ほいほいとぼとぼ日記・爺爺刻々

小樽のラーメン屋 麺亭見晴らし坂ばなし 第五話

昼時になって風が強くなってきた。坂の途中にある店の前は風の通り道。風のピューという音と一緒に坂の上から吉永さんがおりてきた。花園町で先代から50年以上写真スタジオを続けてきている人で、いい人だが、少し押しが強いのが難点。歳はとっても、通称は隆くん。

 

はいよ、いつもの。餃子もつけて。あと。ビールもらっちゃおうかな。え、昼からだって、いいのよ。今日は暇だから。このとこ、ますます景気は悪いねぇ。子供がいなくなっちゃんたのかね。老人も子供に祝ってもらわないのかねぇ。小樽は人口減少中だからな。何をいっても愚痴になるねぇ。でも、そう愚痴言っていても金にはならんねぇ、なってもガマグチくらいかな。おっと、長代さんと同じレベルの親父ギャグ。まずい!でさあ、そこは天才の隆くんは新しい仕事を考えたんだよ。出張撮影、ロケ撮影。思い出のある場所とかに行ってね、そこでさ、写真撮っちゃうのね。廃校になった小学校とか、学校関係ね。あとは仕事場だってあるよ。初デートの場所ってのもあるかもしれないけどね。結婚式もOKですよ。FACEBOOKでこんな撮影会どうだって、まずは同窓生から声がけしてね。みんなで集まったりはするけど、教室なんかいいだろ。昔の席に座ったりとか。そう、そんな感じでね。そうだ、お前さあ、ここも写真撮らないか?店の常連さんに集まってもらって。狭いって?そこは任せなさいよ。伊達に写真屋やってるんじゃないからね。今じゃ360度のカメラもあるんだよ。撮り漏れなし。写真だけでなく、食べてる風景とかさ、写真だけでなくビデオで記念になるでしょ。金はお試しだから、大サービスするよ。おお、決まった、決まった。いつやろうか。決めてとけよ。ちゃんとみんなにも、お前さんのラーメンはなまら旨いよって言っておくからさ。

相変わらずの押しの強さだが、景気の悪い話よりは楽しい話になるならいい。天才隆くんは、店をでたら、もうロケハンのつもりか店をなめるようにひとしきりアングルをみていたようで、満足いったらしく坂を登っていった。

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