昇。さらにタイ中銀副総裁が海外投資家にとってバーツは安全資産ではなくなりつつある等、バーツ高けん制発言もありドルバーツは一時30.3台後半まで上昇し月間高値をつけた。中旬に開催された米FOMCでは大方の予想通り政策金利は据え置かれたが、先行き見通しがハト派的であったことからドルバーツは30.1台後半まで下落。その後、トランプ米大統領が貿易合意を承認したことや、それに伴い追加関税発動が見送られたことでリスクオンとなり、タイ中銀MPCを控えての警戒もあり30.2台を回復して推移。そういった中、タイ新未来党の大規模抗議集会が開催されたが、ドルバーツへの影響は限定的であった。18日に開催されたタイ中銀MPCでは、全会一致で政策金利は据え置かれた。下旬には中国が850品目以上の関税引き下げを表明したことを受けてリスクオンとなり、アジア通貨買いとなる中バーツもじり高に。月末30日、タイ祝日で流動性が薄くなっていたところ、損失確定とみられるドル売りバーツ買いのフローが出たことで、ドルバーツは急落し30を割り込んだ。タイ市場休場となった31日も海外市場ではバーツ買いが継続し一時29.7台まで下落となった。

(2)(1月の展望)
先月末は流動性が薄いところに損失確定のバーツ買いフローが発生したことで、ドルバーツは急落し30割れとなった。年明け後ドルバーツは反転して上昇し急落前の水準で推移となっている。この一連の動きに対してタイ中銀からはバーツ高への警戒感が示されており、バーツ高抑制策を打つ可能性もあることから当局者の発言にはより一層の注意が必要。米中通商協議は進展が期待される一方で中東情勢の緊迫化もあり、外部情勢への注意も引き続き必要。


5.政治動向、その他
(1)12月12日、金融財政政策委員会は、2021~2024年度の中期財政計画として公的債務をGDP比50%以下に抑えることを決定した。プラユット首相が議長を務めた。同委員会は2018年4月に施行された財政責任法に基づき設置されたもの。財務省は2019年9月時点で公的債務のGDP比が41.42%であることを発表しており、この数年は40%台前半を維持。同省が健全な財政維持の枠組みの中で定めている同比率の60%、中期計画の50%の、いずれの比率も下回っていることを強調した。

(2)1月4日、ワチラロンコン国王が、国王の諮問機関である枢密院の議長にスラユット元首相を任命したことが官報で告示された。スラユット氏はプレム前枢密院議長が2019年5月に死去した後、議長代行を務めていた。同氏は故プレム氏の首相時代の側近で、プミポン前国王により枢密院顧問官に任命された経歴があるほか、2006年の軍事クーデター後は暫定政権の首相を務めた経歴を持つ。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。

投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


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タイ国経済概況(2019年12月)


1.景気動向
(1)タイ中央銀行が11月29日に発表した10月の経済報告書によれば、タイ経済は減速が続いている。輸出額は前年同月比▲5.0%で12ヵ月連続のマイナス。また民間投資指数も機械や商用車販売、資本財の輸入額等、各指数がマイナスとなり同▲3.1%となった。一方、民間消費指数は同+1.3%、前月比+1.1%と共に上昇。外国人旅行者数は前年同月比+12.5%と引き続き大幅に伸びている。国家経済社会開発委員会(NESDC)は、11月18日に2019年のタイの経済成長率予測を+2.6%へと引き下げた。今年3度目の下方修正であり、年初は+3.5~4.5%の経済成長を見込んでいた。

(2)タイ工業連盟(FTI)が11月20日に発表した10月の自動車生産台数は、前年同月比▲22.5%の15.3万台で、6ヵ月連続のマイナスとなった。内訳は国内向けが同▲30.8%の6.9万台、輸出向けが同▲14.0%の8.4万台だった。FTIは生産台数が落ち込んだ理由について、米中貿易摩擦による影響が大きいと説明。1~10月の累計生産台数は、前年同期比▲4.2%の172.5万台となっている。また、10月の国内販売台数は前年同月比▲11.3%の7.7万台と、5ヵ月連続で減少。輸出台数は同▲8.3%の8.6万台。1~10月の累計販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比+0.7%の83.9万台、同▲4.8%の90.7万台となっている。

(3)FTIが11月20日に発表した10月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+8.9%の21.9万台で、2ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同▲3.6%の16.1万台だった一方、完全組み立て部品(CKD)が同+70.5%の5.8万台分と大きく伸びた。1~10月の累計生産台数は、前年同期比▲2.4%の208.0万台。また、10月の国内販売台数は前年同月比+2.3%の14.2万台だった。輸出台数は同+36.4%の8.4万台で、3ヵ月連続で2桁のプラス成長。FTIは同日、2019年通年の生産目標台数について210万台と発表。2018年の実績は206.3万台だった。


2.投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は11月1日、2019年1~9月の投資申請件数が前年同期比+11.2%の1,165件で、金額は同▲11.2%の3,141億バーツであったと発表。このうち海外直接投資(外国資本10%以上の投資案件)は、申請件数が同+1.9%の689件で、金額は同+68.5%の2,034億バーツだった。国・地域別では日本が申請件数167件、金額592億バーツでともにトップ。次いで中国が139件、454億バーツ。スイスが15件、117億バーツでそれに続いた。

(2)タイ政府は11月6日の閣議で、EEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)の新たな都市計画を承認した。輸送システムや廃棄物管理システム、防災対策といったインフラ構築に加え、同エリアを都市・商業区、工業区、環境保全区、田園地帯とその他(軍用地・水源地)の5つに分類する計画を策定。社会経済の発展と同時に、森林・水資源の保全も目指す。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年10月末時点の金融機関預金残高は20兆2,918億バーツ(前年同月比+4.4%)、貸金残高は24兆5,926億バーツ(同+4.0%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のバーツ金利は、中短期金利は低下の一方で長期金利は上昇。6日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)で0.25%の利下げが決定されたことを受けて、短期金利を中心に金利低下。一方、長期金利は前日に海外で発表された米経済指標が堅調であり、米長期金利が上昇したことを受けてほぼ横ばいとなった。その後も米中通商協議に関する報道でリスクオンとオフを繰り返す中、長期金利は米金利動向に連動する形で上下したが、短期金利はジリジリと低下。そういった中、米中が追加関税の段階的撤廃で合意との報道が伝わりリスクオンとなったことで、バーツ長期金利は大きく上昇し、タイ10年物国債利回りは1.72台まで上昇。その後しばらくは具体的な手掛かりに乏しく、大きな値動きが見られなかったが、下旬にトランプ米大統領が香港人権・民主主義法案に署名したことで米中通商協議への懸念が高まり、リスクオフとなったことでバーツ金利も低下。タイ国債10年物利回りは1.61%台、同5年物利回りは1.39%台と前月末対比それぞれ0.05%上昇、0.03%低下となった。

(2)(12月の展望)
今月は10、11日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、15日にタイ中銀MPCが開催されるが、いずれも現状維持が足元のコンセンサスとなっている。前回の米FOMC後の会見で、パウエル議長は現状の金融政策は適切であり、経済見通しの著しい悪化が見られない限り利下げは不要との発言をしている。しかし、リスクは依然下方にあることから、米経済データが注目される。また、先行きの金融政策にも相応に影響を与えることから、米中通商協議の行方も引き続き注目される。

〈為替動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のドルバーツ相場は小動き。月初ドルバーツは30.1台後半でオープン。月初に発表されたタイ10月消費者物価指数(CPI)の上昇率が0.11%と事前予想を下回り、また中銀のインフレターゲットから一段と遠のいたことでタイ中銀利下げへの期待が強まった。6日に開催されたタイ中銀MPCでは0.25%の利下げが決定された。また同時にバーツ高抑制策が発表されたこともあり、ドルバーツは一時30.4手前まで上昇したが、輸出勢の売り圧力は強く上値は限定的であった。その後、米中通商問題に関して第一段階の合意署名が12月にずれ込むとの報道がドルバーツの上値を押さえたが、翌日に追加関税を段階的に撤廃するとの報道が伝わると、ドルバーツも30.4台前半まで上昇し月間高値をつけた。その後も米中通商問題に関しての報道が錯綜し、楽観と悲観が日替わりとなりドルバーツは狭いレンジ内で上下していたが、米中通商交渉が暗礁に乗り上げているとの一部報道でマーケットセンチメントが悪化するとドルバーツは30.2台まで急落。18日にタイ第3四半期GDPが発表され、+2.4%と事前予想を下回ったがドルバーツへの影響は限定的。米中通商協議をめぐる不透明感が重しとなりドルバーツも徐々に下値を切り下げ、再び30.1台後半をつけたが、米中通商問題に関して楽観、悲観が繰り返され具体的な手掛かりがない中30.2台前半を回復。その後、トランプ米大統領が香港人権・民主主義法に署名したことで中国も報復を警告したが、ドルバーツはほぼ反応せず30.2台前半で膠着を継続してクローズ。

(2)(12月の展望)
今月は10、11日に米FOMC、18日にタイ中銀MPCの開催が予定されており注目される。いずれも現状維持がコンセンサス。前回の米FOMCでは一旦の利下げ停止が示唆されたが、リスクは依然下方にあることから引き続き米経済データを確認する時間帯。また、リスクの主要な要因である米中通商問題の行方が引き続き注目される。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は11月26日の閣議にて、総額1,440億バーツの景気刺激策を承認した。本政策は、草の根支援(インフラ整備、低利子融資等)、中小企業事業者支援(金融機関への債務元本の支払い猶予要請等)、コメ農家支援(補助金、生産支援等)、住宅購入支援(購入資金の一部払戻し)の4分野からなり、2019年8月20日に承認された3,160億バーツの景気刺激策の追加措置にあたる。タイ政府は本政策により、今年の目標である経済成長率+2.8%の達成を志向している。

(2)タイ内務省は11月1日、住宅購入支援に関する通達を発表。2019年11月2日から2020年12月24日までの間、300万バーツ以下の物件につき、移転登記手数料を0.01%とする等、タイ人の住宅購入を促進する。また、政府貯蓄銀行は11月25日、住宅購入や既存ローンの借り換えを支援するため、12月より初年度の金利が0.01%となる住宅ローンの供与を開始すると発表した。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。

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タイ国経済概況(2019年11月)


1.景気動向
(1)タイ中央銀行が10月31日に発表した9月の経済報告書によれば、タイ経済は引き続き減速傾向にある。輸出額は前年同月比▲1.5%で11ヵ月連続のマイナス。また民間投資指数も機械や商用車販売、資本財の輸入額低下等を受け同▲3.9%だった一方、民間消費指数は同+1.3%、外国人旅行者数は同+10.1%と大幅に伸びた。タイ財務省は10月28日、2019年の経済成長率を中銀が9月に発表した予測値と同じ2.8%に引き下げた。なお、財務省、中銀ともに2020年の経済成長率を3.3%と予測している。


(2)タイ工業連盟(FTI)が10月18日に発表した9月の自動車生産台数は、前年同月比▲7.5%の16.9万台で、5ヵ月連続のマイナスとなった。内訳は国内向けが同▲6.6%の7.8万台、輸出向けが同▲8.2%の9.1万台。1~9月の累計生産台数は、前年同期比▲2.0%の157.3万台だった。また、9月の国内販売台数は前年同月比▲14.1%の7.6万台と、4ヵ月連続で減少。輸出台数は同▲6.4%の9.8万台で、1~9月の累計輸出台数は、前年同期比▲4.4%の82.1万台となった。FTIは同日、2019年通年の目標生産台数を215万台から200万台に下方修正。内訳は国内向け、輸出向けともに100万台。2018年の実績は216.8万台だった。


