息子らの坂
1
聖書があった
二親(ふたおや)は神を信じる者だった
息子らが生まれた
二親は祈って聖書を開いた
長男 イザヤ書三〇章二一節
次男 ヨハネの福音書一六章二四節
三男 第二テモテ一章一四節
─いつしか信じる者になってくれたら
そんな願いをこめて名づけた
いま息子らは
自分の坂をのぼろうとしている
おぼつかない足取りだが
二親は坂のふもとに立ち
それぞれの後ろ姿を見守っている
―頼れる方はおられるんだよ
そんなエールをおくりながら
2
子どもの坂は上り坂
親の坂は下り坂
いつまで
どこまで
同じ坂をいっしょにのぼってきたのだったか
すれちがうエスカレーターみたいに
親はくだり
子どもはのぼり
3
─息子ら
父の背中を馬にして遊んだ
馬は畳の上をグルグル回る
─息子ら
のぼって しがみついて
けれどもすべりおちて
またのぼって
ゲラゲラわらって
─息子ら
いまそれぞれの坂の前
坂はときにそそり立つようだ
─息子ら
のぼろうとして すべりおちて
しがみついて すべりおちて
それでものぼろうとする
いつかまた
ゲラゲラ笑える さ
この門を開けた君は
この門を開けた君は
安住をすてて
新たな居場所を探すのだ
この門を開けた君は
いつか
つぎの門に着けるだろう
その門まで遠いかもしれね
その門は重いかもしれぬ
けれど君はこの門を開けたのだ
ふり返らなければ
前しか見ないと決めたなら
君よ
さし伸べてくれる手に
いつか
きっと出会える
●ご訪問ありがとうございます。
今日は父の日。子育てに励む息子らに、ひたむきに生きている息子らに、ささやかなエールをおくります。