見出し画像

本と音楽とねこと

人口減少社会という希望

広井良典,2013,人口減少社会という希望──コミュニティ経済の生成と地球倫理,朝日新聞出版.(8.14.2022)

 社会福祉における哲学の貧困を克服するうえで、広井さんの学問は多大な貢献をなしてきたように思うのだが、本書の議論には少し無理があるように感じた。
 いつになるかわからないが、いずれ出生率が人口置換水準まで回復し、たとえば総人口5千万人で「定常化」するとすれば、それまでの間、高齢者の就業率を引き上げるなどして、社会保障の破綻を防いでいけば良い。
 人口の定常化だけでなく、食料とエネルギーの地産地消、自給、医療とケアの充実をはかることができれば、「経済成長」の幻影に惑わされないで、そこそこ幸せな持続可能な暮らしが実現するかもしれないし、また、そうなるよう未来社会の設計を考えていく必要があると、あらためてそう思った。

私たちが直面しつつある「人口減少」問題は、悲観すべき事態ではなく、むしろ希望ある転換点、真に豊かで幸せを感じられる社会への格好の入り口ではないのか。明治維新以降そして第2次世界大戦後の日本人は、経済成長・拡大路線をひたすら走り続けてきた。人類史のなかで第三の定常化社会に入りつつある今こそ、人々の意識と社会のありようは大きな転換を迫られている。ローカルな地域に根ざしたコミュニティ経済と、「地球倫理」とも呼ぶべき価値原理。大佛次郎論壇賞ほか数多くの受賞歴をもつ著者が、日本が実現していくべき新たな社会像とその具体的イメージを大胆に提示する。

目次
人口減少社会という希望
第1部 人口減少社会とコミュニティ経済―ローカルへの着陸
ポスト成長時代の価値と幸福
コミュニティ経済の生成と展開
ローカル化が日本を救う
情報とコミュニティの進化
鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想
福祉都市または人間の顔をした環境都市
環境政治の時代―3大政党プラス“緑”へ
緑の福祉国家あるいはエコソーシャルな資本主義
第2部 地球倫理のために―科学・宗教・福祉またはローカル・グローバル・ユニバーサル
「自己実現」と「世界実現」
『古事記』と現代生命論―アジア/地球に開かれたアイデンティティに向けて
「成長のための科学」を超えて
「もうひとつの科学」は可能か
統合医療の意味
日本の福祉思想―喪失と再構築
地球倫理の可能性
自己形成的な自然―地球倫理と宇宙

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事