Entrance for Studies in Finance

Research on Nintendo and Game Makers

少し前には予想もしなかったことだが任天堂の凋落が顕著だ。ソフトの不振 新型ゲームの販売の伸び悩み。円高の影響。結局 任天堂の業績は2009年3月期がピーク。(絶頂期の任天堂の評価(2009年6月))。そこからまっさかさまに下落。任天堂への依存が大きいホシデン、ミツミ電機なども影響を受けている。
  国内のゲーム機販売統計を見るとピークは2007年。その後減少している。2008年は景気の悪化もあるが、その後はスマホの普及が響いている。結果として家庭用ゲーム機の時代は終わったのは衆目が一致するところ。(2013年のスマホの世界販売は10億台規模 ゲーム機は6000万台前後 勝負がすでについている。2013年の国内家庭用ゲーム市場4000億円余りに対してスマホゲーム市場は2013年前年比78%増の5468億円2014年には7000億円超え2016年には8200億円と予想される。2014年の市場予測 前年比20%増の6584億円)両社の力の逆転は2012年中に今後も加速が見込まれる。
  しかし任天堂に大きな姿勢の変化はみられない。スマホヘのゲーム提供はしないとのこと。現在の社長の岩田さんが創業家の山内家に請われて社長に就任したのは2002年。以来任天堂をけん引してきた功績は否定できない。ただここまでビニネスモデルの変換を遅らせる必要はあるのだろうか。
  2012年度(平成24年度) 売上は微減したものの 営業赤字は縮小 当期純利益も計上した。
  2009年3月期売上1兆8386億円 5552億円の営業黒字 2790億円の当期純利益
  2010年3月期売上1兆4343億円 3565億円の営業黒字 2286億円の当期純利益
  2011年3月期売上1兆143億円 1710億円の営業黒字  776億円の当期純利益
  2012年3月期売上6476億円 373億円の営業赤字   432億円の当期赤字
  2013年3月期売上6354億円 364億円の営業赤字   70億円強黒字の当期純利益。最終損益こそ黒字に転じたものの売上は前期比減少。営業損益は2期連続の赤字となった。 しかし営業損失はわずかに縮小。最終損益も久しぶりに黒字化した。
  20143月期 3期連続で営業損益350億円赤字見通し(発表20140117) 
  Wii-U(201211月発売)などゲーム機の販売不振 ソフトも振るわず
ネット対応でソニーに遅れる。ゲームソフト会社はスマホやオンライン向けゲームに資源を分散。手元資金8000億円で財務体質盤石が明るい材料。
  201449月は営業損益2億円の赤字と前年同期の232億円の赤字から改善。ただこれは前期に在庫評価損を出して採算が改善した効果と円安による営業利益押し上げ効果。(46月は連結で99億円野最終赤字 前年同期の86億円の黒字から悪化 売上高は746億円で前年同期比8%減)
  20153月期予想(2014730日)は営業損益で400億円の黒字(前期は464億円の赤字)で4期ぶりの黒字とのこと。
  20149月ニンテンドー3DSの改良版(201410月発売)がアピールされた(3DSは販売台数が激減していたのでそのテコ入れだろうか)。
  2014年年末商戦にむけてWiiU向けに人気ソフトを投入する(コーテクテクモが20148月に出した「ゼルダ無双」の国内販売も好調。9月下旬から海外販売が始まる)。2014年の商戦ではソニーのプレイステーション4(201311月)とマイクロソフトのXboxOne(201311月)の対決が話題で、任天堂は完全に競争から脱落している。ソニー、マイクロソフトともしかしゲーム専用機が不要になった先をにらんで、まずはゲーム機で顧客を囲い込む戦略(両社ともスマホとゲーム機の接続を可能にするなど両者の融合に力を注いでいる)。


任天堂 前年同期比%

 

H24/4-6

24/4-9

24/4-12

24/4-25/3

売上高

-9.7%

-6.8%

-2.4%

-1.9%

純資産

-4.2

-5.3

1.5

3.0


2009年3月期と比較すると2013年3月期(H24年度)の売上は、この間に新製品を出しているにも関わらず3分の1だ。新製品を出しても売上は結局 前年度比マイナス。このような任天堂の没落は少し前には全く予想できなかったところだ。期待されたニンテンドー3DS(2011年春)やWii U(2012年11月)の販売が想定を下回り Wiiなど既存のゲーム機も苦戦。またゲームソフトの販売も想定を下回っている。

