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東証のシステム障害(2012年2月2日)と東証大証統合論議

再び大規模深刻なシステム障害起こす
 2012年2月2日 東証で再び大規模なシステム障害が発生した。その結果、2月2日午前中、221銘柄が取引できなくなった。
 今回、株価情報システムのサーバー1台が故障(1:27)。予備の2台が自動的に引き継いだと判断した(2:30)が、実際には配信がおこなわれていないことに気づき(7:40)、手作業による切り替え作業を開始(8:45)、241銘柄(普通株222銘柄 上場投信12銘柄 このほか上場不動産投信2銘柄 新約予約権付き社債5銘柄も停止)の取引停止を発表(8:50)。その後、予備機への切り替えのめどがつき(10:00ころ)11:15には午後(0:30)からの取引開始が発表された。
 2010年1月に東証がアローヘッドに移行してからの初めての本格的なシステム障害(2010年1月コロケーションサービスを合わせて開始 2010年の1日当たり注文件数823万件は2009年比23%増 ⇒証券取引所の収益には貢献 2011年1月売買代金ベースでコロケーション経由は3割にまで成長 2011年2月28日TOPIXを約10ミリ秒ごとに算出するサービス開始 コロケーション経由 2010年月11.7% 2011年3月36.5% 2011年4月34.1%)。アローヘッドは高速株式売買への海外機関投資家のニーズにこたえる(ヘッジファンドやプロップファームによる高速度取引HFT取引呼び込みを狙う)ため、2006年12月に委託先に富士通を選定して開発されたもの。開発運営費は約250億円。導入当初注文処理速度を2000ミリ秒から3000ミリ秒を50ミリ秒に400-600倍に速めたといういいかたが聞かれた。しかし2011年2月に稼働したロンドン証券取引所の応答速度は0.125ミリ秒。2011年8月に稼働したシンガポール証券取引所のそれは0.074ミリ秒。こうした国際的な競争の中でのシステムダウンは、致命的な結果になりかねない。

人為的ミスが重なった可能性
 今回はシステムダウンのほか、予備機に自動的に切り替わったと誤って判断。かつ配信が行われていないことに気がつくまで長い時間が経過している。午前7時40分に異常に気がついたのは証券会社からの問い合わせによる。もっと早く気がつくことは無理だったのか。また情報系の責任者とはその時点で連絡がとれなかったこと、この責任者の出社時刻が驚いたことに午前8時というのも驚いた点だ。1時間前に異常が気がついても間に合わないだろう。システムダウンだけではなく、システムを監視している人間の判断ミスが、午前中の売買停止という事態を招いた可能性が高いのではないか。これは必要な時期に確実に売買できるという信頼性が損なわれたということで重大な事故なのではないか。

統合論議への影響 統合メリットとしてのシステム障害対策
 今一つ注目されるのは、現在、東証と大証の統合が議論されていることとの関係である。統合がこうしたシステム障害時の対策にもなることが期待される。統合のメリットとしてシステムの一本化があるが、今回のような事態のときに、統合により大証のシステム(221銘柄のうち55銘柄を処理)を失わせるのはリスク管理としては問題があるのかもしれない。今回の事故をみると東証と大証が経営統合したとき、大証の株式売買システムは、残した方がいいのかもしれない。東証のシステムがダウンした場合、すみやかに大証に取引を移行させるような仕掛けをこの機会に考えられればそれこそ統合のメリットの一つになるだろう。

システム障害対策を先行 統合は延期を
 東証大証の統合については、2012年夏までにシステム統合の時期を明らかにするとされている。しかし今回のシステム障害の重大性からすれば、統合の議論を延期してでも、東証はまずシステム障害対策を急ぐべきではないだろうか。

株価指数の算出方法見直しを
 なお気になる点はほかにもある。一つは今回のように一つの取引所が一部銘柄が取引停止中の株価指数の算出である。これは取引停止銘柄について前日の終値を使って算出を続けたということである。確かに東証での売買は停止されているので東証株価指数の理屈としてそれでいいようにも思われるが、大証などでこれらの銘柄が取引されていたことからすると疑問がなくはない。

参照 原因不明の危うさ 東証がまたも大失態 東洋経済オンライン 2012-02-02
   東証がはまった冗長構成に潜むリスク ITプロ 2012-02-03

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