買い出し前の冷凍庫

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小話:冷たい炎

2019-06-30 21:34:04 | 霊ポケ妄想(お話風)
 ワタシの炎は魂を焼く。
 それは生命の本質を消失させることと同義。身体は残るけれど、それは最早中身が空の只の殻。そこに生命の痕跡は、欠片も残らない。それがワタシ。ワタシの炎。

 けれどね。マスター。別にワタシは、殻が好きな訳じゃないのよ。中身が憎くて、焼き付くしているわけではないの。
 むしろその逆。中身こそ、本当にワタシの好きなもの。綺麗な魂ほど、ワタシは牽かれる。貴方達ニンゲンも、素敵な物ほど自分のものにしたいでしょう?手元に残しておきたいでしょう?それとおんなじなのよ。ワタシのこれは。

 だからね。マスター。貴方には、そんな素敵な宝石のような灯りであってほしいのよ。いつか貴方が燃え尽きて、燻りになるその日まで。それがワタシの目的。大嫌いなハズのニンゲンの側に、それでも好いてしまった貴方の側に、居続ける目的。おかしなものね。本当に。

 ええ。だから。マスター。貴方が、貴方の中身が、醜く濁ることなんて、ワタシが許さない。貴方がワタシの大嫌いなモノに堕ちることなんて、許さない。
 濁りなんて。汚泥なんて。ワタシの炎の前では、何もかも無意味。あって無いようなモノ。その程度のモノ……。そんなモノに、貴方が沈むなんて、ワタシが許さない。跡形も無く、燃やし尽くしてあげましょう。

 だから。ね、マスター。貴方は心配しなくて良いのよ。貴方は貴方のやるべきことをやるだけ。醜いニンゲン共との交わりで浮かんできた泥なんて、貴方は気にしないで良いのよ。

 ほら、力を抜いて。ワタシの炎に身を任せて。大丈夫、貴方はまだ焼かないわ。ワタシが焼くのは、不要なモノ。貴方を焼くのは、貴方の炎が朽ちる時。それまでは、無様に生きて、足掻きなさい。マスター。
 それが、貴方達を嫌う、ワタシを従える貴方の責務。貴方に使えるワタシへの対価よ。



────────



 ゆらゆら揺れる、黒い影。青白い炎をその身に纏い、全てを見透かす黄色い瞳で、彼女は私を炎で包む。
 嗚呼。なんて。残酷で、暖かい。身体の芯から暖まる、背筋の凍る冷たい炎。
 けれど、不思議なことに。私の心は澄んでいく。迷いも不安も雑念も。恐れも嘆きも後悔も。どれも儚く灰になる。
 何も解決はしないけれど。少なくとも、私の恐怖は消え去った。他の何よりも恐ろしく、そして暖かい炎に包まれて。

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