(3)FTIが10月18日に発表した9月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+2.2%の20.6万台で、5ヵ月ぶりにプラスに転じた。内訳は完成車(CBU)が同+1.8%の16.9万台、完全組み立て部品(CKD)が同+3.7%の3.8万台分。1~9月の累計生産台数は、前年同期比▲3.6%の186.1万台だった。また、9月の国内販売台数は前年同月比▲3.9%の13.5万台。輸出台数は同+19.0%の7.4万台で、8ヵ月連続の増加。なお、2020年1月1日より導入されるバイクの新物品税では、税率の算出基準が排気量ベースから二酸化炭素の排出量に変更される予定。


2.投資動向
(1)10月24日、地場大手財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループが主導するコンソーシアムとタイ国鉄が、高速鉄道建設プロジェクトの契約を締結した。本プロジェクトは、EEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)の主要インフラ整備事業のひとつで、ウタパオ、スワンナプーム、ドンムアンの3空港を連結させる高速鉄道を敷設。PPP(Public Private Partnership/官民連携)事業であり、総延長は220キロメートル、総事業費は2,245億バーツを見込んでいる。また、本プロジェクトには複数の駅の周辺開発も含まれており、中でもマッカサン駅周辺では140ライ(22.4万平方メートル)の複合施設が開発される予定。

(2)10月27日、1992年工場法が改正され、2019年(仏歴2562年)工場法が発効した。改正法では操業認可証を申請する義務のある工場の規模が引き上げられる等、中小企業にとって事業環境が改善されたかたちとなる。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年9月末時点の金融機関預金残高は20兆1,140億バーツ(前年同月比+4.9%)、貸金残高は18兆8,036億バーツ(同+3.9%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(10月の回顧)
10月のバーツ金利は、米金利の動きにともない小幅低下後に上昇。月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げは相当織り込まれていたが、焦点はその利下げ幅および先行きとなっていた中、米経済指標および米中通商協議の動向が注目された。月初に発表された米経済指標が悪化したことで米金利が低下、それにともないバーツ金利も低下。その後、米中閣僚級通商協議への期待が高まり米金利が反転上昇するとバーツ金利もそれにともない上昇。米中閣僚級通商協議で第一段階合意となり、翌月にも署名となる可能性があることを好感して金利上昇。しばらくそのモメンタムが継続したが、月末に向けては米FOMCへの警戒感から金利低下となる局面も。米FOMCで連続利下げの停止が示唆されたものの、依然利下げ期待が残っていたことから小幅金利低下となった。タイ国債10年物利回りは1.56%台、同5年物利回りは1.42%台と、前月末対比それぞれ0.07%、0.04%上昇。

(2)(11月の展望)
先月の米FOMCでは、先行きの金融政策について連続利下げの停止が示唆された。米中通商協議に関して第一段階の合意が見込まれることや、英国の脱欧州連合(EU)離脱に関しても合意なき離脱の可能性が低下と、リスクが低下していることからの判断と考えられる。また、11月6日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では利下げが決定された。バーツ高抑制のために利下げを行ったが、従来から表明している高水準にある家計債務への懸念等から連続利下げは見込まれていない。引き続き、マーケットは米金融政策動向の先行きを探る展開となるであろう。そのため、米経済指標、米中通商問題の動向等に注目が集まる。

〈為替動向〉
(1)(10月の回顧)
10月のドルバーツ相場は、下落。月初発表されたタイ9月消費者物価指数は0.32%と前回に続いて大幅に低下し、タイ中銀のインフレターゲットのレンジ下限である1%から一段と遠のいたことを受けて、ドルバーツは上昇し30.6台後半と月間高値をつけた。その後、米中閣僚級通商協議にて「第一段階」の部分合意に達したとの報道で楽観的なムードとなるも、中国が合意文書への署名前に詳細を詰めるため再度の協議を望んでいるとの報道で慎重な見方が再台頭。また、米下院で「香港人権・民主主義法案」が可決。中国政府が報復を宣言。今月発表された米経済指標に軟調なものが多かったこともあり、ドルバーツは弱含みで推移。下旬に発表されたタイ9月貿易統計で輸出が予想に反して大きく落ち込んだが、貿易黒字は確保されたことがドルバーツの重石となった。月末の米FOMCでは大方の予想通り利下げが実施された。先行きについては連続利下げの停止が示唆された一方で、当面利上げもないとの考えが示されドルバーツは一段と下落し、30.1台後半でクローズ。

(2)(11月の展望)
11月6日に開催されたタイ中銀MPCでは今年2回目となる利下げが決定され、政策金利は1.25%と過去最低金利に並んだ。同時にタイ中銀と財務省がバーツ高対策を発表。これを受けてドルバーツは反転上昇した。また、先月は米FOMCにて連続利下げの停止が示唆された。しかし、引き続きマーケットは米金融政策動向を探る展開が継続するものと考えられ、米経済指標、米中通商問題が注目される。


5.政治動向、その他
(1)米通商代表部(USTR)は10月25日、タイの漁業や海運業等における労働者の権利保護が不適切であるとして、タイに認めている一般特恵関税制度(GSP)を2020年4月25日から一部停止すると発表。水産物や農産物、衣類、セラミック製品、貴金属、鉄、機械、電気・電子製品、車両等、573品目、13億米ドル相当が対象となる。タイ商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)は、GSPの一部停止によって2020年の輸出額が2,880万~3,280万米ドル、率にして0.01%減少すると予測している。

(2)デジタル経済社会省国家統計局が発表した、全国2万7,927世帯を対象にした調査の結果によれば、2019年1月~6月までの1世帯あたりの平均月収は2万6,371バーツ、支出は2万1,236バーツであった。なお、2017年通年の調査では月収が2万6,946バーツ、支出が2万1,437バーツであった。2019年の支出の主な割合は、飲食およびタバコが33.7%、家賃や家電購入費等の住宅関連が20.8%、旅費および車両関連費が17.4%、衣類および靴等の生活用品が6.1%となっている。



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タイ国経済概況(2019年10月)


1.景気動向
(1)タイ中央銀行が9月30日に発表した8月の経済報告書によれば、タイ経済は前月から減速となった。輸出が前年同月比▲2.1%とマイナスに転じたほか、民間投資は同▲5.0%、財政支出も同▲3.9%であった。また個人消費指数も同+2.2%、前月比では+0.3%であり、低調であった。一方、輸入の大幅減(前年同月比▲15.5%)にともない貿易黒字が増加し、経常収支は黒字となっている。

(2)タイ工業連盟(FTI)が9月17日に発表した8月の自動車生産台数は、前年同月比▲8.2%の16.6万台で、4ヵ月連続で減少した。内訳は国内向けが同▲2.0%の8.3万台、輸出向けが同▲13.7%の8.3万台。1~8月の累計生産台数は、前年同期比▲1.3%の140.3万台。また、8月の国内販売台数は前年同月比▲6.9%の8.1万台で、3ヵ月連続でのマイナス。輸出台数は同▲20.5%の8.2万台で、中東以外の主要地域向けはすべて減少となった。FTIは2019年通年の目標生産台数を215万台としているが、下方修正を行う可能性も示唆している。

(3)FTIが9月17日に発表した8月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲4.5%の19.9万台で、4ヵ月連続のマイナス。内訳は完成車(CBU)が同▲9.3%の15.6万台、完全組み立て部品(CKD)が同+18.8%の4.2万台分。1~8月の累計生産台数は、前年同期比▲4.2%の165.4万台となった。また、8月の国内販売台数は前年同月比▲4.7%の14.9万台。輸出台数は同+18.9%の7.7万台で、7ヵ月連続でプラスを記録している。


2.投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は9月20日、税制優遇策「タイランド・プラス」を発表した。特定業種のバンコク以外への10億バーツ以上の投資案件に対し、2020年末までの申請かつ2021年末までの投資実行を条件に、既存の税務恩典に追加で5年間の法人税50%軽減を付与。さらに人材育成関連の投資に係る費用に関する法人税の優遇を認める等、タイへの生産拠点の移転を促進する内容となっている。

(2)タイ政府は9月24日の閣議にて2020予算年度の公的債務管理計画を承認、公的債務の国内総生産(GDP)比の上限を42.76%とした。ここ数年のタイの公的債務のGDP比は40%台前半であり、財務省が健全財政維持の枠組みの中で規定した60%を下回っている。一方、家計債務のGDP比は上げ止まったものの、依然高水準であり、2019年3月末時点で78.7%となっている。タイ中銀は以前より家計債務残高について注視する姿勢を示しており、各種のローン規制を導入するなど、家計債務拡大の抑制を図っている。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年8月末時点の金融機関預金残高は20兆430億バーツ(前年同月比+4.6%)、貸金残高は18兆7,503億バーツ(同+4.1%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(9月の回顧)
9月のバーツ金利は、短期金利が小幅低下となった一方で長期金利は上昇。1日に米中双方が関税引き上げと、米中間の緊張の高まりとともに9月が始まったが、その後閣僚級通商協議の日程合意があったことや米国経済指標が良好な結果となったこと等から米長期金利が上昇し、バーツ長期金利もこれにともない大幅に上昇。中旬にサウジアラビアの石油施設が攻撃され地政学リスクへの懸念が高まったことや、米中次官級通商協議自体は前向きであったが、その後の中国代表団の米農家視察がキャンセルとなったことで米中通商協議への進展期待が後退したこと等を受け、バーツ長期金利が下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げやタイ中銀金融政策委員会(MPC)での現状維持はおおむね織り込み済みであり、バーツ金利への影響は軽微であった。タイ国債10年物利回りは1.49%台、同5年物利回りは1.39%台と前月末対比それぞれ0.03%、0.04%上昇。月前半の金利上昇が中盤からの金利低下を小幅ながら上回った。

(2)(10月の展望)
今月初めに発表されたタイ9月消費者物価指数の上昇率は前年同月比0.32%増と前回に続いて大幅に低下しており、中銀のインフレターゲットからまた一層遠のいた。中銀はインフレの上昇を描いており、インフレの低下が即利下げにつながるわけではないが、先月のタイ中銀MPCにて示した経済見通しが下振れる可能性が高まれば利下げを余儀なくされると考えられる。また、今月29、30日に米FOMCが予定されており、金利先物市場では0.25%の利下げは90%程度織り込まれている。グローバル動向に加えて、タイ国内の経済データも丹念に見ていく必要がある。

〈為替動向〉
(1)(9月の回顧)
9月のドルバーツ相場は、材料が多かったものの狭いレンジ内を行って来いとなった。米中通商協議に関しては、米国による対中輸入関税の引き上げおよび中国の報復関税で幕開け。その後、中国が一部米製品を追加関税対象から除外するとしたほか、米国も対中追加関税の発動を10月1日から15日に延期。また10月の閣僚級協議にて暫定合意を目指す可能性が報道されたほか、次官級協議についても米中ともに前向きな評価を表明。一方、次官級協議後に予定されていた中国代表団による米農家視察がキャンセルとなり米中通商問題は一進一退となった。政治リスクに関して、トランプ米大統領に対する弾劾尋問の可能性が懸念されたほか、英国の欧州連合(EU)離脱を巡っての問題も継続。地政学リスクに関しては、香港のデモ激化に加えて、サウジアラビアの石油施設への攻撃があった。金融政策に関して、まずは欧州が緩和。続いて米国が利下げを行ったが先行き見通しに関して意見が分かれていることが明らかになり、想定よりもタカ派的に捉えられた。これもあり、その後日本、英国は現状維持を決定。タイ中銀も現状維持と続いた。上述のとおり材料には事欠かなかったがドルバーツは30.40台~30.70と限定的なレンジ内で推移し、30.60台半ばでクローズ。

(2)(10月の展望)
先月のタイ中銀MPCでは全会一致で現状維持が決定された。経済下振れリスクよりも高水準の家計債務への懸念が勝ったことや、8月に利下げした効果を確認したいということと考えられる。なお、タイ中銀MPCでは今年のGDP成長率見通しを+2.8%と大幅に下方修正した。この見通しが下振れる可能性が高まった際には利下げとなりそうである。一方で、政府サイドは3%の目標を堅持としており、必要であれば追加景気刺激策の導入も辞さないとのスタンス。今月初めに発表されたタイ9月消費者物価指数の上昇率が前年同月比0.32%増と一段と低下していることもあり、グローバルの動向に加えて国内経済データも要注視。


5.政治動向、その他
(1)9月10日、ウッタマ財務相は付加価値税(VAT)の税率7%の適用期間について、期限となっている今年の9月末よりさらに1年の延長が閣議で承認されたことを明らかにした。VATの税率は法律で10%と定められているものの、長らく暫定税率7%が適用されており、10%への移行は先送りされ続けている。

(2)日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所が9月13日に発表した「2019年度タイ国日本食レストラン店舗数調査」によれば、2019年8月時点の国内における日本食レストラン数は3,637店舗で、前年度比21.1%増加した。地域別ではバンコクが1,993店舗(同+16.0%)、地方が1,644店舗(同+27.8%)といずれも前年度比プラス。バンコクは相次いで開業した大型商業施設に日本食レストランが多数入居したこともあり、2016年度ぶりに増加となった。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.

