日本証券経済研究所『図説日本の証券市場2012年版』同研究所, 2012, No.2(株式)
株主の権利 自益権と他益権
自益権 財産的利益に関する権利: 配当請求権 残余財産分配請求権 など
他益権 経営参加する権利: 総会議決権 総会招集権 閲覧請求権 株主提案権 役員解任請求権 代表訴訟提起権 など
無額面株式 もともとの株式は額面株式といって額面が表記されていたが、1950年の商法改正のときに無額面株式が導入された。その後、2001年の商法改正で無額面株式に一本化された。株式の価値というものは発行会社が保証するものではなく、株式の額面が仮に付けられても、それは株式の価値の基準として全く意味がないもの。そうした議論の末に額面株式は廃止された。
単位株と単元株 2001年の商法改正で1982年に導入された単位株制度が廃止されて単元株制度が導入された。これは売買単位を決めるときに1単位あたり純資産5万円以上とする規制であったが、売買単位を引き下げる上で却って障害になるため、単位株制度を廃止し、単元株制度を導入したもの。
なお2005年の会社法改正では、売買単位未満の株としての端株(1株未満の株式)制度を廃止し単元株制度に統一した。端株が生まれるようなケースでは、上場会社はそれを売却して現金で株主に交付することとしました。単元株に達しない株主の権利内容については、定款で自由に定められるようにした。
金庫株treasury stock 2001年の商法改正で認められたものに金庫株がある。これは会社が自社株を取得した後、償却せずに手元におくというもの。金庫株を、再度資金調達に使う、ストックオプションに使う、あるいは株式交換方式の企業買収に使うといった様々な戦略が可能になった。
自社株取得については日本の商法は自己資本充実の観点から長く制約的であった。1994年の商法会社で総会決議により、利益償却による自社株取得が初めて認められ、1997年の商法改正では定款で細かく定めた範囲での取締役会決議でも可能に緩められた。2001年に金庫株が認められたとき、配当可能利益の範囲内で原則自由に総会決議できるように大きく変更され、さらに2003年の改正で定款の授権があれば取締役会決議で自由に行なえるようになって、一挙に拡大した。
株式不発行制度 2004年の商法改正で不発行制度が導入され、最終的に2009年1月から公開会社の株式の無券面化(ペーパーレス)が実行された。
新株発行発行の形態 払込あり普通株 株主割当増資(基準日株主への株主引受権の付与 2001年額面株の廃止以降激減) 公募(不特定多数) 第三者割当(特定の第三者 合理性必要性の説明義務) 新株予約権の行使
払込あり優先株
払込なし 株式分割(91年商法改正で株主割当 無償交付などを統合) 株式交換(子会社株式との交換) 株式移転(子会社株主への割当)
発行(=募集または売出) 企業内容等開示制度
発行額 1000万以下 および 投資数50人未満 有価証券通知書 届出書 ともに不要
1000万超1億円未満 投資家数が50人以上 有価証券通知書(営業経理情報不要)提出必要
発行額1億円以上 投資家数50人以上 有価証券届出書提出必要 ......別に事業年度ごとに有価証券報告書提出必要
発行市場における、間接開示(有価証券届出書 金商法4条1項)と直接開示(有価証券目論見書 金商法15条2項)
届先 有価証券通知書 届出書 各地の財務局 EDINETでよい
有価証券報告書 四半期報告書 提出先:EDINET(改めて取引所などに提出する必要はない)
流通市場における 有価証券報告書(金商法24条1項) 内部統制報告書(24条の4の4) 四半期報告書(24条の4の7)
有価証券報告書の内容 企業の内容+財務諸表+監査報告書
四半期報告書 報告書からの変動を記載
内部統制報告書
大量保有報告書 上場株券等5%以上保有することになった者 その後は保有比率が1%以上変動するつど 提出先 EDINETでよい
公開買付開始公告 条件変更公告 提出先:EDINET
取引所 適時開示情報閲覧サービス
決算短信 四半期短信 ガバナンス報告書 など TDNet へ提出
株券等分布状況表 決算発表予定日など Target へ提出
グリーンシート 未公開株に流動性を与える場・・・限界的 1997/06創設
ジャスダック 2010/10 ヘラクレス ジャスダック ジャスダックNEOが統合してジャスダック
マザーズ 1999/11 東証内でスタート
上場会社数(社 %) 2013~16 一部 マザーズ TPMが270増加。二部 JASDAQで150減少。
外国会社に乏しいlocal market。一部に4社 二部とマザーズに各1社計6社(2017/3末)
1st 2nd Mothers JASDAQ JASDAQ Tokyo
Standard Growth Pro Market Total
2013末 1772 559 191 828 48 6 3417
2014末 1859 541 205 798 45 9 3468
2015末 1934 543 220 747 44 14 3511
2016末 2002 531 228 713 43 16 3539
