卒業論文の概要紹介

2007年01月29日 | 授業&実習
 スギ材の人工乾燥は高温化、短時間かが図られている。乾燥材は生材に比較し強度、耐久性に優れ、狂いも少なく建築材に適している。               
 しかし、乾燥温度が高温になると組織の化学変化が起こることから、乾燥温度の違いにより強度変化が起こるものと考えられる。

 そこで、「JIS規格における木材の曲げ、圧縮試験方法」により強度性能試験を行った。

  I本君:「乾燥温度がスギ材の強度に及ぼす影響」

 概要

 試験は、曲げ試験(試験体:長さ400mm×幅25mm、厚さ25mm)、縦圧縮試験(75mm×25mm×25mm)、部分圧縮試験(80mm×25mm×25mm)とした。

1,曲げ試験:スパンは辺長の14倍とし、中央集中荷重をかけ、加重面は原則柾目 面とする。クロスヘッドの変位量は5mm/mとした。

2,縦圧縮試験:鋼製平板の間に挟んで加重をかけ、クロスヘッドの変位量は1   mm/mとした。

3,部分圧縮試験:試験体中央部に綱板を置き加重を加え、縮みの測定は被圧部の 全厚さについて行った。クロスヘッドの変位量は1mm/mとした。   

 乾燥条件は、以下のとおりとした。
  グループ1(以下G1) 天然乾燥 
  グループ2(以下G2) 温度80℃ 相対湿度64% 75時間
              乾湿級温度差10℃ 平衡含水率8.2% 
  グループ3(以下G3) 温度40℃ 相対湿度48% 75時間
              乾湿球温度差10℃ 平衡含水率8.2% 
  グループ4(以下4)  温度130℃ 相対湿度0% 75時間
              乾湿球温度差10℃ 平衡含水率8.2%        

 試験結果は
1,曲げ試験                                G1~G4の平均曲げ強度については、生材に比べ乾燥材の全てが上回った。含水率が低下すれば強度は増加するが、曲げ強度についてはその傾向が認められた。

  G1(生材):平均曲げ強度53.2N/㎟ 標準偏差6.0
  G2(80℃):      71.4N/㎟ 標準偏差14.0
  G3(40℃):      67.0N/㎟ 標準偏差10.6
  G4(130℃):      93.5N/㎟ 標準偏差20.4 

 曲げヤング係数については、全体としてG1~G4の間の差は曲げ強度のそれより小さいが、G4はパーセンタイル15%以下でG2と重なった。これは130℃の熱処理で材表面が劣化し、曲げヤング係数が低下したものと考えられる。

2,縦圧縮試験
 パーセンタイル40%以上では、乾燥温度の上昇に伴って縦圧縮強度も高くなった。しかし、パーセンタイル40%以下ではG3とG4で縦圧縮強度が低下する傾向が認められた。

 G3では含水率の高いものや、平均年輪幅が極端に広いものなどが影響している。G4では最小値は極端に年輪幅の広いものがあったが、それ以外のものについてはそのような影響は認められず、130℃の熱処理による材表面の劣化による影響と考えられる。

  G1(生材):平均縦圧縮強度23.34N/㎟ 標準偏差2.27
  G2(80℃):       26.89N/㎟ 標準偏差2.18
  G3(40℃):       27.40N/㎟ 標準偏差6.32
  G4(130℃):       45.44N/㎟ 標準偏差7.16

3,部分圧縮強度
 全体的に生材と乾燥材との差は認められたが、G4についてはG2に比べ部分圧縮強度が低い傾向が認められる。これは表面部分で熱劣化を生じ、強度性能が低下したものと考えられる。

 今回の試験で改めて分かったことは、含水率が低下すると強度性能は向上する。

 縦圧縮、部分圧縮試験で高温処理を行った試験体について、一部強度低下が認められた。

 縦圧縮試験において、G4では主に木口部分からの破壊が生じており、G1~G3
の試験体は中央部近くでの破壊が多くみられた。

 部分圧縮試験では乾燥処理材と生材との差は明らかであったが、乾燥処理の試験体では曲げ試験や縦圧縮試験のような明確な差は認められなかった。これは熱処理

による材面強度の低下が原因と考えられ、破壊形態の変化や強度性能の低下に繋がったものと考えられる。


   一生懸命質問に答えるI本君


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