 
 
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タイ国経済概況(2019年9月)


1.景気動向
(1)タイ中央銀行が8月30日に発表した7月の経済報告書によれば、タイ経済は前月と比べてわずかに伸びが加速。輸出は前年同月比+3.8%(金を除くと▲1.7%)となり、8ヵ月ぶりのプラスとなった。また、輸入も同+0.9%(金を除くと同+4.2%)と増加した。輸出が前年比+7.5%、輸入が同+13.7%であった2018年と比べ、足元の輸出入は低調。2019年の第1四半期と第2四半期の輸出はそれぞれ前年同期比▲4.0%、同▲4.2%、同期間の輸入はそれぞれ同▲2.9%、同▲3.4%となっている。2019年の第1四半期から第2四半期にかけて、家電の輸出は復調(同▲4.6%→同+2.2%)したものの、製造分野全体の輸出は減少(同▲1.9%→同▲5.4%)となっている。タイ中銀は輸出低迷の理由として、主要輸出先の景気低迷、米中貿易摩擦等を挙げている。

(2)タイ工業連盟(FTI)が8月22日に発表した7月の自動車生産台数は、前年同月比▲6.7%の17.1万台で、3ヵ月連続で減少した。内訳は国内向けが同+1.2%の8.8万台、輸出向けが同▲13.8%の8.3万台。1~7月の累計生産台数は、前年同期比▲0.2%の123.7万台となった。また7月の国内販売台数は前年同月比▲1.1%の8.1万台で、自動車ローンの厳格化等が影響し、2ヵ月連続で減少。輸出台数は同▲8.9%の8.2万台で、主要輸出先であるオセアニアやアジア向けが減少し、2ヵ月ぶりにマイナスとなった。

(3)FTIが8月22日に発表した7月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲5.4%の19.7万台で、3ヵ月連続で減少した。内訳は完成車(CBU)が同▲9.4%の15.6万台、完全組み立て部品(CKD)が同+13.2%の4.1万台分。1~7月の累計生産台数は、前年同期比▲4.2%の145.6万台となった。また、7月の国内販売台数は前年同月比+11.0%の14.9万台、輸出台数は同+7.2%の7.3万台で6ヵ月連続のプラス。


2.投資動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は8月19日、2019年第2四半期の経済成長率を+2.3%と発表。第1四半期の+2.8%から減速となり、通年の経済成長率見込みを5月時点での+3.3~3.8%から+2.7~3.2%へと下方修正を行った。NESDCや財務省をはじめとする各機関は、2019年下半期の経済成長は上半期を上回るとの見込みを示している。

(2)盤谷日本人商工会議所(JCC)の投資基盤整備委員会ビザ・ワークパーミット担当は8月22日、入国管理局において外国人居住者がビザ延長手続き等を行う際、TM30の未提出により罰金を課されるケースが多発していることを受けて対応策を議論。今後、入国管理局に改善要望を行うこととした。TM30を用いた外国人居住報告制度では、外国人の滞在先であるホテルや住居の管理者による届出が義務付けられているが、手続が煩雑なこともあり、1979年の施行からこれまで厳格な運用はされていなかった。在タイ外国人商工会議所連合会(JFCCT)も、入国管理局に対し運用の見直しを求める意向を示している。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年7月末時点の金融機関預金残高は19兆9,533億バーツ(前年同月比+3.9%)、貸金残高は18兆7,394億バーツ(同+4.4%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(8月の回顧)
8月のバーツ金利は、米金利の低下に加えて想定外のタイ中央銀行利下げを受けて大幅に低下。月初トランプ米大統領が対中輸入関税第4弾の発動を表明し米中間の緊張が高まり、米金利が低下したことにともないバーツ金利も低下。さらに7日にタイ中銀が想定外の利下げを実施したことで一段と金利低下。利下げの理由は世界的な景気減速で外需が不調となっている中、輸出の減速が内需に影響を与え始めていることへの懸念が挙げられた。なお、今会合では5対2で利下げが決定されており、現状維持を2名の委員が主張。この2名の言い分は、①すでに緩和的な状況下での利下げは効果が薄いこと、②政策余地(利下げ余地)の確保の2点であった。月末にかけて、米中通商問題に関する報道でリスクセンチメントが日替わりで改善、悪化を繰り返す中、米金利の低下が進みバーツ金利も低下。タイ国債10年物利回りは1.45%台、同5年物利回りは1.35%台とそれぞれ前月末対比0.41%、0.37%と利下げ幅を上回って大幅に金利低下。

(2)(9月の展望)
今月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げは織り込み済みであり、注目は利下げ幅と先行きの見通しとなっている。一方のタイ中銀金融政策委員会(MPC)での利下げの見方は分かれており、現状維持との見方が依然大勢と思われるが、前回の想定外の利下げを受けて米国に追随しての利下げを期待する向きも相応に台頭している。今後の経済データ、米中通商問題の動向が注目される。

〈為替動向〉
(1)(8月の回顧)
8月のドルバーツ相場は、小幅下落。先月末に米FOMCで利下げが実施されたが、今後の利下げビューが明確に示されなかったことや、トランプ米大統領が対中輸入関税第4弾の発動を表明したこと等で月初ドルバーツは30.90台まで小幅上昇。米中関係の緊張の高まりは一旦バーツ売りで反応があったが、その後はタイの経常黒字を背景にむしろバーツは逃避的に買われだしドルバーツの重しとなった。7日、タイ中銀が想定外の利下げを実施したが、為替相場へのインパクトはほぼ見られず。先月末の米利下げで世界的な中銀の緩和合戦が一層強まっており、同日にニュージーランド中銀、インド中銀がともに事前予想を上回る利下げを実施したことでインパクトが出なかった。利下げの理由は、世界的な景気減速で外需が不調となる中、輸出の減速が内需に影響を与え始めていること。なお、この会合での利下げは全会一致ではなく2名の反対があったことも一枚岩での利下げではないとの印象を与えており、これもバーツ反落にならかなった要因。なお反対の理由は、①すでに緩和的な状況下での利下げは効果が薄い、②政策余地(利下げ余地)の確保の2点。下旬、米中通商問題に関する報道でリスクセンチメントが上下したが、バーツは買われドルバーツは30.5台後半でクローズ。

(2)(9月の展望)
今月の米FOMCでの利下げはほぼ織り込み済みであり、焦点は利下げ幅と今後の道筋となっている。タイ中銀も25日にMPCを開催するが現状維持との見方が大勢とみられるものの、先月の想定外の利下げを受けてもう一段の利下げへの期待も相応に台頭している。なお、今回のMPC日程も、元々は18日と米FOMCと同日程であったが6月に変更となったもの。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は8月20日の閣議にて、総額3,160億バーツの景気刺激策を承認。低所得者層ならびに高齢者への生活支援、干ばつ被害を受けた農家の支援、世界経済停滞にともなうタイ経済への影響の緩和等に用いられる。タイ財務省のラワロン財政政策局長は、この景気刺激策により今年の経済成長率は3.5%に達するとの見通しを示している。

(2)財務省は、2019年末で税制優遇が満了となる、長期株式投資信託(LTF)の後継ファンドを設立することに同意。現在、LTFは年収の15%か、50万バーツのうち低いほうの金額を上限として購入費用の所得控除が可能。後継ファンドでは、上限を年収の30%か、25万バーツのうち低い方となる見込みであり、中間層へのメリットが増すとされる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
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タイ国経済概況(2019年8月)


1.景気動向
(1)2019年通年の経済成長率について、各機関が予測値を下方修正している。タイ中央銀行は3月時点の+3.8%から6月に+3.3%へと引き下げたほか、タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)も2月時点で+3.5~4.5%としていた見通しを5月に+3.3~3.8%へと引き下げている。タイの民間経済団体である商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)も4月時点の+3.7~4.0%から、7月に+2.9~3.3%へと下方修正した。世界銀行とアジア開発銀行も同月、それぞれ+4.1%と+3.9%から、+3.5%へと下方修正したことを発表。タイ財務省のラワロン財政政策局長は政府による景気刺激策等を理由に、少なくとも3%は達成できるとの予測を示している。

(2)タイ工業連盟(FTI)が7月18日に発表した6月の自動車生産台数は、前年同月比▲8.5%の17.3万台で、2ヵ月連続で減少した。内訳は国内向けが同▲5.1%の8.9万台、輸出向けが同▲11.9%の8.4万台。2019年上半期(1~6月)の累計生産台数は、前年同期比+0.9%の106.6万台となった。また6月の国内販売台数は前年同月比▲2.1%の8.6万台、輸出台数は同+2.4%の9.8万台。2019年上半期(1~6月)では、累計販売台数が前年同期比+7.1%の52.4万台、累計輸出台数は同▲0.4%の56.0万台だった。国内販売台数が30ヵ月ぶりに前年同月を下回ったが、FTIは2019年通年の生産台数目標215万台は達成可能との見方を示している。

(3)FTIが7月18日に発表した6月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲11.0%の20.4万台だった。内訳は完成車(CBU)が同▲16.6%の15.8万台、完全組み立て部品(CKD)が同+15.1%の4.6万台分。2019年上半期(1~6月)の累計生産台数は、前年同期比▲4.0%の125.8万台となった。また、6月の国内販売台数は前年同月比+16.2%の15.0万台、輸出台数は同+19.7%の8.5万台で、輸出は5ヵ月連続でプラスを記録。2019年上半期(1~6月)の累計販売台数は前年同期比▲4.4%の89.4万台で、累計輸出台数は同+9.8%の49.3万台となっている。


2.投資動向
(1)7月18日、FTIのスパン会長は連立与党による最低賃金引き上げの動きに対し、企業活動への悪影響の懸念を表明。その後、同党のソンティラット幹事長(エネルギー相)は、関係者と協議しつつ4年間で段階的に最低賃金を引き上げる方針を示した。国民国家の力党は総選挙時の公約として、最低賃金を現行の308~330バーツから、400~425バーツへの引き上げを掲げており、新政府の本件に関する方針に注目が集まっている。

