心の手帖…風通しの良い繋がりを求めて

心を精一杯広げて、現代社会を味わう方法を探していくために、心を整理する手帖のようになれば…

クリスマス・ショート・ストーリー(後編)

2013年12月23日 05時00分00秒 | 物語
… さっそくですが、昨日のお話「クリスマス・プレゼント」の続きをどうぞ …

 人形を買うのに十分なお金がありました。いくらか、おつりが出るほどでした。
 「よかった!ぼくね、ママのためにもプレゼントを買いたかったんだ。ママは白いバラば好きだから。でも、そんなにたくさんのことを神様にお願いするのは、失礼だと思ってやめておいたの。神様は、ぼくの心の中もちゃんと分かっているんだね。神様は、ぼくに、この人形とバラを買うためにぴったりのお金を用意してくれがみたい。」
 数分後、先ほどの老婦人が戻ってきたので、わたしも自分の買い物かごを手にその場を離れました。わたしは、買い物を始めたときとはまったく違った気持ちで、買い物を終わらせました。
 帰りの電車に乗っていたとき、突然ふと、二日前の新聞記事がわたしの頭をよぎりました。その記事には、酔ったトラックの運転手が、小さな女の子とその母親を乗せた車をはねたことが書いてありました。女の子は即死、母親は病院に運ばれたが重体、とのことでした。母親は昏睡状態に陥っており、回復の見込みはまったくなく、家族は、彼女の生命維持装置を止めるか否かを、決めかねているとのことでした。
 男の子との偶然の出会いから二日後、わたしは新聞で、彼の母親が亡くなったことを知りました。わたしは何も考えずに家を出て、花屋に行き、白いバラの花束を買いました。そしてその足で、告別式が行われている場所へと向かいました。
 女性が、棺の中で、手に一本の真っ白なバラを持ち、小さな人形を抱いて横たわっていました。わたしは涙が止まりませんでした。
 それからというもの、わたしのクリスマスはまるっきり変わってしまったのでした。

 ……  …
 
 …いかがでしたでしょうか? 小さな男の子の純粋な兄妹愛がもたらした、日常を変えるドラマの一つです。最近、飲酒運転が原因の交通事故の生々しい映像を見る機会がありまして(教習所に免許を取りに通っているので……)、本当に身近に起こりえる悲劇であることを、運転スキルと共に、毎回意識付けされている感じがします。
 このような、大切な家族を失った痛い現実が、他人を感動させるほどにまで、美しい、汚れの無いシーンに変貌しうること。それが、クリスマス・シーズンの奇跡かもしれません。
 映画の中にも、クリスマスと絡めた素敵なストーリーがありますよね。次回にでも、ご紹介できたら…と思っています。


 …素敵な本のご紹介… 

クリスマスのものがたり (世界傑作絵本シリーズ―日本とスイスの絵本)
フェリクス・ホフマン,しょうの こうきち
福音館書店

紙でつくるクリスマス・オーナメント (ペーパークラフトしかけえほん)
キャロライン ヨハンソン,Hannah Ahmed,Caroline Johansson,上野 和子
大日本絵画

クリスマス・ショート・ストーリー(前編)

2013年12月22日 20時00分36秒 | 物語
 
【カトリック河原町教会(京都)の降誕祭のオブジェ】 

 今日は、『クリスマス・プレゼント』というショート・ストーリーを、クリスマス特集のブックレットから見つけ、ちょこっとしんみり、透き通った気持ちになったので、ご紹介します。
 【出典:「クリスマスの光」ドン・ボスコ社刊(2006.8.29)】


 クリスマスまであと一日という日、わたしは前もって買っておかなかったクリスマスプレゼントの買い物を済ませるために、デパートへ急ぎました。
 デパートでおしあいへしあいプレゼントを選んでいる人々を見たとき、わたしはとてつもなく惨めな気持ちになりました。それでもわたしは何とかおもちゃ売り場にたどり着き、値段を見比べながら、「こんな高いおもちゃを買ったところで、子どもたちはいつまでこれで遊ぶかしら」と、ひとりごとを言っていました。
 ふと、視線を下げると、同じおもちゃ売り場の片隅に、五歳くらいの小さな男の子が、人形を胸に押しつけて立っていました。
 男の子は、人形の髪をなでながら、悲しそうな顔をしています。
 男の子は、隣にいる老婦人の方を振り向いて、こう言いました。「ねえ、おばあちゃん、本当に、ぼくのおこずかいでじゃあ足りない?」
 おばあさんは答えました。「さっき数えてみたでしょう。残念だけど、足りないのよ。なぜ、そんな、女の子のおもちゃにこだわるの。」
 それから、おばあさんは、他の用事をしてくるから五分くらいここでじっとしていなさい、と男の子に言ってその場を離れました。男の子はまだ人形をしっかり握りしめています。
 わたしは、その子に近づき、「この人形、どうするつもりだったの?」と聞きました。
 「これはね、ぼくの妹がすごく気に入っていた人形なの。妹は、今年のクリスマスにこの人形がほしいって言ってた。サンタクロースがこの人形をくれるのを楽しみにしていたんだ。」
 そこで、わたしは「それなら心配しなくても、きっとサンタさんが届けてくれるわよ。大丈夫」と男の子に答えました。
 ところが、その子は悲しそうにこう言うのです。「ううん。今年はきっとサンタさんも妹にプレゼントを届けることはできないよ。妹が今いるところじゃ無理なんだ。だから、ぼく、この人形をママに渡して、妹のいるところにまで持っていってもらうんだ。」そう言いながら、男の子は今にも泣き出しそうでした。
 「ぼくの妹はね、今、神様と一緒にいるの。パパが、もうすぐママも神様に会いに行ってしまうって言ってた。だからね、この人形をママに渡せば、妹に届けてくれると思うんだ。」
 わたしは心臓が止まるかと思いました。
 男の子はわたしを見上げ、言いました。「ぼく、ママに、『まだ行かないで』って言ってからここに来たんだ。ぼくがデパートから戻るまで、行かないで待っていてねって。」
 そして再び男の子は、手に持った人形を悲しそうに見つめました。
 わたしはすかさず自分の財布に手をやり、いくらかのお金を取り出しました。そして男の子に言いました。「もう一度だけ、調べてみようか?本当にお金が足りないかどうか、私と一緒に数えてみない?」「うん。足りるといいなあ。」
 わたしは、彼にばれないように自分のお金をこっそり加え、数え始めました。

 …… 続きはまた明日 …