Entrance for Studies in Finance

Research on Yamada Denki, volume sellers, LIXIL

ヤマダによる2012年ベスト電器買収は2007年以来5年越し

家電量販最大手のヤマダ電機(2002 コジマに代わり業界top)の業績が20期連続増収を続けたあと2010年をピークに売上高 2011年3月期をpeakに最終損益が下降を始めた。そこででてきたのが2012年7月ベスト電器買収(台湾に31店 インドネシアに14店舗 シンガポールに10店舗 マレーシアに7店など先行展開している 現地企業経由 連結子会社など)の発表。ヤマダ電機のベスト電器に対する2007年以来5年越しのラブコールが実現した形。ベストは1990年代までは業界首位 小型店舗が多く 品揃え価格競争力弱い 物流コスト割高 大型化や効率化で後れをとっていた。

 

家電量販店volume sellers

  激しい安売り競争 コスト削減で伸びてきた。規模拡大による仕入れ力(交渉力)の強化が続いてきた。規模の大きいところが生き残る傾向が出ている。規模の経済がでやすい業態とされる。

 メーカーとの力関係は1990年代後半になって変化。価格や品ぞろえで量販業界の方が注文をつけ、リベートを収益源とするようになった。しかしメーカー側も主導権の回復を狙っている。トップのヤマダ電機は国内家電販売シェア23%強(05年度)でガリバー的存在。このヤマダの都心部への進攻戦略が開始されたことで、業界の再編が進むと見られる。2007年の売上高でトップはヤマダ電機1兆4437億円。2位がエディオンで7034億円。3位がヨドバシデンキ6462億円。連結ではヤマダが17678億円。エデイオン8512億円 ヨドバシ7121億円 ビックカメラ6048億円・・・

 

2007年に一度失敗したベスト電器買収

 これに対してヤマダ(業界で唯一 全都道府県に店舗 売り上げ1兆4436億円07/03)は都市近郊で郊外幹線道路沿いに3000㎡超の大型店で急成長してきた。そして2007年には都心部への進攻を始めた。

    2007/07 池袋にLABI3号店開店(ビックカメラ本店の隣)。

    2007/12秋葉原駅前にLABIの店舗開設(旧サトームセン1号店)

 都心侵攻と重ねてヤマダ電機はベストに資本提携を迫った。

  ヤマダは業界7位のベスト電器(3689億円07/03)株を5.24%取得07/08/14

                                             6.47%まで買い増し07/09/14

                                             7.71%まで買い増し07/09/25。

こうして提携を迫った。

  ベスト(九州でシェア20% 海外にも展開 アジアに30超える直営店舗 08年7月には中東への進出を発表した。08年7月現在の41店舗を2010年までに59店舗にするとした)は2006年12月に「さくらや」を子会社化したものの業績で苦戦。ヤマダへの対抗策として ベスト側は業界5位ビックカメラとの資本業務提携を発表07/09/20 10月には第三者増資でビックを筆頭株主とした(9.33%).ベスト側はヤマダの支配を嫌って、ビックと結んだ。しかしビックが都心型であるのに、ベストは郊外型。ビックは郊外型のノウハウを持たないので、ベストに対する経営支援能力には疑問がでた。またベスト電器はエデイオンの誘いを振り切ってビックカメラと提携。さらにビックカメラはエデイオンとの関係の清算に動いた。

その後、2011年以降の落ち込みで存続の危機に陥ったベストの支援にイオンが登場したこともあるがイオンは退場。5年後の2012年7月、ベストは結局、ヤマダ電機のもとに下った(2012年7月 ベストがヤマダに対して110億円の第三者割当増資へ)。

 

3割のシェアとPB戦略

 ヤマダが規模とシェアにこだわる一つの理由はPB戦略だ。シェアについて山田昇社長は「ヤマダ独自の家電をメーカーに造ってもらうには・・3割のシェアが必要だ。・・そのためにはM&Aが必要だ・・この業界で成長できるのは3グループまでだと思う」(日経2014年1月20日)と発言している。この発言はPB(プライベートブランド)商品販売を指している。2013年7月にはその第一弾としてタブレットを発売開始(提携先はレノボジャパン)。その後小物家電に乗り出した。PBでは仕入コストが16%程度さがるとのこと。PBを家電商品の売上の1-2割にまで引き上げる方針。・・・スーパーやコンビニのPBを巡る議論と重なる。

