*…六月『見えない配達夫』…*
どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終わりには一杯の黒麦酒
鍬をたてかけ 籠を置き
男も女も大きなジョッキを傾ける
どこかに美しい街はないか
食べられる実をつけた街路樹が
どこまでも続き すみれいろした夕暮れは
若者のやさしいさざめきで満ち満ちる
どこかに美しい人と人との力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となって たちあらわれる
〔茨木のりこ〕
今年も6月がやって来た。
この詩を処感に書かずには居られない。
美しくしみじみとした情景が
この詩を読む度
心の中に広がり迫って来る。
本物の詩人が編み出した
傑作はこのように語り継がれ
世代を超えておそらく
心ある人が居る限り
何度も取り出され
思い出され
人の心を励まし、そして、打つことだろう。