(2)タイデジタル経済振興機関(DEPA)は7月31日までに、9都県20都市がスマートシティー開発計画を申請したことを明らかにした。申請した9都県のうち、ヤラーとナコンラチャシマ以外のプーケット、チェンマイ、コンケン、バンコク、チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオの7都県10地域ではすでにスマートシティー化が進められている。タイ政府としては2020年までに24都県30都市を、2022年までに100都市をスマートシティーに開発したい考え。対象地で特定の条件に合致した投資には、タイ投資委員会(BOI)に申請することで法人税免税等の恩典が付与される。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年6月末時点の金融機関預金残高は19兆9,530億バーツ(前年同月比+3.8%)、貸金残高は18兆7,369億バーツ(同+4.5%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(7月の回顧)
7月のバーツ金利は米金利にともない低下、特に長期ゾーンは大幅に低下し、タイ10年物国債利回りは2%割れとなった。月初、タイ中銀は7月の短期証券の発行額を600億バーツ減額するとアナウンス。それを契機に1年超のゾーンに外国人投資家の資金が流入し、バーツ金利を圧迫。米6月雇用統計の結果が良好であったことから、米国の大幅利下げ期待が後退し米金利が反発したことで、バーツ金利も一時的に反発するも長続きせず。中旬に実施された、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言での7月利下げ示唆、フィッチがタイの格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に上方修正したこと等がタイ国債のサポートとなり、バーツ金利は続落。その後も米金利動向を眺めながらバーツ金利は低下。タイ国債10年物利回りは1.73%台、同5年物利回りは1.63%台と、それぞれ前月末対比0.28%、0.14%の大幅な金利低下となった。

(2)(8月の展望)
7月末の米利下げは予想通りであったが、月初早々に米国が対中輸入関税第4弾の発動を表明したことから米中間の緊張が高まり、リスクオフとなったことでバーツ金利も大きく低下。さらにタイ中銀の予想外の利下げで、全ゾーン一段と金利低下。次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)、タイ中銀金融政策委員会(MPC)に向けてデータ確認の時間帯になるものと考える。

〈為替動向〉
(1)(7月の回顧)
7月のドルバーツ相場は小動き。31.0台を回復する局面が瞬間的にあったが、概ね30台後半のレンジ内での推移に留まった。タイ中銀は、月初に海外投資家の投機資金流入によるバーツ高対策として、1年以内の短期証券発行減額をアナウンス。2年前にも同様の措置を取ったが、当時と同様に目に見える成果は確認できず、30.50‐60台での推移。米6月雇用統計の結果が良好であったことから、米国への大幅利下げ期待が後退したことでドルバーツは30.8台に上昇。中旬に行われた米議会証言においてパウエル米FRB議長が利下げを示唆したことで、ドルバーツは再び30.6台に戻した。12日にタイ中銀がバーツ高対策として非居住者口座の上限減額をアナウンスしたことで、ドルバーツは再び上昇。下旬にドルバーツは一時31.0台前半まで戻す局面も。26日の欧州中央銀行(ECB)理事会後の総裁会見を受けて、過度な緩和期待が後退し欧州金利が上昇、これにともない米金利も上昇したことでバーツだけでなくアジア通貨全般に対ドルで弱含んだが米FOMCを前に調整でドル売りとなり、ドルバーツは30.7台半ばでクローズ。

(2)(8月の展望)
7月末の米FOMCでは、事前予想通り0.25%の利下げが決定された。今回の利下げは“予防的”なものであり、今後については連続利下げの始まりではないが今回限りでもないとの見解が示された。7日のタイ中銀MPCでは、予想外に0.25%の利下げが決定された。米中通商貿易問題、世界景気動向等を確認する時間帯になると予想される。


5.政治動向、その他
(1)7月10日、プラユット新首相が提出した新内閣の閣僚名簿をワチラロンコン国王が承認。同月16日、国王宣誓式を経て正式に新内閣が発足した。同月25日には首相による所信表明演説が行われ、福祉政策の改善、世界経済の変動への対応、労働者の能力向上、農家支援と技術革新、汚職の撲滅、麻薬撲滅と深南部の治安回復等、12項目の施政方針が示された。基本方針は軍政下で掲げられた「20年国家戦略」から引き継がれている。

(2)バンコク都市鉄道、MRT(Mass Rapid Transit)ブルーラインの延伸区間の一部にあたる、フアランポーン駅―タープラ駅間で7月29日から試運転が始まった。同区間において、MRTはチャオプラヤー川の下を通過する初めてのトンネルを走る。延伸区間全体となるフアランポーン駅―ラクソン駅間(全長15.9キロ)は、9月に正式開通予定。


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タイ国経済概況(2019年7月)

1.景気動向
(1)タイ中央銀行が6月28日に発表した5月の経済報告書によれば、タイ経済は前月から減速した。民間消費がけん引したが、民間投資、政府支出はともに縮小。輸出入額と外国人旅行者数も減少となった。民間消費指数は農家所得の改善等により、前年同月比+4.2%と拡大。輸出額は同▲7.2%と減少したものの、エアコンやテレビ等の家電製品、果物等の農産品、自動二輪車、タイヤの輸出は好調だった。外国人旅行者数は中国と欧州、特にドイツとロシアからの観光客減少が影響しマイナスに転じた。

(2)タイ工業連盟(FTI)が6月13日に発表した5月の自動車生産台数は、前年同月比▲6.1%の18.1万台で、8ヵ月ぶりにマイナスとなった。内訳は国内向けが同▲3.8%の8.7万台、輸出向けが同▲8.1%の9.4万台で、1~5月の累計生産台数は前年同期比+2.9%の89.3万台。FTIは、2019年通年の生産台数目標である215万台は達成可能との見方を示している。また、5月の国内販売台数は前年同月比+3.7%の8.8万台で、1~5月の累計販売台数は前年同期比+9.1%の43.8万台。5月の輸出台数は前年同月比▲3.6%の9.5万台で、主要市場であるオセアニアと、中南米、アフリカ向けが減少した。1~5月の累計輸出台数は前年同期比▲0.9%の46.2万台となっている。

(3)FTIが6月13日に発表した5月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲6.6%の21.0万台で、3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。内訳は完成車(CBU)が同▲8.8%の17.0万台、完全組み立て部品(CKD)は同+3.5%の4.0万台分だった。1~5月の累計生産台数は、前年同期比▲2.5%の105.4万台。また、5月の国内販売台数は前年同月比▲4.4%の16.1万台で、1~5月の累計販売台数は前年同期比▲1.6%の74.3万台。5月の輸出台数は前年同月比+4.5%の7.4万台で、4ヵ月連続のプラス。1~5月の累計輸出台数は前年同期比+7.9%の40.8万台となっている。


2.投資動向
(1)2019年6月25日、外国人事業法の規制業種リストに記載される「奨励で定められたサービスを除くその他のサービス」から、関連会社およびグループ会社に対する事業(①タイ国内関連会社・グループ会社への金銭貸付、②関連会社・グループ会社への事業所スペースの賃貸(含むユーティリティサービス)、③経営管理/マーケティング/人事/情報テクノロジー(IT)分野についての関連会社・グループ会社へのアドバイザリー業務)を除外するタイ商務省の省令が官報に公示され、同月26日に施行となった。これにより、上述の事業は外国人事業許可証(FBL)無しで行えることになる。

(2)タイ国家統計局の発表によれば、6月の全国の失業率は0.9%(速報値)で、4ヵ月ぶりに改善した。失業者数は36.3万人で、前月から14.8%の減少となった。労働力人口は3,882万人、就業者は3,838万人といずれも前月から増加。就業者の業種内訳は商業・サービスが1,654万人、農業が1,318万人、製造業が865万人だった。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2019年5月末時点の金融機関預金残高は19兆9,997億バーツ(前年同月比+4.0%)、貸金残高は18兆6,961億バーツ(同+5.0%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のバーツ金利は米金利にともない低下、特に長期ゾーンは大幅低下となった。月初から米金融当局者の利下げ発言により長期ゾーンを中心に低下。米国に対メキシコ追加関税の計画があることが示され、その後すぐに無期限停止が発表されたものの、マーケットのセンチメントは悪化しバーツ金利の低下も継続となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)では事前予想通り政策金利は据え置かれたが、声明文が修正され、それまで政策金利の見通しを示していた「政策決定に辛抱強くいられる」との文言は削除、「見通しに不確実性が増した」との判断に加えて「適切に行動する」との文言が追加となり、利下げの可能性が示唆された。これを受けて米10年物利回りは2016年以来の2%割れとなり、またこれにともないバーツ金利も低下。米FOMCの翌週に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利は据え置かれ、政策スタンスも中立的なものであった。しかし、外部環境の影響の方が勝りバーツ金利は反発とはならず、むしろさらに小幅低下。タイ10年物国債利回りは2.03%台、同5年物国債利回りは1.77%台と、それぞれ0.27%、0.19%と大幅な金利低下となった。

(2)(7月の展望)
マーケットの注目は米金融政策、特に利下げの時期と利下げ幅となっており、バーツ金利は米金利動向に連動しやすい状況は継続するものと思われる。米利下げをすでに十分以上に織り込んでいることや、タイ政策金利は当面据え置きとの見方がコンセンサスであることから下げ余地は限定的であり、むしろ反発の可能性もあるものと考える。

〈為替動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のドルバーツ相場は続落。特に月後半からの下げがきつかった。月初ドルバーツは米金融当局者が利下げの可能性に言及したことで大きく下げてオープン。また、その後発表された米経済指標が軟調であったことから米中通商問題による米国景気への影響が懸念され、ドルバーツは上値重く推移。さらに米国の対メキシコ追加関税賦課の計画が示された後、すぐに無期限停止が発表されたもののマーケットセンチメントは悪化。米FOMCでは、事前予想通り利下げはなかったが、声明文の文言が利下げを示唆する内容に修正されたことを受けてドルバーツは大きく下落し、約6年ぶりに31を割り込み30台に。タイ5月貿易統計では3ヵ月連続で輸出減となったことでドルバーツが上昇するも、上値は極めて限定的。その後、日程を変更して行われたタイ中銀MPCでは政策金利は据え置きとなり、政策スタンスも中立が示された。今年に入ってから緩和姿勢を打ち出す中銀が増えており、タイ中銀は比較的、タカ派的と捉えられドルバーツはさらに下落。月末の米中首脳会談への思惑でアジア新興国通貨が買われた中バーツも買い進まれ、ドルバーツは30.6台後半でクローズ。月間では約1バーツのバーツ高となった。

(2)(7月の展望)
先月、外国人投資家からの資金流入が大きかったこともバーツ高要因となっていることから、タイ中銀は今月の短期証券発行を600億バーツ減額すると発表。マーケットには一定の警戒あるが注目は米金融政策であり、利下げのタイミングと利下げ幅が注視される。マーケットでは早ければ7月30、31日に開催される米FOMCでの利下げが期待されている。


5.政治動向、その他
(1)6月20日から23日にかけてバンコクで開催されたASEAN首脳会議で、独自の外交戦略「インド太平洋構想」が採択された。同構想では米中の両国が影響力の拡大を競うインド太平洋地域において、ASEANが中心的役割を担うことを強調。対立に代わり、対話と協力のあるインド太平洋地域を目指す。また、環境を守るための海洋ごみ削減に向けた「バンコク宣言」も採択され、加盟国間で連携し取り組んでいくことを確認した。

(2)6月28日、安倍総理とG20大阪サミット出席のため訪日していたプラユット首相が日・タイ首脳会談を行った。両首脳による会談は2018年10月ぶりで、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内妥結、EEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)の開発等について意見交換が行われた。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。

投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。



情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.