 

参考 アイリスオーヤマの家電参入

なお家電メーカーでないものが家電の製造販売に進んだ例として、もともとは収納家具やペット用品が主力のアイリスオーヤマがある。同社は2009年に白物家電に参入。LED照明事業ももっている。背景には生産委託の手法で異業種でも参入が容易になっていることがある。ユニークなアイデアと製品化のスピードがカギになっている(2012年の家電の売上は165億円 LED照明の売上は350億円と膨らんでいる)。アイリスの場合は家電については中國遼寧省の自社工場での生産で価格も抑えている。アイリスではその後2013年2月に研究開発拠点を大阪に設け、業績悪化の電機大手から中途採用者を迎え製品開発力を高めている。

 

5社体制

ヤマダによるベストの買収により家電量販は大手5社に売上規模で6000億円を超える大手5社に集約された(2012年7月)。なおそれに先立ってビックがコジマを完全子会社化している(2012年5月)

1.ヤマダ(+ベスト電器)

2.ビックカメラ(+コジマ)

3.エデイオン

4.ケーズHD

5.ヨドバシ

 

背景にある問題は家電エコポイント(11年3月)と地上デジタル放送移行(11年7月)に伴う特需(2010年度 家電販売市場は9兆円超の拡大 2011年8兆5000億円 2012年には8兆円割れ 薄型テレビが6割減 スマホ タブレットは増加)が終わったあとの市場の急激な縮小(テレビ販売の急減)である。ヤマダ自身もかつては大差があった在庫回転日数が低下・・販売力を落としている(2011年3月期に大手4社平均で47日のときに34日 ところが2013年3月期には79日に対して74日)

2015年3月期見通し

2014年10月27日、ヤマダ電機は2015年3月期の業績見通しを発表、連結純利益で5%減の177億円。地方都市中心に消費税増税後の販売不振が響いている。売上高は11%減の1兆6920億円。営業利益は7%減の320億円。コスト削減を進めたが、売上高の減少の影響を補いきれなかった。

家電商品の高機能化による単価の上昇。とくに2013年後半から家電メーカーによる生産量最適化の取り組み強化により在庫が抑制され値崩れがおきにくくなったこと(従来は在庫がネットに流れ値崩れ)。しかし3月に販売したものが4月以降の受け渡しのため4-6月期の売上を膨らましている側面がある(これは配送のずれ込みのため。消費税の課税は商品の受け渡しのあった日を課税ノタイミングとするため4月以降の配送については消費税の負担が家電量販店にはかかった。業界大手4社で1000億円 30億円の負担が発生した勘定だ)ので、12015年3月期の実態は今少し悪いとみるべきかもしれない。

メーカーの業績が悪化し、シェアのために多額の販売促進費出を出す営業をしなくなったこと、消費者が欲しいと思う商品が出てきたこと:価値組商品・・油を使わないフライ機、フトンのダニとりクリーナーなどが売り場に出てきた効果を指摘する声もある。

ネット戦略

 ネット通販との競合も大きな問題(ネット通販の半分以上は家電量販との指摘がある)。(ヤマダは2013年1月からネット通販価格と対抗する戦略にでた。論理的に考えれば、確かに大量仕入れでコストが下げられるとしても、販売コストが安いネット専業とは商売にならないはず。この安値作戦は採算を悪化させた。2013年9月から価格対抗の対象からネット専業の一部を除外 4-9月赤字転落 2014年3月期業績悪化。

