首を曲げて

　５月９日（火）　対戦相手：酔ったおじさん

　新宿駅

　

　夜、新宿駅の改札を通ろうとした時の事。目の前の、目の前と言ってもかなり先なんですが、先を歩いていたおじさんが

　

　バタッ！

　

　と倒れました。倒れたというか崩れ落ちた感じです。周りにいる人が誰も手助けしようとしません。駅員も出てきません。誰かが手助けするようなら「頼んだ！」って心の中で呟いてスルーしてしまう所ですが、さすが東京砂漠。誰も近寄らないので、介抱しようと近寄りました。

　

　おじさんは出る時に倒れたのか、逆走しようとして倒れたのかは良く解りませんが、自動改札の左右から伸びてる羽（人を止める為のヤツですよ。）に、

　

　頭が挟まってた。

　

　「大丈夫ですか？お父さん、大丈夫？」

　

　声を掛けると「う…おう。」って反応しますが、起き上がれる状態ではありません。しかも頭挟まってるし。お父さん、まずは首を曲げて羽から脱出しましょうよ。出来る？かなりの酩酊状態で、何とか首は抜けましたが、そこはまだまだ自動改札の狭い仕切りの中。向こうから人がドンドン向かってくるし、どこぞのおねーちゃんなんか、お父さん飛び越えるし。お父さん、ここにいると危ないから、ちょっと移動しましょうね。

　

　脇を抱えてぐっと持ち上げると、酩酊状態で脱力してるせいか、すんごい重いんです。よっしゃ、いっちょ気合いを入れて、ヨイショって脇を持ち上げたら、お父さんが肩から下げていたカバンのベルトが

　

　首に食い込んだ。

　

　ごめーん。わざとじゃないんだってば。でも、その一撃で意識が戻ったお父さん、開口一番

　

　「切符が無いんだよ。」

　

　自分のこと心配しましょうよ。やっとの事で出て来た駅員（若くて仕事出来なさそう）に「あとヨロシクね。」と告げ、その場を離れようとした時、おじさんはニッコリ笑って

　

　固い握手を求めてきました。

　

　飲みすぎと切符紛失と改札の羽には気をつけてね。あとカバンのベルトにも。