 
 
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タイ空港の全面禁煙について

2019年2月3日から,タイ国内の6箇所の空港では全面禁煙となっています。

違反した場合は罰金支払いが求められますので,ご注意ください。

タイでは,たばこに関して制限や罰則がありますので,併せてご注意ください。

報道等によれば,タイ国内にある6箇所の空港、
バンコク(スワンナプーム,ドンムアン),プーケット,チェンマイ,ハジャイ,チェンライ(メーファールアン))では,2月3日から全面禁煙となっています。

これに伴い,各空港における喫煙所は閉鎖され,空港ターミナルビルの屋外においても禁煙となりました。

違反した場合には5,000バーツの罰金支払いが求められるとのことです。

なお,本件に限らず,タイではたばこに関して制限や罰則があります。違反した場合は罰金が科されます。支払いを拒否した場合は身柄を拘束される可能性もあります。

(1)入国時のたばこ持ち込み:一人につき1カートン(200本)まで
(2)電子たばこの持ち込み及び使用は禁止
(3)公共施設や商業施設等では,屋外の喫煙スペースを除き原則全面禁煙
(4)たばこのポイ捨ては禁止

在留邦人及び旅行者の皆様におかれましては,上記次第を踏まえて十分ご注意の上,安全で楽しい滞在,休暇をお過ごしください。


情報:在タイ日本国大使館領事部
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タイ国経済概況(2019年1月)

1.景気動向

(1)タイ中央銀行が12月28日に発表した11月の経済報告書によれば、タイ経済はやや伸びが鈍化したものの引き続き底堅く拡大している。個人消費指数が前年同月比+4.4%、民間投資指数は同+3.1%と堅調に推移。輸出は米中貿易摩擦の影響もあり、電子製品、天然ゴムの中国向け輸出が減少したことを受け、同+0.2%と横ばいとなった。外国人旅行者数は同+4.5%とプラスに回復。中国人旅行者は減少したものの、マレーシアをはじめとするASEAN諸国からの旅行者数が大きく増加したことが寄与した。

(2)
タイ工業連盟(FTI)が12月19日に発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比+3.5%の19.7万台で、2ヵ月連続でプラスとなった。内訳は国内向けが同+19.7%の10.2万台、輸出向けが同▲9.5%の9.6万台。1~11月の累計生産台数は前年同期比+9.1%の199.8万台、通年の生産台数が200万台を超えるのは2013年以来となる。また同月の国内販売台数は前年同月比+21.2%の9.5万台で、1~11月の累計国内販売台数は前年同期比+21.0%の92.8万台。同月の輸出台数は同▲9.6%の9.3万台で、1~11月の累計輸出台数は前年同期比+0.1%の104.5万台となった。

(3)FTIが12月19日に発表した11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+1.4%の24.4万台で、6ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同▲1.4%の19.0万台、完全組み立て部品(CKD)が同+12.7%の5.4万台分。1~11月の累計生産台数は前年同期比+1.6%の237.4万台となった。また同月の国内販売台数は前年同月比▲4.9%の14.6万台で、1~11月の累計販売台数は前年同期比▲1.7%の165.1万台。同月の輸出台数は前年同月比+5.4%の8.6万台、1~11月の累計輸出台数は前年同期比+3.5%の79.3万台となった。


2.投資動向

(1)タイ投資委員会(BOI)は、2018年12月11日付布告にて、国際ビジネスセンター(IBC)の導入を発表。同日より国際地域統括本部(IHQ)ならびに国際貿易センター(ITC)の新規申請は廃止となった。同年10月10日に歳入局はIBCの税務恩典および税務恩典取得条件を発表しており、本件BOI発表にて、IBCの投資奨励ライセンスの取得要件ならびに税務恩典の内容・取得条件が出揃った。

(2)米国を除く11ヵ国による、包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP/通称TPP11)が12月30日、批准国である日本、シンガポール、メキシコ、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの6ヵ国で発効した。1月14日よりベトナムでも発効となる予定。タイ政府もCPTPPへの加盟に向けて準備を進めている。また一方、タイは2019年のASEAN議長国であり、まずは交渉中の東アジア地域包括的経済協定(RCEP)の2019年内妥結を優先する意向も見受けられる。


3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると、2018年11月末時点の金融機関預金残高は19兆4,959億バーツ(前年同月比+4.7%)、貸金残高は18兆3,047億バーツ(同+6.2%)といずれも増加。


4.金利為替動向

〈金利動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のバーツ金利はタイ中央銀行の利上げを受けて短期金利が上昇した一方、中長期金利は米金利の低下にともない大幅に低下。月前半は米中通商問題、欧州政治の先行き懸念、米国の早期利上げ停止論の台頭などで上下しつつも長期金利を中心に金利低下が進んだ。19日のタイ中央銀行金融政策会議(MPC)、米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、トランプ米大統領が利上げ牽制発言を繰り返したことで一段と金利低下圧力がかかった。19日には両国とも利上げを決定。これを受けてバーツ短期金利は上昇となったが、中長期金利は低下。タイMPC後の会見で「次の金融政策は不透明」とデータ次第ながら連続利上げは暗に否定されたことを受けたもの。2019年の米利上げ見通しの中央値が9月米FOMC時点の3回から2回に引き下がったが、マーケットでは想定よりもタカ派的と捉えられグローバルで株が下落、金利が低下した。バーツ長期金利もこの流れを受けて金利低下となった。その後は米暫定予算が成立しないまま議会休会となり、米政府機関の一部閉鎖となった。これを受けて米金利は一段と低下、バーツ金利もそれにともない低下。タイ10年物国債金利は月初は2.72%台であったが、月末には2.51%台まで、5年物国債金利は2.33%台から2.16%台に低下した。

(2)(1月の展望)
足元、米中の経済指標が軟調であったことから世界景気の先行き懸念が強まり、金利低下地合いとなっている。しかし、その反応はやや過剰と思われ、今後は経済指標を点検していく時間帯になるものと考える。一方で、米中の次官級の通商協議が予定されているほか、米暫定予算の行方等の政治リスクでマーケットセンチメントが振らされる可能性にも注意が必要。

〈為替動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のドルバーツ相場は、月前半はレンジ内での推移となったが後半には下落。早期の米利上げ停止観測がドルバーツの上値を押さえた一方で、米中関係の緊張が高まったことや英国のBREXIT、フランスのデモ等欧州政治への懸念が下支えしたことで、32.7台~32.8台のレンジ内で推移。中旬には、米中通商協議進展への期待が高まり一旦はマーケットセンチメントが改善しドルバーツも32.6台に下落。しかし、中国経済指標が軒並み振るわず、同国経済減速懸念が強まり、ドルバーツは再び32.8台を回復。その後はトランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)に対して利上げ牽制発言を繰り返したこともあり、ドルバーツも上値重く推移。19日、まずタイ中央銀行が利上げを決定したが、予想通りであったことからドルバーツへ相場への影響はほぼ見られなかった。同日夜間に米FRBも利上げを決定。その際に発表された2019年の政策金利見通しの中央値が2回の利上げと想定よりもハト派的でなかったことで、ドルバーツも小幅に反転上昇。クリスマス、年末でマーケットが薄くなる中、米暫定予算が成立せず同国政府機関の一部閉鎖となったことで、ドルバーツは下押しされ一時32.3台後半をつける局面も。その後ドルバーツは、休暇前のポジション調整などもあり反発して32.5台後半でクローズ。

(2)(1月の展望)
年末に発表された中国の経済指標が軟調であり、同国経済減速懸念が強まり、さらに米経済指標も振るわなかったことで、一部で米国での利下げが織り込まれ出したことでドルバーツも年始早々大幅に下落しているがやや過剰反応と考える。今月は次官級の米中通商協議が予定されているほか、米暫定予算の動向等の政治リスクにも注意は必要ではあるが、世界景気、特に米中の経済動向を確認する時間帯になると思われ、経済指標、金融当局者の発言に振らされる展開が予想される。


5.政治動向、その他

(1)王室事務局は1月1日、ワチラロンコン国王の戴冠式を5月4~6日にかけての3日間で執り行うことを発表。ワチラロンコン国王は2016年10月13日のプミポン前国王崩御を受けて同年12月1日に即位したが、戴冠式は行われていなかった。またこれにともない、投票結果の開示が戴冠式の関連行事期間に重なることを避けるため、2月24日に予定されている総選挙が延期される可能性が出てきている。

(2)商務省は1月2日、2018年通年の消費者物価指数(CPI)を前年比+1.07%、コアCPI(生鮮食品とエネルギーを除いたもの)を同+0.71%と発表。CPIをカテゴリー別にみると、飲食料(+0.40%)、非飲食料(+1.44%)ともに上昇。なかでも燃料の上昇率(+6.85%)が目立った。2018年12月単月のCPI上昇率は前年同月比+0.36%、前年同月比プラスが18ヵ月続いている。また、商務省は2019年のCPI上昇率を1.2%(0.7~1.7%)と予測している。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
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タイ国経済概況(2018年12月)


1.景気動向

(1)タイ中央銀行が11月30日に発表した10月の経済報告書によれば、タイ経済は前月から拡大。個人消費と輸出の増加がけん引材料となった。民間消費指数、民間投資指数、輸入などは増加したものの、外国人旅行者数は減少。2018年通年の経済成長率につき、タイ中央銀行は従来予測の+4.4%の達成は難しいとしてる。また、国家経済社会開発委員会も2018年の経済成長率を従来予測の+4.5%から+4.2%に下方修正。タイ政府は景気刺激策を打ち出すなど、+4%を死守したい考え。

(2)タイ工業連盟(FTI)が11月20日に発表した10月の自動車生産台数は、前年同月比+20.6%の19.7万台で、月間の生産台数として2013年以来の高水準を記録。内訳は国内向けが同+36.3%の10.0万台、輸出向けが同+7.9%の9.7万台でともに増加。1~10月の累計生産台数は前年同期比+9.8%の180.1万台となり、FTIは同日、2018年の生産台数目標を従来の208万台から210万台に上方修正した。年間生産台数が200万台に到達するのは2013年以来となる。また、同月の国内販売台数は前年同月比+26.8%の8.7万台で、FTIは2018年の国内販売台数も98万台から100万台に引き上げた。同月の輸出台数は同+2.8%の9.3万台で、1~10月の累計輸出台数は前年同期比+1.2%の95.2万台となっている。

(3)FTIが11月20日に発表した10月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+2.8%の20.1万台で、5ヵ月連続でプラスを維持した。内訳は完成車(CBU)が同+1.9%の16.7万台、完全組み立て部品(CKD)が同+7.3%の3.4万台分。1~10月の累計生産台数は、前年同期比+1.7%の213.0万台となった。同月の国内販売台数は前年同月比+2.7%の13.9万台で、1~10月の累計販売台数は前年同期比▲1.4%の150.5万台。同月の輸出台数は前年同月比+0.1%の6.2万台、1~10月の累計輸出台数は前年同期比+3.3%の70.6万台となった。


2.投資動向

(1)EEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)の主要インフラ整備事業のひとつ、ウタパオ、スワンナプーム、ドンムアンの3空港を連結させる高速鉄道建設プロジェクト入札が11月12日に実施され、バンコク高架鉄道システム(BTS)主導のBSRと、地場大手財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループ主導の2つのコンソーシアムが応札。同月19日には入札を実施したタイ国鉄が、両者とも資格審査を通過したことを発表した。

(2)タイ投資委員会(BOI)は11月20日、重点産業への投資促進剤として新たな奨励策が承認されたことを発表した。11月19日から2019年末までの申請で、投資額(土地代と運転資金を除く)10億バーツ以上、バンコク以外に事業所を構える事業者に、既存恩典である5~8年間の法人税免除に加えて3年間の法人税50%減税などの恩典が付与される。同日にはこのほかにも、タイ証券取引所(SET)に上場するBOI企業への免税恩典付与、外国人未熟練労働者の雇用要件緩和などが承認された。


3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると、2018年10月末時点の金融機関預金残高は19兆4,339億バーツ(前年同月比+5.0%)、貸金残高は18兆1,873億バーツ(同+6.3%)といずれも増加。