構成比 56.6 15.0 6.4 20.1 1.2 0.5 100.0
com.2013 +230 -28 +37 -115 -5 +10 +122
2017/03 2015 535 237 712 42 17 3558
com.2013 +253 -24 +46 -116 -6 +11 +141
% +14.3 -4.3 +24.1 -14.0 -12.5 +183.3 +4.1
時価総額(兆円 %) 時価総額では1部が97% ほかの市場は機関投資家の視野の外
2016末 560.25 7.64 3.53 7.83 0.30 0.04 579.60
構成比 96.7 1.3 0.6 1.4 0.1 0.0 100.0
2017/03 558.61 9.11 4.23 8.42 0.31 0.04 580.72
内国株式年間売買金額(兆円 %) 売買金額ではマザーズが健闘している
2016 643.20 6.12 29.64 10.54 1.59 1.89 692.98
構成比 92.8 0.9 4.3 1.5 0.2 0.3 100.0
売買金額(兆円)の変動は激しい。直近のpeakは2015年と2007年。bottomは2012年。
1部 立合日数 年間 1日あたり
1997 245 106.43 0.4344
1998 247 96.00 0.3887
1999 245 176.04 0.7267
2000 248 242.63 0.9784
2001 246 199.84 0.8124
2002 246 190.87 0.7759
2003 245 237.91 0.9710
2004 246 323.92 1.3167
2005 245 459.14 1.8740
2006 248 644.31 2.5980
2007 245 735.33 3.0014
2008 245 568.54 2.3206
2009 243 368.68 1.5172
2010 245 354.60 1.4473
2011 245 341.59 1.3942
2012 248 306.70 1.2367
2013 245 640.19 2.6130
2014 244 576.53 2.3628
2015 244 696.51 2.8545
2016 245 643.21 2.6253
投資部門別株式保有状況(年度 % 金額ベース)
個人 証券会社 事業法人等 都銀地銀等 生損保その他 信託銀行 外国法人等
1990 20.4 1.7 30.1 15.7 17.5 9.8 4.7
1995 19.5 1.4 27.2 15.1 15.7 10.3 10.5
2000 19.4 0.7 21.8 10.1 11.6 17.4 18.8
2005 19.9 1.4 21.3 4.7 8.2 18.0 26.3
2010 20.3 1.8 21.2 4.1 7.4 18.2 26.7
2015 17.5 2.1 22.6 3.7 5.7 18.8 29.8
TOPIX基準日 1968年1月4日 100
総合利回り 利回り革命 PER PBR
将来の流通性に注目したPCFR 株価キャッシュフロー倍率 税引き利益+減価償却ー(配当金+役員賞与)
市場によるPER PBRの違い
一部 二部 マザーズ
2014末PER 18.5 16.8 111.5
2014末PBR 1.2 0.8 4.3
2015末PER 18.5 14.4 59.5
2015末PBR 1.2 0.7 4.4
2016末PER 19.6 16.6 77.2
2016末PBR 1.2 0.7 5.0
修正PBR トービンのQ 1倍を下回るとM&A活動活発になる
トービンのQ=企業価値/資本ストックの再取得価値 企業価値=債務の市場価値+株式の市場価値
1より小さい 資本ストックを売った方がよい
1より大きい 資本ストックを増やす余地あり
信用取引 一般信用取引 ネット取引の上昇とともに拡大
証券金融会社 貸借取引 金融商品取引業者の貸借取引への依存度上昇 自己勘定分も
取引所集中義務 かつては集中義務を課すことが正しいと考えられていた。
CP化 分散型でも均衡価格発見できる 匿名性の保証 マーケットインパクトコストの最小化 民間業者の取引システムと伝統的取引所の差別化は困難 PTSを証券業務として容認 規模の大きいものを取引所として規制
日銀によるETF購入 年間6兆円 モラルハザード招く 株価形成ゆがめるなどの批判
買い持ちで売却しない 株価形成がゆがめられる 2016年末 13兆円ほど(開始の発表 2010年10月28日)
2010年10月28日 TOPIX型と日経平均型 半分ずつ年4500億円
2013年4月4日 1兆円に拡大(異次元緩和)
2014年10月31日 買い入れ枠拡大 3兆円 JPX日経400を対象に追加
2015年12月18日 3.3兆円に拡大(補完的措置)
2016年7月29日 ETFの買い増し決定年間6兆円に倍増(3.3兆円から6兆円)
+オーバーシュート型コミットメント導入:物価上昇率が2%を維持できるようになるまで金融緩和政策を続ける
2016年9月21日 買入れ割合の変更 TOPIX型約7割 日経平均型約3割