 ヤマダは2014年4月からは米ペイパルと組んで顔パス決済を始めるとした。これは事前登録などがやや面倒に見える)。ショールーミング:店頭で品定めをして購入はネットで済ませる傾向が知られている。店頭のある業者はどう対応するべきか。米国では家電量販第二位(1位はベストバイ)のラジオジャック(全米で4200店強)の経営不振が伝えられたが、背景にはアマゾンなどネットとの競合があるとされる。なおネットとの競合については実店舗とオンラインサービスとの融合(=オムニチャンネル)が有力な戦略とされる。たとえば中国家電大手の国美電器は、ネットサイト国美在線との融合で効果を出しているという。家電量販のヨドバシはネットで家電製品以外 園芸用品 ペットボトル コメ等に加えて2014年4月から衣料品やスポーツ用品も扱い2014年内に取扱い品目を500万にしてアマゾンなど大手と対抗する戦略。配達料金無料で当日配送サービスを2014年4月9日から静岡を除く全国で展開とのこと。

買収により住宅事業に参入

なおヤマダは次の収益源として住宅を手掛けている(2011年10月 中堅住宅メーカー エスバイエルを63億円で買収 2012年には住宅設備機器のハウステックHDを100億円程度で買収 2012年3月太陽光発電システム発売 12年度スマートハウス販売に参入))、住宅を第二の事業の柱とするとして大小の宅地開発に取り組みさらに住宅リフォーム事業の強化も打ち出した。また2014年から北関東で低価格住宅(1000万円半ばの価格 大手の半分の3.3平方あたり20万円台 家庭用エネルギー管理システムHEMSを標準装備させたスマートハウス)の販売に乗り出している。正直にいえば、ヤマダのやっていることは、思いつきをすぐ事業化しているようにみえる。

参照 LIXIL(リクシル)グループ

もっとも住宅設備のLIXILグループは家電量販大手のエデイオンに8%の出資(第三者割当増資50億円引き受け)を表明した(2013年8月26日)。つまりヤマダが始めた家電量販と住宅との結びつきは、案外正解なのかもしれない。しかし、市場はLIXILの決断に冷たく反応した。LIXILの投資を無駄な投資とみて株価がさがったのだ。実はLIXILは先行投資が多い。2010年に販路拡大だといってレオパレス21に出資。2013年8月には350億円を投資して米アメリカンスタンダード社(ASB 米衛生陶器最大手)を買収。そして今回はエデイオンに50億である。エデイオンでは住宅リフォーム事業(太陽光発電システム含む)を強化するということだ。

消費税前の駆け込み需要もあり住宅建材設備機器大手のLIXILグループ(名称にまだなじみがないが2011年にトステムやINAXなど住宅設備大手5社統合して発足 2011年8月川島織物セルコンを完全子会社化)の業績は良い。2014年3月期の連結経常利益は38%増の730億円程度(14年4月)。営業利益は691億円。売上げは11%増の1兆6287億円。このような好調な業績がエデイオンへの投資の背景。この会社は海外事業も活発。傘下にイタリアビル建材大手のペルマスティリーザ。2013年8月530億円で買収が米衛生陶器最大手アメリカンスタンダード(完全子会社化 2014年から温水洗浄便座を本格展開)。2014年1月に持分法適用はドイツの高級水栓金具大手グローエ(日本政策投資銀行とともに買収)。一連の買収に5000億円を投資。2020年3月期までに海外売上高1兆円を目標にしている(13年3月現在では米国でのサッシで2000億円規模)。3年内に売上高営業利益率8%に達しない事業からは撤退とも。社長は11年8月就任のGE出身の藤森義明氏でLIXILのグローバル企業への転身に熱心だ。海外進出の背景は国内新築住宅市場の先細りにある。この点で先行していたのはTOTO(北米市場で3位 衛生陶器の生産量で4位 LIXILは8位)

 Panasonicが住宅とクルマの設備に向かうという話もこれとつながるのかも。

 

中国事業の縮小

ヤマダについては2013年の中国店の閉鎖も注目される。同社は2010年12月に瀋陽に進出して中国市場に参入した(2万4000平方メートルの大型店舗)が。2011年6月には天津店を開店(1万5000平方メートル)。2012年3月に南京店を開いたころから日本製品不買運動の影響を受け、結局2013年5月末に南京店を閉鎖。2013年6月末には天津店を閉鎖した。中国で残るは瀋陽店とインターネット事業だとされる。2014年3月期決算には、この両店舗閉鎖による損失も影響している。

