3月に横山秀夫の「64」「陰の季節」「第三の時効」を続けて読んだあと、小説を手にしなかった。
何故だろう。
それはよくわからないのだが、なぜ北方謙三の「弔鐘はるかなり」を手にしたかといえば、情熱大陸に登場したのを見たからだ。長く売れなかった時代を振り返り、ブレイクのきっかけに初期5作品がとても大切なのだと語っていたので、その作品を読みたくなったのだ。
読みはじめて数頁で思った。ああ小説ってのはおもしろいもんだな。主人公の葛藤、迷い、悲しみや怒りが、リアルに伝わってくる。息づまるように、切々と胸に迫ってくる。
映画で人物の内面の動きを、こんなふうに描くのは難しい。
だが逆に、例えば殺戮や格闘の場面などは、文章での表現は映像には敵わない。風景や天候などの表現でも映画に軍配が上がる。
わたしは4月以降、小説を読まず映画ばかりを見ていた。それが何ヶ月かぶりにてにとった北方謙三の小説で、濃密に描かれた登場人物たちの内面が、リアルに胸に突き刺さってきて、読むのをやめられなかった。
登場人物の葛藤や悲しみに、深く感情移入する、あるいは共感するというのは、読み手のわたしにその理由あるからだろう。だからわたしは読むのをやめられなかった。続けて「眠りなき夜」を読んだ。
映画やドラマだけでなく、わたしには小説も必要なのだ。