買い出し前の冷凍庫

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灯火の怪─その後─

2018-08-15 16:17:16 | 霊ポケ妄想(お話風)




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【後日談、というか、事の詳細】




 男の子はその後、長老の元へと呼ばれ、事の詳細を話し、また聞かされた。そして、自分の直感が正しかった、ということを思い知らされた。




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 長老は、多くの話をしてくれた。と言っても、それはあくまで、伝承を元とした推測であった。
 それでも、事の発端から、何故このようなことになってしまったのか。また、何故男の子だけが助かり、他のメンバーがあんな状態となってしまったのか。それらを納得するには、十分なものであった。
 以下、長老と男の子の会話をもとに、ことの詳細をまとめてみる。




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 悪夢の肝試しが決行されたあの夜は、丁度お盆の時期であった。それに加え、運の悪いことに、その日はとあるポケモンが、塔へと降り立つ日であった。故に、塔に住む他のポケモンたちは、警戒を強めていたのである。
 あるポケモンは群れとなって突風を巻き起こし、また霧を発生させた。あるポケモンは幻覚を見せ、塔に近付くものに本来とは異なる認識をさせた。またあるポケモンは霊力を高め、そのポケモンの到来のための供物を呼び寄せた。

 男の子が感じた強風はポケモンが作り出していたものであったのだ。加えて、塔の扉を開けた際の気温の低下。あれもまた、そのポケモンたちの技のひとつである、霧の効果であった。

 そして、本来のタワーオブヘブンは4階建てである。しかしながら、その時のことを振り替えると……


 ──三、四、五階と、順調に歩を進めていく男の子。暗闇にも慣れてきたところで、ひとつの疑問を抱き始めた──


 タワーオブヘブンに『五階』が存在している訳がない。男の子はあの日、あるハズの無い『五階』を体験していたのである。
 更に、男の子は塔への道以外の道を認識出来なくなっていた。視界のほとんどが暗闇に包まれている中、何故塔に続く道だけが、ぼんやりとでも認識出来たのか。そう、男の子たちは、知らず知らずのうちに、『彼ら』に誘われていたのである。

 そして、もうひとつ。丁度その日に塔へと来訪したあるポケモンによって、肝試しメンバーは、総じてある要素を支配されてしまった。
 それは、『感情』である。あれほどまでに大人たちの忠告を退け、肝試しを強行したのにも、そのポケモンの影響があったのである。
 感情を司り、支配し、操るその存在。一説によれば、人々に感情を授けたと伝えられるポケモン。その名は『エムリット』。ピンク色の頭部を持つ、伝説のポケモンの一角である。『ピンク色』の……。
 そう、男の子が意識を失う直前に、視界の端で捉えたあの『何か』の正体である。いわば、エムリットの『試練』に合格した男の子の前に、何を思ったのか、その姿を現したのである。



 さて、ここからは彼らの身に起こった事柄について語ろう。
 それは概ね、男の子の直感が正しかった。この時期、またエムリットが来訪するこのタイミングでの蝋燭の火は、いわば自身の魂の鏡なのだという。
 男の子はその火を前に、『守る』選択をしたために、火は消えずに済んだ。むしろ、土壇場で心の中に燃え上がるような感情が芽生えたために、蝋燭の火は突如として燃え盛ったのである。三日にわたる高熱も、その影響であった。
 だが、他のメンバーは違った。ある者は火を『見捨て』て逃げ出し、ある者は自身で火を『消して』運ぼうとした。またある者は、この異常事態に飲み込まれ、蝋燭に相対する前からその心は『冷えきって』しまった。それが、男の子と他のメンバーを別った点あった。

 蝋燭の火、すなわち彼ら自身の魂の火を消してしまった他のメンバーは、仮死の状態にあるという。そして、誰かが彼らの蝋燭に火を灯さない限り、彼らが目覚めることも、体温が戻ることも無いという。
 そのためには、この期間が終わるまでに、もう一度塔へ赴く必要がある。そうしなかった場合は…………
 男の子の返事はひとつであった。



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 と、ここまでが、現在まで伝わっている、『灯火の怪』とその『後日談』である。如何だっただろうか。
 男の子のその後の行動は、残念ながら伝わっていない。が、研究者の間では、この物語は、まだ見付かっていないもう一冊、すなわち事の『解決編』が存在する、というのが通説となっている。その場合、所謂ハッピーエンドを支持する者と、バッドエンドを支持する者とで意見が別れている。
 現在でも、研究及び調査がなされており、その進展が望まれている。





 ところで。もしも貴方が「蝋燭」を見付けてしまったら、はたして消さずにいられるだろうか。
 「感情」を支配する存在の試練に、打ち勝つことが出来るだろうか。
 現在でも、件のタワーオブヘブンに、やはり肝試しに向かう若者達の姿が後を絶たない。もしかしたら、貴方も行ったことがあるのではないだろうか。

 あるとしたら、貴方は幸運であった。何故なら、その時は「エムリット」降臨の時期から外れていた可能性が高いからである。
 もしも、貴方が「エムリット」降臨の時期に、肝試しなど決行しようものなら……

 最後に、戒めと注意喚起の意味を込め、長老の言葉を繰り返して、筆を置くことにする。



 ──夜の蝋燭は、必ず灯っていなければならない。あの搭で、蝋燭の火は絶対に消してはいけない──


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