馬屋記ーヤギとクリの詩育日誌

詩育日誌08.01夏の声

頭のすぐうえで
クマ蝉が鳴きはじめる瞬間の
スリリングな感覚が
ワシは、好きじゃ。
車の騒音
室外機のモーター音
公園で遊ぶ子供たちの声が
シャーシャーシャーの中に
遠のいていく
空間のなかにある一点
沈黙の底を震わせて
鳴けば鳴くほど
色も形も
透けていく
はらはらさせられる
ミュートボタンは
いつ解かれるんじゃ?
消えていたものたちが
なつかしい顔になって
帰ってくる
生きているものも死んだものも
まずは一人目
砂場で遊んでいた男の子
のどが、カラカラ。
つぎは
ベンチに座っていた老婆
なつかしいしぐさ
ちかごろ、耳が遠ゆうなって。
頭をかきながらレース針で
にぎやかな夏を
編みなおす
クマ蝉が鳴きおえる瞬間も
ワシは、好きじゃ。


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