12:50
ヤマトにはトラックがある時間までに一斉にセンターに戻ってきて、
一斉に休憩を強要する謎ルールがある。
たとえ配達の荷物がたくさん残されていても、だ。
端末の「休憩」ボタンを押し、それを運行管理者に見せ、休憩を告げる。
その間、全く荷物に手を付けてはならない。
段取りを組んでもいけない。
端末の休憩は60分経つまで解除できない。
気持ちが焦る。
僕はルールに無視して午後の段取り、
昼から届いた荷物のトラックへの積載を支店長に見つからないようにコッソリ始めた。
そうでないと後で困るのは他でもない、自分だからだ。
13:50
とりあえず午後から配達すべき荷物である14~16時、16~18時までの荷物を積み込んだ。
午前中に積んだ指定なしの荷物60個と合わせて90個ほどになった。
加えて午後は18時までに定時の集荷場所を複数訪問しなければならない。
出発。
14:20
業務端末にクレームが入る。
「在宅していたのに不在票を入れられていたとお怒り。折電希望。現在ご在宅」
またタイムロス。車を路肩に止めて上記顧客に電話する。
チャイムの無い家である上、会社からは引き戸を何度もノックする行為や
勝手に開けて声掛けする行為は禁止されていることを説明し、
外から声掛けしたことを説明するが、
「じゃあなんで伝票に記載されている番号に電話しなかった?」
と問われ、答えに困る。
たしかにもっともだ・・。
しかし僕にはその考えに至る余裕がなかったんだよ!!
ていうか、チャイムぐらいつけてくれよ!!
チャイム無が普通みたいな態度で正論言われても納得いかないんだよ!!
15:00
定時集荷1件目到着。保険外交員事務所。お姉さんの胸チラ。癒される。
引き続き同時に配達もこなす。
16:00
定時集荷3件目到着。たくさんの集荷すべき荷物が山積みになっている。
一つ一つ三辺を図り、現地で発送の入力を行う・・
そこにこの時間帯から次から次へと再配達の依頼が携帯にかかってくる。
仕事の手を止められる。
お客はこっちの都合はお構いなしで再配達時間を一方的に告げてくる。
17:30
遅くても16:30までに定時の集荷に入らなければいけなかった
今にもつぶれそうなひなびた八百屋から
定時集荷の催促の電話がかかってくる。
八百屋「今日くるんですかー?どうなんですかー?(馬鹿にした言い方)」
俺「すいません、いろいろあって遅れてて・・今向かうところで」
八百屋「んなことどーでもいいんだよ!(怒)早く来やがれ!!この野郎!!(怒)」
なぜそこまで言われなければいけないのか?????
集荷と同時に配達をこなすドライバーのことなどまったくわかっていないのだろう。
いたわる気持ちも、察する気持ちも、やさしい言葉がけも・・ない。
あるのは自分のことだけだ。
やり場のない怒りと虚しさと悲しさでいっぱいになった・・。
そこに業務端末のメールが鳴った。
「DM便配達の委託の方の荷物の誤投函発生。引き上げ願う。」
ただでさえ時間がないというのに・・・・・
鳴りやまない再配達依頼の電話とメール。
いちいち手を止められる・・・。
ストレス。
17:40
定時集荷と依頼のあった再配達と時間指定の荷物を配達しつつ、指定なしの荷物にも気を配り、
ルート上で配達できるようであれば配達をこなしていたら18時までに20分前となってしまった。
18時からは18~20時、19~21時の荷物を早く積んで出発したかったのに・・。
19時にはセンターに10トントラックが来て、ドライバーが集荷した荷物をすべてを引き上げに来る。
最悪その時間までに集荷を終わらせないと・・・
自分自身で集配ベースまで車を走らせないといけなくなる・・その距離往復30キロ。
それだけは避けたい。
18:40
18時までの時間指定の荷物をすべて配達し、定時集荷場所をすべて周り集荷、
センターに戻ってきた。この時点での労働時間、すでに9時間40分。