4.金利為替動向

〈金利動向〉
(1)(11月の回顧)11月のバーツ金利は短期ゾーンがほぼ横ばいとなった一方、米金利との連動性が高い中長期ゾーンは米金利の低下にともない下落となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ継続方針が確認されたことで、米金利上昇となりバーツ金利も小幅に上昇する局面があったが、その後、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官複数名が利上げに対してハト派な発言をしたことで米金利が反落するとバーツ金利もそれにともない下落。タイ中央銀行の年内利上げはコンセンサスながら連続利上げはなく極めて緩やかなペースでの利上げに留まるとの見方であることも、短期金利は横ばい推移となった一方で中長期金利の上値が押さえられた要因と推察される。外国人投資家によるタイ国債の保有残高は、1年以内は利上げを警戒してか減少となった一方で、1年超は増加し、トータルでも増加。

(2)(12月の展望)
タイ中央銀行による今月の利上げはほぼコンセンサスで概ね織り込み済み。先行きについて連続利上げは想定されていないが、こちらもコンセンサス。米金利に関して今月の利上げは見込まれるが、既に価格に織り込まれている。一方で先行きについては早期利上げ停止論が台頭していることが重石となっている。今月のバーツ金利は中長期ゾーンを中心に、米金利動向を中心とした外部要因に振らされる展開が予想される。

〈為替動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のドルバーツ相場は、イベントが多かった割には狭いレンジ内での値動きに留まったが、結果的には小幅下落となった。月初ドルバーツは33.1台前半でオープン。グローバル株安が止まったことや、予想を上回ったタイ経常収支を好感した前月末の流れが継続しバーツ買いに。6日投開票された米中間選挙で事前予想通り上院は共和党、下院は民主党が過半数を得たことで、ねじれ議会への懸念で一時ドルバーツは32.7台後半まで下落。直後に開催された米FOMCでは利上げ継続スタンスが示されたことで、アジア株が下落。リスク回避姿勢が強まったことでドルバーツは一時33.1台後半まで上昇。14日に開催されたタイ中央銀行金融政策委員会(MPC)では政策金利は据え置かれたが、利上げ票は3票に増加。元々マーケットでは年内利上げがコンセンサスとなっていたことから反応は限定的であった。月中旬、複数のFRB高官が米利上げに対してハト派的な見解を示した。途中、タイ第3四半期GDPが予想を大きく下回ったことでドルバーツが上昇する局面あるも、上記を背景にドルバーツは上値重く推移。下旬、月末に開催のG20および米中首脳会談への警戒が下値を支えたことで相場はこう着となったが、パウエルFRB議長講演がハト派的に捉えられドルバーツは再び下落し、32.8台後半でクローズ。

(2)(12月の展望)
今月初めに公表されたタイ11月消費者物価指数(CPI)は0.94%とタイ中央銀行のインフレターゲットのレンジ(1~4%)をわずかながら下回る結果となったが、マーケットの年内利上げ期待は変わらず。それ以上に不必要な低金利の継続による将来の不確実性が高まることや、政策余地の確保が優先されるとの見方となっている。また、同日開催される米FOMCでも利上げが見込まれる。米、タイともに利上げすることで一義的には為替への影響は相殺されるが、米利上げの先行き期待の剥落からバーツ高になりやすい地合いになるものと考える。一方で、米中通商摩擦、欧州政治問題等のリスク要因には注意を要する。


5.政治動向、その他
(1)スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)が発表した2018年版の「世界人材ランキング」において、タイは63ヵ国・地域中42位であった。トップはスイスで、デンマーク、ノルウェー、オーストリアなど欧州各国が続いた。アジアのトップは13位のシンガポールで、日本は29位であった。格付けの基準は各国の教育、言語力、報酬などを含む人材育成への投資度、魅力度、準備度の3つ。

(2)三井住友銀行バンコック支店、およびSBCSカンパニーリミテッドは11月29日・30日の二日間、南部経済回廊とカンボジアの視察ツアーを開催。在タイ日系企業を中心に約10名が参加し、現地における事業機会と投資の可能性を探った。一行はバンコクから陸路でカンボジア国境を越え、インフラ整備が進むポイペト(バンテイメンチェイ州)を見学。翌日には首都プノンペンへ飛び、経済特区(SEZ)や現地進出企業、同行が出資提携するアクレダ銀行などを訪問した。



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タイ国経済概況(2018年7月)

1.景気動向

(1)商業会議所・工業連盟・銀行協会から構成される商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)は7月3日、2018年の経済成長率の見通しをこれまでの前年比+4.0~4.5%から同+4.3~4.8%へ上方修正を行った。好調な輸出および観光が経済の牽引役となっていることに加えて、民間投資ならびに消費も拡大基調にあるとしている。また、消費者物価指数(CPI)の2018年上昇率予測も0.7~1.2%から0.9~1.5%へ上方修正している。


(2)タイ中央銀行は5月の月例経済報告を6月29日に発表、好調な外需に加え国内需要の回復に言及している。5月の民間消費指数は前年同月比+5.6%で拡大基調が継続。同月の輸出額は223億米ドルで同+13.1%、石油関連製品、自動車および自動車部品、エレクトロニクス製品、電子部品、ゴムやパーム油などの農産加工製品を中心に輸出は堅調。


(3)タイ工業連盟(FTI)が6月18日に発表した5月の自動車生産台数は前年同月比+13.9%の19.3万台、内訳は国内向けが同+9.7%の9.0万台、輸出向けが同+18.0%の10.3万台となった。同月の国内販売台数は同+27.9%の8.5万台で9ヶ月連続の前年同月比二桁増、輸出台数は同+9.8%の9.9万台で7ヶ月連続の前年同月比プラスとなっている。1~5月の自動車生産台数は前年同期比+11.9%の86.8万台、国内販売台数は同+18.0%の40.1万台、輸出台数は同+5.3%の46.7万台。順調な国内新車市場を背景に自動車生産台数は11ヶ月連続の前年同月比プラスが続いており、FTIは近く2018年の生産台数目標を200万台から205万台へ引き上げる見通し。



2.投資動向

(1)商務省は外国人事業法の規制業種の見直しを行っており、会計サービス、法律サービス、賃貸借、貸金、コンサルティングの5業種が規制業種リストから外れる見込み。外国人事業委員会の決定および、閣議承認を経た上で今年9月に施行される見通しとクラニー商務省事業開発局長が明らかにしている。


(2)タイ国鉄は6月18日から7月9日まで、ドンムアン空港、スワンナプーム空港、ウタパオ空港を結ぶ高速鉄道整備事業の入札書類を販売。6月末時点で10社以上が入札書類を購入している。企業連合が形成され、3~4グループが応札する見通しとの見解をタイ国鉄は示している。入札は11月12日に行われ、翌日に落札者が発表される予定となっている。


(3)株式会社三井住友銀行は6月28日、国家科学技術・イノベーション政策局(National Science Technology and Innovation Policy Office、以下STI)と日系企業を中心とするタイへの投資促進に関する覚書を締結した。タイへの進出、ビジネス展開を検討している企業に対するSTIへの紹介などを通じ、産学連携、人材紹介・育成などの支援を行うことを企図。また、投資セミナーの開催など情報提供に関する協働も行う予定。STIとの覚書締結は金融機関として初となる。



3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2018年5月末時点の金融機関預金残高は19兆2,190億バーツ(前年同月比+5.4%)、貸金残高は17兆7,742億バーツ(同+5.1%)といずれも増加。



4.金利為替動向

〈金利動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のバーツ金利は、外部要因で上下するも結果的には低下となった。初旬は貿易戦争への懸念が強い中、月中に予定されていた政治イベント、金融政策イベントを控えてバーツ金利は低下。タイ10年債利回りは前月末2.82台後半であったものが2.77台前半まで低下。中旬に米金利が上昇したことを切っ掛けにバーツ金利も上昇。その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)がタカ派的であったことからバーツ金利は一段と上昇。さらにその後、米中通商摩擦が激化したことからタイ10年物利回りは2.85台半ばと一段と上昇。一方で、リスク回避姿勢の強まりでタイSET株価指数も大きく値を下げる中、株から債券へのシフトでバーツ金利は低下に転じ、2.77台前半でクローズ。20日にタイ中央銀行金融政策委員会(MPC)が開催され、5対1で現状維持が決定された。3月会合に続いて利上げ票が投じられたものの、相場への影響は限定的であった。


(2)(7月の展望)
今月のバーツ金利は、引き続き米金利動向および通商問題などの外部要因に振らされる展開が継続。一方、通商問題が落ち着いて来れば利上げ議論が活発化する可能性があるため要注意。


〈為替動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のドルバーツ相場は中旬から急騰。中旬に開催された米FOMCで示された政策金利見通しが従来よりも上方シフトされ、ドルが上昇。翌日開催された欧州中央銀行(ECB)理事会では、「少なくとも2019年の夏が終わるまで」利上げはないことが示された。マーケットでは2019年前半の利上げ開始が期待されていたことからユーロが失望売りとなり、ドル買い地合に。ドルバーツはそれまで32あたりで推移していたが、一連の金融イベントを受けて一気にドル高となり32台半ばまで上昇。その後、米国が500億ドル規模の対中輸入関税賦課を表明、それに対して中国が同等規模の報復措置を表明したことを受けてリスク回避となり他の新興国通貨同様にバーツも売られ、ドルバーツは32台後半まで上昇。こういった中開催されたタイ中央銀行MPCでは3月会合同様に1票の利上げ票が入ったが政策金利の現状維持が決定された。マーケットの関心が貿易戦争を中心とした外部環境となっており、相場への影響はほぼ見られなかった。月末にかけて、米国ハイテク企業への投資制限の発表、米国の対中輸入関税第一弾発動を控えて通商問題に対する警戒感が一層高まり、ドルバーツは33を上抜け。月末には、急激なドル高でそれまで手控えていた輸入勢のドル買い需要で一時33.2台前半まで上昇する局面もあった。


(2)(7月の展望)
中長期的なドルバーツ動向は、堅調なタイ輸出を背景にバーツ高トレンドに回帰するものとみている。ただし、今月6日に米国が340億ドル規模の第一弾対中輸入関税を発動するのか、またそれに対して中国は報復措置を取るのか、そしてさらにそれに対してトランプ大統領は報復を警告しているがどうなるのかと先行きの不確実性は高い。一旦イベント通過した後もすぐに不透明感の払しょくとなるとは考えづらいため、しばらくはドル堅調の時間帯となりそうだ。



5.政治動向、その他

(1) プラユット首相が6月19日、総選挙の日程は国王の戴冠式後になると記者団に述べたことを受け、2019年2月に実施されるとしていた総選挙の実施日が延期されるとの見方が出ている。その後、ウィサヌ副首相より「総選挙は2019年2月から5月に実施される見通し」、ウィラチョン政府副報道官より「戴冠式を理由に総選挙を先送りはしない」といったコメントが報道されており、依然として総選挙の日程が確定されない状況が続いている。


(2)付加価値税(VAT)の税率7%の適用期間について、期限となっている今年の9月末よりさらに1年の延長が7月3日の閣議で承認された。民間消費への懸念などから、経済成長を持続させるために据え置きを決定したもの。VATの税率は法律で10%と定められているものの、暫定税率7%が適用され続けており、10%への移行は長らく先送りされている。





(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。





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タイ国経済概況(2018年6月)

1.景気動向

(1)国家経済社会開発庁(NESDB)は5月21日、2018年第一四半期のGDPを前年同期比+4.8%と発表、20四半期ぶりの高い伸びとなった。NESDBは2018年通年の経済成長率の予測値をこれまでの前年比+3.6~4.6%から同+4.2~4.7%に上方修正、輸出は同+8.9%、国内投資は同+4.7%、民間消費は同+3.7%の見通し。財務省も同様に2018年の経済成長率の予測値を前年比+4.2%から+4.5%へと上方修正している。

