声をあげつづける
いま、峠三吉(とうげ さんきち)の『原爆詩集』を読み返す。その巻頭の「序」を知る人は少なくないだろう。広島の平和公園に石碑となって刻まれてもいる。
――一九四五年八月六日、広島に、九日、長崎に投下された原子爆弾によって命を奪われた人、また現在にいたるまで死の恐怖と苦痛にさいなまれつつある人、そして生きている限り憂悶と悲しみを消すよしもない人、さらに全世界の原子爆弾を憎悪する人々に捧ぐ。
序
ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ
(峠 三吉『原爆詩集』、青空文庫)
一九四五年をいま、二〇二二年に置き換えてみる。ロシアの、追い詰められた一人の男が、ウクライナ国民に、ヨーロッパに、いや世界中に、最もむごい攻撃をしないことを切に祈る。
峠三吉は、その最もむごいことが為されてしまった後に、この詩を書いた。わたしたちは、まだ間に合うことを信じよう。
ちちをうばうな ははをうばうな
としよりをうばうな
こどもをうばうな
わたしをうばうな わたしにつながる
にんげんをうばうな
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをうばうな
そのように声をあげつづけよう。
糸
わたしのこころと
あなたのこころと
よりあわさって
いのりの
いっぽんの糸と
なりますように
●ご訪問ありがとうございます。
国民の犠牲が増え続けています。むごいことです。プーチン大統領の心が壊れているではと思う気持ちが湧きます。祈り続けたいと思います。
峠三吉の別の詩に、このような叫びがあります。私自身の声でもあります。
何故こんな目に遭わねばならぬのか
なぜこんなめにあわねばならぬのか
何の為に
なんのために
(峠三吉「仮繃帯所にて」より、青空文庫)
*青空文庫は、インターネットで読める無料の文庫です。
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