今から3年前のきみへ。
中学3年生の君は、まだ未来が見えていなかった。
高校受験塾の先生方は、超熱血で
ただでさえ 遅い時間に終わる授業が 毎回更に延びて、
クタクタに疲れ切った君は 青白い顔をして
夕飯を味わう事なく 犬が餌を食べるみたいに
無言でかき込んだ
母さんは、極度に心配性だから
こんなに毎日、塾の授業で遅くなる君を見て
「そこまで しなくてもいいのに」
と思った。
直接君に言ったりもした。
「別に、無理せず入れる高校で、良くない?
大学受験の時に、一生懸命勉強すれば それでいいじゃない?」
世の中には 長時間勉強しても苦にならない人もいる。
生まれながらにして 地頭の良い人たち。
体力があって猛烈に追い込みが出来る人たち。
君は、そんなタイプではないはずだ。
でも
ある高校を
君は僅かに気に入ったようだった。
小さい頃から、何かを買ってほしいと
ねだることも殆どなくて、
「この子は、本当に何も欲しがらないんだよ。
好きなものを買ってあげるよ、持っておいで。
と言っても、何も持ってこないんだ💦」
そう、じいちゃんばあちゃんに驚かれた。
そんな消極的な子なのだから
夢は見ない方がいい。
自分のレベルよりちょっと低いくらいの学校が丁度良いんじゃない?
親もアホだ。
君が行きたいと思わない学校ばかり 選んで見学に行っていた。
東京は学校がとにかく多い。
口コミも何百と読んだ。息子に合う学校は自然とわかる。
いい学校だよ、行こうよ!と誘っても
君の表情はいつも固かったね。
この頃から、君は第一志望を明確に決めていたんだと思う。
1月になってから、急にエンジンがかかって
過去問を一生懸命解き始めたね。
いつだって、嫌々ながら勉強してたのに。
でも 手ごたえは全然感じられなくて
やってもやっても、伸びない。
ずっと暗いトンネルの中にたったひとり
身動きが取れない。
どうすれば光が見える?
何もわからないまま。
苦しいよ。
苦しいよね。
いいよ、やめちゃいなよ。
「そんなに本気になっちゃって、やだな。」
と母さんは本気で思った。
だって、
勉強嫌いな君が一生懸命勉強し始めたら
不合格になった時、なんて言葉を掛ければいいの?
挫折は人を強くするとか
早ければ早い方がいいとか
そんなこと言う人がいるけれど
この子は
人より幼いんだ。
過保護だとか
甘過ぎるとか
何を言われても 構わない。
とにかく 君を傷つけたくない。
たった15歳の君に
絶望の淵に立ってほしくはないんだ。
勝負なんてのは、ずっと後でいい。
周りには、中学受験して 果敢に勝負に挑む子達がいるのも事実
でも
君には、向かない。
そんなに急いで大人にならなくて
いいんだよ。
君は君のペースで
ゆっくり
ゆっくり
歩めばいい。
こわいよ。
こわいよ。
根性なしの母さんは 勝負する前から
不合格の時に
君にかける言葉を
いつも探していたんだ。
これが 本当の私の姿。
ダメな母さん。
けれども
寒い寒い冬に耐えて
真っ暗なトンネルを独りぼっちで歩いて
君は 出口に 辿り着いた。