心の手帖…風通しの良い繋がりを求めて

心を精一杯広げて、現代社会を味わう方法を探していくために、心を整理する手帖のようになれば…

クリスマス・ショート・ストーリー(前編)

2013年12月22日 20時00分36秒 | 物語
 
【カトリック河原町教会(京都)の降誕祭のオブジェ】 

 今日は、『クリスマス・プレゼント』というショート・ストーリーを、クリスマス特集のブックレットから見つけ、ちょこっとしんみり、透き通った気持ちになったので、ご紹介します。
 【出典:「クリスマスの光」ドン・ボスコ社刊(2006.8.29)】


 クリスマスまであと一日という日、わたしは前もって買っておかなかったクリスマスプレゼントの買い物を済ませるために、デパートへ急ぎました。
 デパートでおしあいへしあいプレゼントを選んでいる人々を見たとき、わたしはとてつもなく惨めな気持ちになりました。それでもわたしは何とかおもちゃ売り場にたどり着き、値段を見比べながら、「こんな高いおもちゃを買ったところで、子どもたちはいつまでこれで遊ぶかしら」と、ひとりごとを言っていました。
 ふと、視線を下げると、同じおもちゃ売り場の片隅に、五歳くらいの小さな男の子が、人形を胸に押しつけて立っていました。
 男の子は、人形の髪をなでながら、悲しそうな顔をしています。
 男の子は、隣にいる老婦人の方を振り向いて、こう言いました。「ねえ、おばあちゃん、本当に、ぼくのおこずかいでじゃあ足りない?」
 おばあさんは答えました。「さっき数えてみたでしょう。残念だけど、足りないのよ。なぜ、そんな、女の子のおもちゃにこだわるの。」
 それから、おばあさんは、他の用事をしてくるから五分くらいここでじっとしていなさい、と男の子に言ってその場を離れました。男の子はまだ人形をしっかり握りしめています。
 わたしは、その子に近づき、「この人形、どうするつもりだったの?」と聞きました。
 「これはね、ぼくの妹がすごく気に入っていた人形なの。妹は、今年のクリスマスにこの人形がほしいって言ってた。サンタクロースがこの人形をくれるのを楽しみにしていたんだ。」
 そこで、わたしは「それなら心配しなくても、きっとサンタさんが届けてくれるわよ。大丈夫」と男の子に答えました。
 ところが、その子は悲しそうにこう言うのです。「ううん。今年はきっとサンタさんも妹にプレゼントを届けることはできないよ。妹が今いるところじゃ無理なんだ。だから、ぼく、この人形をママに渡して、妹のいるところにまで持っていってもらうんだ。」そう言いながら、男の子は今にも泣き出しそうでした。
 「ぼくの妹はね、今、神様と一緒にいるの。パパが、もうすぐママも神様に会いに行ってしまうって言ってた。だからね、この人形をママに渡せば、妹に届けてくれると思うんだ。」
 わたしは心臓が止まるかと思いました。
 男の子はわたしを見上げ、言いました。「ぼく、ママに、『まだ行かないで』って言ってからここに来たんだ。ぼくがデパートから戻るまで、行かないで待っていてねって。」
 そして再び男の子は、手に持った人形を悲しそうに見つめました。
 わたしはすかさず自分の財布に手をやり、いくらかのお金を取り出しました。そして男の子に言いました。「もう一度だけ、調べてみようか?本当にお金が足りないかどうか、私と一緒に数えてみない?」「うん。足りるといいなあ。」
 わたしは、彼にばれないように自分のお金をこっそり加え、数え始めました。

 …… 続きはまた明日 …

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