(2)タイ中央銀行は4月の月例経済報告を5月31日に発表、継続して輸出が好調であることに加え、内需も拡大している。4月の輸出額は189億米ドルで前年同月比+14.6%となった。石油関連製品(同+25.8%)を筆頭に、農産品(同+17.5%)、自動車(同+17.2%)、電子製品(同+15.2%)と各主要分野で輸出が伸びている。また、民間消費は同+5.8%、消費者信頼感の回復、政府の低所得者向け支援策などが寄与した。民間投資も同+7.0%と伸長、設備投資が増加しており、通信、エネルギー、コンピューターなどの分野における機械輸入が拡大している。

(3)タイ工業連盟(FTI)が5月10日に発表した4月の自動車生産台数は前年同月比+11.9%の13.5万台、内訳は国内向けが同+12.1%の6.2万台、輸出向けが同+11.7%の7.3万台となった。4月の大型連休による操業日数減により、前月比の生産台数は▲31.0%となったが、前年同月比の生産台数は10ヶ月連続のプラスとなっている。また、同月の国内販売台数は同+25.2%の7.9万台、輸出台数は同+5.3%の7.3万台。1~4月の自動車生産台数は前年同期比+11.3%の67.4万台、国内販売台数は同+15.5%の31.6万台、輸出台数は同+4.1%の36.8万台。現在、ベトナム向け自動車輸出は、ベトナムが年初に導入した自動車輸入規制により大幅に落ち込んでいる。タイ政府は6月に開かれるタイ・ベトナム貿易合同委員会にて、ベトナムに対して当規制の見直しを求めるものとみられる。



2.投資動向

(1)EEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)法が2018年5月14日官報で告示され、15日付で施行となった。EEC法は73条から成り、外資企業ならびにタイ企業のEECへの投資促進や産業の高度化を目的としたもの。対象地域、各種委員会の権限、都市開発の方針、外国人雇用や投資優遇措置などの指針が定められている。EEC政策委員会やEEC事務局に裁量を与えることで、柔軟に投資誘致を行うことができるようになっている。もっとも、EEC法自体にて投資の恩典や条件の詳細を定めたものではなく、EEC投資に関連する法規や告知などの根幹を成す法律という性質を持つ。

(2)タイ国鉄は5月25日、バンスー駅および都市鉄道レッドラインの建設作業現場を報道陣に公開した。現在、バンスー駅の工事の進捗率は49%、利用開始は2020年第3四半期となる見込み。バンスー駅は、国鉄、都市鉄道、バス、高速鉄道などが接続するターミナル駅(バンコク新中央駅)として整備が進められている。タイ政府は駅周辺につき民間資金を活用して副都心として開発したい意向であり、オフィスビル、商業施設、国際展示場などが開発される見通し。



3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2018年4月末時点の金融機関預金残高は19兆2,058億バーツ(前年同月比+5.5%)、貸金残高は17兆5,693億バーツ(同+4.8%)といずれも増加。



4.金利為替動向

〈金利動向〉
(1)(5月の回顧)
5月のバーツ金利は、上旬から中旬にかけては米金利の上昇に加えてリスクオフで金利は上昇。下旬にはやや失速するも月間を通しては大幅上昇。月初、米金利の上昇にともないタイ10年債利回りは2.64%台で推移。その後、米国のイラン核合意離脱および同国への経済制裁再開を受けて原油価格が上昇し、米10年債利回りが再び3%台を回復。これにともないバーツ金利も上昇。さらに、米中通商協議が両者の溝が埋まらないまま終了となったことや、マレーシア総選挙での野党勝利によるリスク回避の動きでバーツ金利は一段と上昇。16日のタイ中央銀行金融政策委員会(MPC)では全会一致で現状維持が決定されたが、相場への影響は限定的。その後、イタリアでポピュリズム政党が連立政権樹立で概ね合意に達したことで、リスク回避となりバーツ金利は上昇。また、21日に発表されたタイ2018年第1四半期GDPが前年同期比+4.8%と予想を上回る好調な結果となったことでタイSET株価指数は大きく上伸し、これを受けてバーツ金利も上昇。貿易戦争へのリスクや北朝鮮を巡る緊張感が高まってリスク回避モードとなるとタイ10年債利回りは2.85%台後半まで一段と上昇。その後発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録がタカ派的でなかったことやイタリア政局リスクから米金利は大きく低下したが、バーツ金利は小幅低下に留まった。

(2)(6月の展望)
今月のバーツ金利は、引き続き米金利動向を中心とした外部要因に振らされる展開継続。中旬の米FOMCで利上げペースの加速が示されるかどうか注目される。一方6月20日にタイ中央銀行がMPCを開催するが、政策金利は現状維持が見込まれる。第1四半期GDP、5月米消費者物価指数(CPI)ともに予想を上回る良好な結果となったため、出口議論が台頭する可能性も。しかし、通商関連をはじめ外部環境に先行きの不透明感がある中で急いで利上げする必要はないものとみられる。

〈為替動向〉
(1)(5月の回顧)
5月のドルバーツ相場は上昇。米利上げペース加速への期待後退が下押し要因となったが、一方で五月雨式に発生した欧州政治、貿易戦争をはじめとしたリスク要因が相場を押し上げた。月初、米利上げペース加速への警戒感からドルバーツは31.7台半ばまで上昇。しかし、2日の米FOMCが期待ほどタカ派的ではなかったことからドルバーツも31.60近辺まで低下。その後、米中貿易戦争への懸念や米国のイラン核合意離脱、マレーシア総選挙でのマハティール氏勝利でリスク回避モードとなり、ドルバーツは一時32.2台前半まで上昇。そういった中発表された米CPIが予想を下回ったことで、利上げペース加速への期待後退からドルバーツも32を割って低下。今度は北朝鮮リスクへの警戒感に加えて、イタリアでポピュリズム2政党が連立樹立で概ね合意したことで欧州政治リスクも懸念されドルバーツは一時32.2台後半まで上昇。その後発表された米FOMC議事録で利上げペースの加速を確認できずドルバーツは反落。月末近くには、米中貿易摩擦やイタリアでの再選挙の可能性を巡る思惑でドルバーツは上下したが、結局32ちょうど近辺でクローズ。この月に発表されたタイ経済指標は2018年第1四半期GDPを始め良好であったが、相場への影響はほぼ見られず外部要因主導での相場展開であった。

(2)(6月の展望)
中期的なドルバーツ動向は、堅調なタイ輸出を背景にバーツ高トレンドに回帰するものとみている。ただし、今月中旬の米FOMCで今後の利上げペースの加速が示されるかに注目が集まっており、結果次第ではドル一段高の可能性も。また貿易戦争への警戒は継続していることもドルバーツをサポートするものと思われる。一方、タイ中央銀行は20日にMPCを開催するが、こちらでは政策金利は現状維持が見込まれる。ただし、第1四半期GDP、5月CPIともに予想を上回る伸びを示しており、出口議論が台頭するか注目される。



5.政治動向、その他

(1)アーコム運輸相はタイおよびカンボジア間の鉄道が6~7月に開通する見通しを示している。また、今後サケオ県のアランヤプラテート駅よりさらに国境に近い駅を建設し出入国管理を実施するとしている。カンボジアでは、プノンペン市内と空港を結ぶ鉄道が4月に開通しており、プノンペンからタイ国境ポイペトを結ぶ路線の修復作業を続けているなど、鉄道整備が進められている。

(2)軍事政権発足後4年を迎えた5月22日、市民約200人がバンコクのタマサート大に集結、早期の選挙実施を求めたデモ行進を開始したものの警察により阻止された。政府は、総選挙を2019年2月に実施するとしているが、年内の選挙実施を求める声や再び先送りされるとの懸念の声があがっている。




(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。




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タイ国経済概況(2018年5月)

1.景気動向

(1)タイ中央銀行は3月の月例経済報告を4月30日に発表、タイ経済は輸出および観光の外需が経済の牽引役となり、引き続き拡大をしているとの見方を示した。3月の輸出額は221億米ドルで前年同月比+6.3%、同月の外国人旅行者は同+16.3%の350万人。第1四半期(1月~3月)で見ると、輸出額は前年同期比+9.9%の618億バーツ、自動車、石油化学および電気電子製品が好調。また、同期の外国人旅行者は同+15.4%の1,061万人、中国の地方都市からの直行便就航が一因となり中国人観光客が増加。

(2)タイ国家統計局(NSO)は5月7日、4月の失業率を1.1%と発表した。失業者数は前年同月比▲14.5%の40.5万人で、内訳は新卒などの就業未経験者は23.3万人、就業経験者は17.2万人。全国の労働人口3,799万人のうち就業人口が3,728万人、就業者の内訳は商業が1,789万人で最も多く、続いて農業が1,074万人、製造業が865万人となっている。

(3)タイ工業連盟(FTI)が4月25日に発表した3月の自動車生産台数は前年同月比+9.2%の19.5万台、内訳は国内向けが同+22.6%の9.1万台、輸出向けが同▲0.4%の10.4万台となった。また、同月の自動車国内販売台数は同+12.1%の9.5万台、輸出台数は同+4.7%の11.1万台。第1四半期では、自動車生産台数は前年同期比+11.2%の54.0万台。第1四半期の自動車生産台数の内訳は、国内向けが同+21.2%の23.9万台、輸出向けが同+4.3%の30.1万台となった。



2.投資動向

(1)タイ投資委員会(BOI)は4月18日、2018年第1四半期の投資申請額が2,036億バーツ、申請件数が333件と発表。また、東部経済回廊(EEC)内への投資は808億バーツとなった。BOIは2018年の投資申請額目標を7,200億バーツ(前年実績比+12%)に設定しており、第1四半期の投資申請額は通年目標の28%に相当する額となっている。

(2)ソムキット副首相は5月1日、バンコクにて茂木敏充経済再生担当相と会談し、タイが包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP/通称TPP11)へ参加する意向を示した。茂木氏はタイのTPP11参加を歓迎、タイのTPP11加入に向けて協力する考えを表明している。タイはTPP11参加にかねてより前向きな姿勢を示しており、加入により貿易の拡大を狙うもの。



3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2018年3月末時点の金融機関預金残高は19兆1,679億バーツ(前年同月比+6.1%)、貸金残高は17兆4,917億バーツ(同+4.6%)といずれも増加。



4.金利為替動向

〈金利動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のバーツ金利は、月前半は膠着したが後半には米金利上昇にともない上昇となった。月初、米中貿易摩擦激化や米株の大幅下落を受けタイSET株も下落となったがタイ10年債利回りは2.56%台で小動き。米金利を下回る水準であることから感応度も下がったものと推察される。中旬に習近平中国国家主席が市場開放および関税引き下げについて述べたことを契機に米中通商問題への懸念が後退。また、ソンクラン休暇中にシリア爆撃あるも、その後報復行動もなく1回限りで終了との見方となりシリア情勢への懸念もソンクラン休暇中に概ね消化された。さらに、金朝鮮労働党委員長が核実験およびミサイル発射実験を中止すると発言したことや南北首脳会談では従来の休戦協定から平和協定に転換する方針が示されたことで北朝鮮情勢を巡る緊張も緩和された。通商問題、地政学問題への懸念が後退していく中、米金利は良好な米経済指標を受けて上昇し、一時は3%の大台を回復。これを受けてタイ10年債利回りも2.60%台まで上昇。米金利が月末調整で金利低下となったが、タイSET株が米金利低下および地政学リスクの後退を好感したことで、バーツ金利は小幅上昇。タイ10年債利回りは2.61%台でクローズとなった。

(2)(5月の展望)
今月のバーツ金利は、引き続き米金利動向を中心とした外部要因に振らされる展開が継続。今月中旬にタイ中銀が金融政策委員会(MPC)を開催するが、政策金利は現状維持が見込まれる。輸出がけん引してタイ経済は良好であるが、インフレは依然低水準であり利上げを急ぐ状況にはない。前回は反対票があり全会一致とならなかったが、今回も票が割れるか注目される。

