「寸」と「忖」と
1
たくらみのひそんだ
気配りがある
本人だけが知っている
にくしみのかくれた
微笑みがある
本人さえ知らないかもしれぬ
一寸と書いて
ちょっと とも読む
忖度(そんたく)に紛れこんだ ちょっとの企み
本人も知っているちょっとの企み
相手も知っているちょっとの企み
ちいさな胞子が ふたつの心のひだにカビをはやす
2
一寸の虫って ほんとに小さいかな
テントウムシより ミツバチより おっきい
カマキリより トカゲより ちっちゃい
セミや赤トンボ くらいかな
―一寸の虫にも五分の魂
小さいからって馬鹿にするな というけれど
五分の魂って からだ半分もあるんだよ
透明な深海魚の心臓みたいにバクンバクンと動いてる
忖度って ソンタクと読む難しい字だね
でも はやっているから馴染みができた
ほんとは難しいのに簡単になって
誇れる魂が 十分の一くらいに縮こまって
●ご訪問ありがとうございます。
忖度ばやりです。もともとは気配りや深い推量のことだったのが、あるときから計算高い人たちの、あるいは臆病な人たちの処世術のようになってしまいました。
「一寸の虫にも五分の魂」は、小さきものの魂の誇りを表します。小さく、名も無きものでもあなどるなかれ、との警告です。
でも、考えてみれば、体半分を占める魂です。人間でいえば、胴の上が全部魂です。忖度などで売り渡してはいけないもの、それが魂なのです。