入社してちょうど一年目のある日。
僕はトラックで配達中事故を起こしてしまいました。
細い裏道で僕は右折しようとしていたところ
本来駐車してはいけない場所に駐車していた車両に
オーバーハングで左後方をぶつけてしまいました。
とはいえ僕のミス。
その瞬間僕の頭にすぐよぎったのは、
自分はクビになるんじゃないだろうか
生活できなくなるんじゃないだろうかという不安、
そして事故相手にかける迷惑、
会社にかける迷惑。
仲間にかける迷惑・・。
僕は震えた声で上司に電話で報告して事故処理してもらうことになりました。
この場合ヤマトのルールではざっくり以下の通りだったように記憶している。
僕は即刻乗務停止。
僕の担当していたコースの荷物は他のコースが割り振りでしばらくの間で引き受けることとなり、
事故で空いたコースに他のセンターから応援に来ることなどない。
本部からいけ好かない事故調査担当の「背広達」がやってきて現場検証。
上から目線でありきたりな注意をされる。
事故を起こしたドライバーの名前は出ることはないが、
発生させたセンター名が即刻県内の全センターに緊急メールで知れ渡る。
センターに帰って当然車載ドラレコを隅から隅まで見られ、
重箱の隅を突かれまくる。
痛くもない腹を探られる。
事故当日の全ての業務が終了した夜、
連帯責任と言わんばかりに同僚全てをセンターに足止めして緊急の事故報告会議が開かれ、
「背広達」が中心となって僕への追及が始まる。
僕は同僚たちに顔向けができる、目を合わせられなかった。
僕は今回の件につき一筆かかされ、
同僚は翌日から明らかに増える荷物にため息をつき、
重苦しい雰囲気となる。
帰宅は11時過ぎに。
僕は翌日から仕事量を増やしてしまった同僚に申し訳なさを隠し切れず
それを横目に内勤命令。
受付業務、構内の掃除、草むしり、トイレ掃除・・
僕が再度乗務できるようになるには、
再乗務の実地乗務テストをクリアし、
「背広」のお墨付きをもらい、
その地域を管轄する本部の一番偉いさん、直属の支店長、安全担当の背広との4者面談。
一番の偉いさんの許可が下りた後です。
当然事故で起こした損害は会社と僕の負担に。
僕の負担は給料から天引きです。
薄給から3万円ほど引かれました。
とにかく、運転しなければ仕事が始まらないこの会社で
ドライバーが事故を起こした時のストレスは半端ありません。
プライベートでもそれは相当なものなのに、
それを会社で起こしてしまったとあってはさらにストレスが大きなものになります。
自責の念で自分がつぶされそうになります。
一方、同僚ドライバーはそんな僕に対して優しかったのを覚えています。
ドライバーなら些細な事故なら誰でもやってる、という理由からです。
しかし僕にはそれが慰めにはならなかった。
逆にハンドルを持つことは怖いことだという運転への恐怖に繋がった。
その感覚は正しいし、それを再認識したことは良いことなのだろうけど、
僕の恐怖はまた別のところにあった。
まず、事故を起こした時センター全員に迷惑がかかるヤマトの一蓮托生システム。
特に繁忙期に起こそうものなら同僚は表では何も言わないだろうが、
裏では言いたい放題、となっていたはず。
次に監視し、評価し、追及される。ヤマトの「恐育」システム。
個々の能力に関わらずたくさんの荷物を持ち出させ、
時間を厳守させ、交通法規を完全順守を要求され、
その上社内交通ルールも順守要求され、カメラで四六時中監視、
業務終了時には運転を採点される。
それが思わしくなければ呼び出し、面談、始末書、顛末書等の罰則の数々。
自分には社員を罰則という恐怖でルール順守させているように感じて仕方なかった。
僕はそんなヤマトを非難しているのではない。
残念ながらきっとこの会社は
そういう方法でしか人を管理するしか方法がないのだろう。
それまでフリーランスやってた自分にとって、
会社員であることの難しさ、息苦しさを改めて感じさせられた気がした。