野菜の声 おおきなかぶ
1
ざざざと
おおきなかぶを洗う
おじいさんのいたみを洗う
おばあさんのかなしみを洗う
ざざざ ざざざと
おおきなかぶを洗う
子も孫も戦(いくさ)にかりだされた
畑にのこされたおおきなかぶ
ざざざ ざざざ ざざざと
おおきなかぶを洗う
いっしょに育てよう、いっしょに抜こう、いっしょに洗おう
そう何度も何度もいのりながら
おばあさんのまっしろになった髪がゆれる
おじいさんのまっしろになった髭がぬれる
2
おおきなかぶの葉を持って
振ってみよう
かぶは
りんりんと笑うだろう
まっしろな歯をみせて
地平線の向こうまで
つんとのびた頭のさきっぽから
りんりんと笑うだろう
その笑い声は
戦(いくさ)の終わりをつげる鐘となって
青い空と黄色の小麦畑に
りんりんとひろがっていくだろう
●ご訪問ありがとうございます。
二〇二三年二月二十四日の今日、ロシアの、いえ、プーチン大統領のウクライナ侵略から一年も経ってしまいました。
『おおきなかぶ』は、ロシアの民話です。おじいさんとおばあさんと孫と犬と猫とねずみ、みんなが力を合わせて大きなかぶを引き抜くお話です、うんとこしょ、どっこいしょ、うんとこしょ、どっこいしょと声をかけ合いながら。
ロシアの人々が、力を合わせてこの侵略戦争を止め、地中に埋もれてしまった「平和」を再び地上に引き上げてほしいと願わずにいられません。
(ちなみに、よく知られている童話『てぶくろ』は、ウクライナの民話です)