立地は駅前か郊外か

ところで家電量販では、ただここにきて店舗の立地が経営に与える影響が大きくなっている。ヤマダやエデイオンは郊外の大型店で伸びてきたが、異なる戦略をとる家電量販にヨドバシやビックカメラがある。両社とも駅前立地:営業効率を追及している。ヨドバシの藤沢昭和社長は「ネット社会になってもターミナル駅周辺店はやっていける。ネットで注文した商品を学校や職場からの帰宅時に立ち寄って持ち帰る利用者は多い」(日経2014年1月20日)としている。 ビッグカメラは2012年5月 コジマの子会社化を発表 その後コジマ傘下の郊外の不採算店の閉鎖を進めてきたとされる。

 ヨドバシは商業施設運営にも乗り出している。量を追わない経営で出店用地は自前で取得が多く。償却賃料負担軽くし財務は健全で自己資本比率高いとされる。またビッグとヨドバシは税込価格に対して還元率10%というポイント制の集客でも特徴がある。比較するとエデイオンは税別価格でわずかに1%。ポイント制の負担は販売一般管理費の押し上げにつながる。顧客のリピート化を重視した戦略は理解しやすい。

外国人観光客への免税対応

また外国人観光客向け免税対応がある。都心の駅前に店舗を構えるビッグが全店で対応済だというのは評価できる(2014年10月からは来店外国人客で無料で公衆無線LANを利用できるサービスを開始したとのこと 来店客に2週間利用できるIDを交付するもの)。ビッグは高額家電(大型テレビ 高機能白物家電 4Kやハイレゾなど)の販売でも先行する。ビック傘下のコジマも全国150店のうち2割程度の店舗で消費税分8%を差し引く対応を急いでいる。郊外店の比率の高いヤマダは池袋の旗艦店に免税コーナーを開設したとのことでビックやヨドハシとの温度差が大きい。(なお家電量販ではないがイオンは2015年末まで総合スーパーの半分にあたる300店で免税を受け付ける。イトーヨーカ堂では全店の8割にあたる153店で免税受付を開始するとのこと:2014年10月)秋葉原のヨドバシはすでに来店客の1割が外国人客とされるが、ヨドバシでは2020年をめどに新宿西口に4万平方メートル(再開発2棟 現在は西口に10ケ所以上で2万平方メートル 年間売上は1000億円弱)の国内最大級の家電量販店を開業する構想を打ち出した(2014年8月)。総事業費500億円。ここでも狙いは外国人富裕層の大口購入にありそうだ。新宿西口の家電の2500億円とされ日本全体の5%を占める。

 なおビッグはコジマとのシステム統合2012年6月による経費削減・共同仕入れによる価格交渉力改善 都市部の外国人観光客増 高価格商品の販売のよる採算の改善 過度の値引きをしないことでの利益率改善(背景にはメーカーが在庫を抱えないように生産量調整) などの要因で業績を改善 不採算店の閉鎖の除却損を十分補えることから2014年8月期営業率は前期比5割増の200億円前後とした(2014年8月)。この数値は消費税引き上げによる駆け込みも含んではいるが、増税後の販売回復設けたもので、同社の戦略の成功を示している。

 ケーズHは新規出店を加速させて2019年3月期までに直営で600店規模を目指すことを2014年11月に発表している。現状と比べて(2014年11月比)240店の増加。売上高1兆円(14年3月期比43%増)を目指すとのこと。しかし出店の場所とりも激しいので実現を危ぶむ意見もある(家電量販店舗数201312 ヤマダ電機-ベスト電器989;エデイオン-サンキュー433;ケーズーデンコードーーデンドー409;ビックカメラーコジマ、ソフマップ239;上新電機 217) 。

 

Written by Hiroshi FUKUMITSU©2014 

Original Edition was issued in Nov.11, 2008. Revised Edition in October 15, 2014

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Management」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事