〈為替動向〉
(1)(4月の回顧)
バーツ相場は、米金利上昇を手がかりとして月後半に大幅に上昇。月初、米中貿易摩擦が激化する中ドルバーツは31.1台半ばでオープン。その後はジリ高推移。ソンクラン休暇前に開催された博鰲(ボアオ)アジアフォーラムにて習近平中国国家主席が「市場開放」「関税引き下げ」について繰り返し述べたことから貿易戦争への懸念が後退し、ドルバーツは一時31.1台前半まで下落。ソンクラン休暇中に米英仏がシリア爆撃を行ったが、その後の報復行動がなかったことなどから地政学リスクへの懸念は後退。下旬には、貿易戦争、地政学リスクといった懸念材料が一服し米国を中心とした経済および金融政策に焦点が移っていく中、良好な米経済指標を手がかりに米金利が上昇したことでドルバーツも上昇。そういった中タイ商務省より発表された3月貿易統計では、輸出額は前年比+7.1%と伸びは鈍化したものの223.6億ドルと過去最高を記録し、貿易黒字も拡大。しかし、米金利上昇を背景としたドル買いの流れの前では材料視されなかった。米10年債利回りが3%の大台を回復すると、ドル買いの勢いがさらに強まりドルバーツは一段と上昇。利益確定の売りで押される局面あるも上昇トレンド継続となり、ドルバーツは31.6台を回復。米金利が月末調整で金利低下となったことや輸出のドル売りなどでドルバーツは下押しされ31.5台後半でクローズとなった。

(2)(5月の展望)
ドルバーツ動向は、基本的には堅調なタイの輸出を背景にバーツ高トレンドとみられているが、今月は米金利動向に振らされやすい状況になるものと思われる。今月初に開催の米FOMCでは足元データを受けてインフレ判断は上方修正されたが、今後の利上げに関しては従来から変更なしであった。6月利上げに関しては直接的な示唆はなかったが、利上げは実施されるとの見方がコンセンサス。タイ中銀は今月中旬にMPCを開催するが、こちらについては政策金利の変更は見込まれていないが、前回と同様に反対票が入るか注目される。



5.政治動向、その他

(1)商務省が5月1日に発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+1.1%、10ヶ月連続の上昇となった。CPIの上昇率はここ1年ほど、前年同月比0~1%前後にて推移。4月のコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除いたもの)の上昇率は同0.6%で、生鮮食品は同0.5%、エネルギーは同4.7%となっている。商務省は2018年通年のCPI上昇率について、「前年比0.7~1.7%」と予測している。

(2)国際協力銀行(JBIC)の前田匡史代表取締役副総裁は5月7日、プラユット首相およびソムキット副首相を表敬訪問。ドンムアン空港、スワンナプーム空港、ウタパオ空港を結ぶ高速鉄道への低利融資や、日中タイ共同のインフラ開発などについて話し合ったとされる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
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タイ国経済概況(2018年2月)

1.景気動向

(1)バンコク日本人商工会議所(JCC)は2月2日、日系企業景気動向調査の結果を発表。2017年下半期の業況感(DI)は29、2018年上半期の業況感は37となった。現在、国内需要の回復や好調な輸出を反映し、DIは上昇傾向にある。同調査における経営上の問題点に関する質問では、「他社との競争激化」「総人件費の上昇」「エンジニアの人材不足」という回答がトップ3を占めている。また、タイ政府への要望では、「関税や通関に関わる制度や運用の改善」「景気対策の推進」「バンコク首都圏の交通インフラ整備」が前年同様トップであるが、直近のバーツ高を反映し、「為替の安定化」を挙げる声も増えている。

DI:業況の改善を見込む企業の割合から悪化とみる企業の割合を差し引いた値


(2)タイ工業連盟(FTI)が1月24日に発表したタイの2017年の自動車生産台数は、前年比+2.3%の198万8,823台であった。国内向けが同+11.0%の86万2,391台、輸出向けが同▲3.5%の112万6,432台。2018年の生産台数の予測値は、国内向けが+4.4%の90万台、輸出向けが▲2.4%の110万台となっており、5年ぶりに生産台数が200万台を超えることが見込まれている。2017年の国内新車市場は個人消費の拡大やファーストカープログラムの反動の解消により二桁成長となった。2018年は伸び率は鈍化するものの、引き続き国内市場は堅調に推移すると見られる。一方で2018年の自動車輸出はベトナムおよび中東向け輸出がマイナス要因とみられている。2018年より、ASEAN域内の関税引き下げにより、タイからベトナムへの新車の輸出が加速すると予想されていた。しかし、ベトナムにて関税の撤廃と同時に、輸入車の品質を証明する認証が課されるなど非関税障壁が設定された。また、中東向け輸出の不振も続いている。



2.投資動向

(1)タイ投資委員会(BOI)は1月12日、2017年の投資申請金額が6,420億バーツ(前年比+10%)、投資申請件数が1,456件であったと発表。このうちEEC(東部経済回廊)向け投資申請金額が全体の46%を占める2,969億バーツ、投資申請件数は388件となっている。またハイテク産業10業種の投資申請額は3,920億バーツであった。海外からの直接投資(外資比率10%以上の企業からの申請案件を計上)は、日本からの投資申請額が前年対比2倍となり1,330億バーツでトップ。次いで、シンガポール(404億バーツ)、中国(275億バーツ)、米国(200億バーツ)、オランダ(158億バーツ)と続く。

(2)東部経済回廊(EEC)開発政策委員会は2月1日、EEC関連のインフラ整備事業168件を承認した。総投資額は1兆バーツに上る。EEC(チョンブリ県、ラヨン県、チャチュンサオ県)のインフラ投資は3期に分けて実施。第1期(2017~18年)には99事業が含まれ、主なプロジェクトはラヨン県ウタパオ空港における保守、修理、分解点検(MRO)施設や新ターミナルの開発、3空港(ウタパオ、スワンナプーム、ドンムアン)を結ぶ高速鉄道、パタヤ-マプタプット間の高速道路の建設など。

(3)タイ政府は1月30日の閣議で、最低賃金を4月1日に引き上げることを承認した。引き上げ幅は1.6~7.1%(5~22バーツ)で、県別で日額308~330バーツとなる。もっとも高い最低賃金である330バーツが設定される3県は、製造業が集積するEECに位置するチョンブリ県およびラヨン県、観光業が盛んなプーケット県。次に高い325バーツが設定される県は、バンコク首都圏(バンコク都、ノンタブリ県、パトゥムタニ県、サムットプラカーン県、ナコンパトム県、サムットサーコーン県)およびEECに位置するチャチュンサオ県となっている。



3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2017年12月末時点の金融機関預金残高は18兆8,478億バーツ(前年同月比+5.1%)、貸金残高は17兆4,010億バーツ(同+4.1%)といずれも増加。



4.金利為替動向

〈金利動向〉
(1)(1月の回顧)
1月のバーツ金利は小幅低下。昨年末に米税制改革法案が成立したことによる期待や堅調な米景気から米金利は上昇した一方で、バーツ金利は上昇が見られなかった。月初タイ10年物国債金利は2.3%台半ばでオープン。中旬に中国当局が米国債投資の減額および停止を勧告との関係者情報が伝わるとタイ国債にも買いが入りバーツ金利低下。その後しばらく、この影響が続いたが徐々に米金利の動向にともなう動きになっていった。月末にかけては米連邦公開市場委員会(FOMC)への警戒感から米金利が上昇したことにともないバーツ金利も上昇したが、結果的にはタイ10年物国債金利は2.51%と前月末対比小幅に金利低下して越月。なお、ドルバーツの通貨ベーシスが中旬以降に縮小しており、バーツ買いのフローが相応にタイ国債市場にも流入したものと考えられる。

(2)(2月の展望)
先月の米FOMC声明文でインフレ見通しが上方修正され、今月初に公表された米雇用統計で賃金の上昇が確認されており、米インフレ上昇への警戒感も台頭してきている。一方で、タイでは低水準のインフレや高水準の家計債務から当面政策金利の据え置きが見込まれており、好調な輸出を背景に対ドルでのバーツ高も見込まれるため海外投資家のタイ国債への需要は堅調と思われる。この両要因の綱引きに加えて、先月利上げをしたマレーシアをはじめとした周辺国の動向を睨みながらの展開になるものと考える。

〈為替動向〉
(1)(1月の回顧)
1月のドルバーツ相場は、ドル全面安となり大きく下落。米国以外の中央銀行も金融引き締めに舵を切りだしている中、米利上げペース鈍化懸念から年初のドルバーツは32.46と上値重くオープンし、その後も下値を切り下げる展開。中旬に中国人民銀行(PBOC)が人民元相場の管理体制を変更したとの関係者情報が広がり人民元が対ドルで急落。それにともなうようにバーツも対ドルで下落。しかし翌日には、中国当局が米国債投資の減額および停止を勧告との関係者情報が伝わったことでドル売りとなり、ドルバーツも再び下落。さらに欧州中央銀行(ECB)議事録の内容がタカ派的であったことからドル売りが加速し、ドルバーツは32割れに。下旬には、ムニューシン米財務長官のドル安容認発言でドルバーツは一気に下落。2013年11月以来となる31.30まで下落した。その後、トランプ米大統領が強いドルを望むと円安容認発言を否定する発言でドルバーツは一時的に31.4台まで戻すもドル売りの流れは変わらず31.33で越月。

(2)(2月の展望)
今後のドルバーツ動向は、米国要因に振らされる展開が基本的に継続。先月末の米公開市場委員会(FOMC)声明ではインフレ見通しが上方修正されたところに、今月発表された米雇用統計で賃金の上昇が確認された。さらに、複数の米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派的発言もあり足元ドル買戻しとなっている。米国以外でも金融引き締めへの動きが見られることから中期的にはドル売りトレンドは継続するものと考えるが、このトレンドが一旦修正されるか注目される。



5.政治動向、その他

(1)ウィサヌ副首相は1月25日、記者団に対し、総選挙は2019年1月あるいは2月になる旨の見解を示した。プラユット首相は昨年より2018年の11月ごろに選挙を行うと述べてきた。しかし、1月25日、総選挙に先立って施行される下院選挙法の施行日が官報告示の90日後とする決定を立法議会がおこなった。これにより総選挙の日程も3ヶ月程度遅れる見通しとなった。

(2)バンコクとチェンマイを結ぶ新幹線計画の事業費用の削減のため、タイ側より駅数を減らす提案が出ている。2月7日の専門家会合にて、日本側は駅数の削減により利用者や収益の減少が考えられることから慎重な姿勢を示した。しかし、アーコム運輸相は駅削減に代わる事業費の削減案を日本側に求めるなど、事業費用をめぐる議論が続けられている。なお、駅数削減の提案の前には、最高速度の引き下げによる事業費用の削減が議論となっていたが、ソムキット副首相より最高速度の引き下げは行わず当初の事業案(最高時速300キロ)にて計画を進める旨の見解が示された。




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【タイ】反政府系グループの集会実施に伴う注意喚起

在タイ日本国大使館からのお知らせ

一部報道によると、明日(‪1月27日‬)‪、17時30分から‬、反政府系グループが総選挙の早期実施等を求めるための集会をパトゥムワン交差点のスカイウォーク(MBK前:マーブンクローン前)で実施することを発表しています。

在留邦人および旅行者の皆様におかれましては、上記情勢に留意の上,不測の事態に巻き込まれることのないよう,最新の関連情報の入手に努めるとともに,可能な限り集会には近づかない等,安全確保に十分注意を払って下さい。


(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
 電話:(66-2)‪207-8500‬,‪696-3000‬
 FAX :(66-2)‪207-8511‬
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