2011年7月28日 国内では2月26日海外では3月末に発売開始したニンテンドー3DSの希望販売価格を1万円引き下げるとした(東日本大震災の影響に加え人気ソフトの不足から販売が低迷した)。(2011年8月17日にはSCEも対抗措置としてPS3(160ギガ)の希望小売価格5000円引き下げ(24,080円)を発表した。)

 

期待されているのはゲーム機事業の切り離し(ハードでのイノベーションを期待する意見もあるが)とゲームソフトメーカーへの転身
ネットでのゲーム配信では増収余地。まずゲームを楽しむ場所の多様化によって、ゲーム専用機というコンセプトそのものが古くなっている。
 スマホとスマホ向けゲームの増加で、高額のゲーム機やゲーム機専用ソフトを買い求める必要がなくなっている。専用ゲーム機、店頭での高額のソフト販売という任天堂のビジネスモデルは明らかに終焉を迎えている。
 ハード、ソフト一体型の任天堂の経営モデルには疑問が高まる一方で、スマホ向けゲームの供給者として、期待される面もある。そのためにはハード部門を切り捨てるなど事業モデル自体の思い切った変更が必要だが、任天堂の経営者自身は新たに進むべき方向をつかみえていないようだ。
 なおこのほか大手ゲームソフトメーカーとしては、スクエニ(スクウエア・エニックスス)、コナミ、バンダイナムコHDなどがよく上がる(これら大手のスマホ向けソフトの比率は2割を切る水準 今後はスマホ向けに注力か)。
 任天堂は2012年11月にWii(2006年に発売開始 体感型ゲーム機として人気を集め累計で1億台近くを販売)の後継機としてWii Uを発売している。任天堂はこれを原価以下の販売価格で赤字販売。 販売価格はベーシックセットで299ドル99セント(日本円は2万6250円)。これは原価割れの価格だった。そしてWii Uのソフトでもうけを出すことをねらったが、思ったほどの販売を出せなかった。

ブラウザー型GREEの失速
一時勢いがあった従来型携帯のゲーム事業のGREE はまず2012年に未成年者への高額課金問題で社会的に批判を受け失速。そのあともスマホ経由のアプリ型ゲームが増える中、失速を続けている。アプリ型では、課金収入の3割をOS開発側に支払う必要がある。ブラウザー型はその必要がないため、収益性が高いはずだったが、しかしそれが失速しているのはゲーム機のビジネスモデルから抜け出せない任天堂の二の舞を感じさせ興味深い。同業のDeNAも2013年(H25年)に入り失速を始めた。背景にはブラウザーゲームの縮小がある。GREEの変化は急減で急速な悪化といえる。

携帯でゲームというと廉価でゲームが楽しめる状況(2012年段階では モバゲータウンを運営するデイーエヌエDeNA、GREEを運営するグリーなど携帯ゲーム会社の好調が思い浮かぶが 厳密にいうとDeNAGREEは従来型携帯でかつSNS経由のブラウザー型ゲーム しかし2013年から2014年にかけてスマホの急激な普及を背景に、スマホ向けゲーム主力のコロプラ(201212月上場 スマホ向けソフトが3割):魔法使いと黒猫のウイズがヒット、クルーズ、ガンホー(ゲームソフト会社の中でもスマホ向けソフト比率が6割と高い):パズル&ドラゴンズ(パズドラ)がヒットなどに市場の人気は移っている
 従来型携帯電話向け交流ゲーム(ブラウザー型)での課金が減少し、かつスマホ向けゲーム(アプリ型)にヒット作のなかったGREEは2013年に入り急速に業績を悪化させ、ついにリストラに追い込まれた(GREEの売上高peakは2012年10-12月期 その後は毎期業績悪化へ 13年4-6月期は上場来初の最終赤字 GREEと同じ業態であったDeNAはスマホへの対応、有力ゲームの改良で営業利益減少食い止める)。GREEはスマホ対応(アプリ型)ゲームの開発を急いだが、ヒット作には結びつかなかった。

