僕が運転するトラックは古い住宅地へと入っていきました。
そこは家々が隙間なく長屋のように連なるところ。
お世辞にも裕福な人が暮らす地域ではありません。
僕はトラックを降り、その配達先住所を再度確認すると、
外壁はトタン張り、玄関引き戸は立て付けが悪く、チャイムすらない家。
初めて訪れる家です。
仕方がないので玄関を開け、声がけすることにしました。
「こんにちは!」
次の瞬間、奥から現れたのは中型犬。
特に吠えることもなく一目散に僕のそばに駆け寄ったかと思うと、
「ガ ブ リ」
と僕のすねをかじり奥へ帰っていきました。
「いてっ!!!」
あまりの突然の出来事に驚いたと同時に、
痛みと怒りがこみ上げてきました。
そこにやおら現れた肥満気味でだらしない恰好をした中年女性の家主(飼い主)。
発した言葉は、
「あんたが戸を開けるから悪いんじゃない?」
言うに事欠いてこのセリフ。
唖然・・、です。
荷物の配達を頼んだのは誰ですか?
チャイムがないのはなぜですか?
お届けするには玄関を開けるしか方法がないんじゃないですか?
立場上、会社とドライバーは客に文句を言うわけにもいきません。
当然そのまま泣き寝入りですよ。
実はドライバーが犬とトラブルになるケースはよくあります。
僕も複数回ありました。
経験上、他人に迷惑をかけても謝ることができる犬の飼い主は昨今ほとんどいませんね。
犬が病気持ってたらどうしてたんでしょうね!?
犬を飼うという責任を軽く考えてる、「にわか愛犬家」が増えたんでしょうね。
犬のしつけがなってないのは、
それを飼う人間のしつけがなっていないからなんじゃないですかね?
ドライバーは行く先々でこんな程度の客、
それも一人や二人じゃない相手に日々ストレスと戦っているのです。
これがドライバーの現実であり、個人客の現実なのです。