本作品は「家族の絆」を描いたものなんかではなく、労働者階級からアンダークラスに転落し、業務委託ドライバーとして働く男と家族の物語である。
主人公の妻は、(おそらくは)非正規雇用のホームヘルパーだ。子ども二人を育てながら、、必死に中流の暮らしを実現すべく働く、絵にかいたようなイギリスのアンダークラスの夫婦である。
夫婦そろっての長時間労働による「不在」が、子どものこころを蝕み、やがて家族は崩壊していく。
業務委託ドライバーである主人公は、荒れる子どものためにやむをえず休むと、配送業者から罵倒され罰金を課せられる。強盗に襲われ負傷した主人公に、配送業者は臆面もなく賠償金を請求する。ブチ切れた妻が、業者を罵倒するくだりが、本作、最大の見せ場だろう。
わたしは、「お急ぎ便」だの「あす楽」だの、宅配ドライバーの負荷を重くするサービスは、できるだけ利用しないようにしているが、それでもネット通販はよく利用するので、業務委託というおぞましい労働搾取に加担していることになる。
カネが儲かれば搾取労働で不幸のどん底に突き落とされる人々が増えようが知ったことか、という、クソ、まったくクソというほかない資本主義の強欲に立ち向かっていく力、ケン・ローチがもとめてやまないのはその力であるにちがいない。
映画『家族を想うとき』予告編
町山智浩 ケン・ローチ監督作品『家族を想うとき』を語る
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