 グリーの縮小はその後も続いている。2014年6月期の連結決算は純利益173億円(前期比23%減) 2期連続の減益 売上高は1255億円(前期比17%減)
 こうしたゲーム業界の動きはヒット商品が継続することのむつかしさを示していて、ゲーム関連株が安定していないことを印象付ける。業績のぶれの大きなゲーム業界は上場に不適当で非上場化も選択肢との意見さえある。

GREE 前年同期比%  H23:2011  H24:2012

 

H23/7-24/6

24/7-9

24/7-12

24/7-25/3

売上高

146.6%

24.7%

7.5%

-2.5%

営業利益

165.8

-5.4

-23.4

-35.9

当期損益

163.0

-4.0

-18.3

-36.0

 

DeNA 前年同期比%  H24:2012  H25:2013

 

H24/4-6

24/4-9

24/4-12

24/4-25/3

売上高

37.4%

41.2%

44.9%

38.2%

営業利益

22.4

30.3

37.4

27.5

当期損益

21.8

43.1

53.8

47.8

スマホ(アプリ型)ゲームメーカーの時代
ゲーム機で家族が遊ぶという世界が消滅している。同じことを繰り返してもかつてのブームは再現しないのではないか。
まず日本では少子高齢化で子供の数が減っている。他方でスマホとタブレットの普及。SNSを通じたゲーム利用の一般化で、
ゲーム機は不要化している。結果としてソフトメーカーが、SNSに傾注(任天堂を始め、ゲーム機新製品に合わせて対応ソフトを
開発する余裕がない)。新たなヒット作は生まれにくい状況。
ゲームの大手開発メーカー(セガ バンナムHD コナミDE スクエニHD カプコン コーエーテクモH ガンホー など)は
ネット向け(交流サイトSNS向けやスマートフォン向け あるいは自身でゲームサイト運営など。このうちスマホ向けが伸びている)に
資源を集中して業績を回復している。これに比べて、スマホに対応できない任天堂の凋落は目立つ。

ガンホーはスマホゲーム(パズル&ドラゴンズ 略称パズドラ)の国内ダウンロード数が3000万件に達したとされる(2013年10月に1500万突破)。2014年1-6月期の営業利益は500億円前後(6月末までのダウンロード件数は2800万)。ただパズドラによる躍進はこのあたりがPeakだった模様。ゲームの上級者が増えると有料アイテムを購入する人の比率がさがることと、普及の拡大余地が減ったことによる。
代わって注目されているのが「モンスター&ストライク」をてがけるミクシィ、多数の人気ゲームを抱えるコロプラ
 スマホ向けゲーム開発のコロプラ(2014年4月にマザーズから東証一部に市場変更)。コロプラの主力はクイズゲーム「魔法使いと黒猫のウィズ」2013年3月配信開始 ダウンロード数2800万。2014年7月配信開始の「シロ猫プロジェクト」。(ゲーム関連株ハヒット作で業績が急拡大後、利益が落ち込む傾向があるが、大手に関しては安定成長への期待がある)このほか「軍勢RPG 蒼の三国志」など多くの人気ゲームを抱えて安定感がある。社長の馬場功淳さんの発言は思慮深くおもしろかった。それによると、彼は投資家が意識する利益率でも売上高営業利益率で3割という高い目標を示している。経営者は成長投資を好んで利益率を低く設定しがちだが、低すぎると投資家から成長資金を集めるうえでは障害となることを意識しているようだ。他方株主への利益還元は株価上昇が大きい間は、配当で返す必要は必ずしもないと考えている。大型M&A,人の取りすぎ、広告宣伝費の使い過ぎなど、過剰投資を戒め、少数の有能なクリエーターを中心とした組織を考えている。(日経2013年12月5日をまとめた)

  スマホのゲームメーカーは国内6000万のスマホに向けて開発している。ヒット1本出せば大きな利益が得られるが、持続的にヒット作を生み出せるかが重要だ(日本は世界最大のスマホゲーム市場)
Hiroshi FUKUMITSU©2014  original in Aug.2011
revised in November 7, 2014
Area Studies Business Models Business Strategies

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