これから集荷してきた荷物を下ろして仕分けし、
18~20時の荷物、19~21時の荷物を持ち出し入力後積載しなければならない。
上記2時間帯の荷物の総数45個・・。
再配達依頼のあった荷物と依頼がなかったけれど不在だった荷物の総数を合わせると・・・
考えたくもない・・・・・。
じゃんじゃんかかる再配達依頼の電話と業務端末のメール。
なぜなら再配達依頼の締め切り時間は19時だからだ。
いちいち手を止められる。
19:15
急いで積み込んだがこの時間になってしまった。
18~20時時間指定の荷物の時間制限はあと45分しかない・・。
会社ルールも守りつつ配達・・てか、こんなの物理的にムリだろ・・・・。
19時過ぎたら再配達依頼の電話やメールが鳴らないのが助かる・・。
20:00
20時までの時間指定の荷物が複数残ってしまった・・
19~の時間指定の荷物の配達時間もすでに始まっている。
とにかく20時まで配達の荷物の消化を急ぐ。
遅れた配達先には一軒一軒謝罪する。
大体は「いいですよ」と言ってくれるが、
中には明らかに不満そうな客もいる。
荷物はロボットが運んでいるのではないんです。
たくさんの人間がかかわり、
ドライバーがひとつひとつ運んでいるんです。
時間を守ることは努力義務ではありますが、
様々な条件がかさなり遅れることもあります。
安全にも留意して配達もせねばなりません。
吹雪の日も土砂降りの日も、ずぶぬれになって運んでいます。
そこをお察しの上、
そんなに大切な荷物なのであれば、
日に余裕をもって荷物を用意してください。
そしてそんなドライバー、このコロナ禍で働くドライバーに温かく接してください。
お願いです。
21:00
荷物はまだ残っています。この時点で勤務時間12時間。
再配達依頼の無かった家々でも軒先に明かりが灯っている家に立ち寄り
明日に荷物を持ち越さないようにする。
明日の荷物の数がそれだけ増えるからだ。
21:20
他コースの同僚から状況を心配する電話がかかってくる。
この先輩はAさんという中堅のいい先輩。
それをしてくれるだけでも。
他の連中は自分の仕事が終わるとサッサと家路についている。
A先輩が手分けして荷物を配達してくれるとのこと。
感謝しかない。指定した場所で落ち合うことに。
21:30
指定場所に到着すると、すでにA先輩は待っていた。
20個残った荷物を10個ずつ手分けして配達することになった。
A先輩は荷物をもって夜の闇に消えていった。
うれしかった・・。
22:00
軽油がないので給油したのちにセンターにようやく帰庫。
A先輩は既に退勤していた。
22:30までに退勤を打刻するように支店長に言われる。
残った荷物を車から降ろし所定の位置に戻し、
車内の清掃後、集金してきた現金の集計。
どうしても数千円足りないことに気づく・・。
このままでは業務端末をログオフすることもできず、
一日の業務報告書を提出することも、帰宅することもできない・・
疲弊した頭で一日を最初から振り返るが、
どこでどう釣銭を間違ったのか、まったくわからない・・。
嫌な汗がでる・・。
もう自腹を切るしか手段がない・・。
自分の財布から入金機に投入し事なきを得るが、
この瞬間、心身ともにドッと疲れが襲ってきた・・。
一日の達成感はなく、残るのはただ言い表せない澱んだ感情。
自責の念。
どこでどう間違えたのか?止まらない思考。
22:30
退勤。
とりあえずは今日一日事故を起こさないで帰れたことに胸をなでおろす。
業務から解放された安心感。
しかし8時間後にはまた同じような一日が待っている・・。
それをできるだけ考えないように家路に向かう。
23時に帰宅できるとして、それから風呂、夕飯・・。自分の時間など皆無。
寝て、次の日の仕事に備える毎日。
こんなことを2年続けたある日、僕の体調に異変が起こり始めました。