Entrance for Studies in Finance

2010年のユーロ相場の変動をめぐって

2010年11月12日 英仏独など欧州主要5ケ国が共同声明 2013年半ばまでは金融支援を受ける国の国債保有者が負担を被らないことを強調したため、市場を覆っていた不安はやや後退した。国際通貨としてドルに次いで重要な位置にあるユーロは、2010年に入り相場は南欧諸国の財政問題から次第に低下している(ユーロ安)。
2007年のユーロ高は、2008年のリーマンショック後、一転して歴史的なユーロ安相場に陥っている(一部に逆張り投資がみられる)。2009年11月のギリシャ危機をこの傾向が顕著になった。ユーロ安により、ユーロ圏の輸出が伸びている面はあるが、ユーロ経済の先行きには不安も。(日本の投資マネーは急速ニユーロ離れしている 2010年前半)
 日本企業については、ユーロの下落が急であったためユーロ売りの為替予約がたまってしまう(差損を考えると実行できない)。これが売り圧力になる面がある。他方、ユーロ安はユーロ圏企業にとっては業績好転の追い風になっている。

ユーロ圏全体
 1999年のユーロ導入後 欧州の有力銀行は南欧や東欧への融資・債券投資を拡大した。
南欧や東欧では国の借金が大幅に増えた。
 2009年11月5日 欧州中央銀行定例理事会 資金の貸付期間の短縮を検討(出口戦略模索) ユーロ16ケ国への適用金利年1.0%を据え置き
 2010年3月10日 メルケルドイツ首相とフィヨンフランス首相が欧州通貨基金EMF創設で合意
        (欧州中央銀行やドイツ連邦銀行などは財政再建、インフレ抑制を重視する立場から反対している) 
2010年3月15日 ユーロ圏財務相会議 ギリシャ支援の方向打ち出す
 2010年3月19日 欧州委員会が銀行清算基金(共同設立の銀行破たん処理機関)の創設を検討していることが明らかになった
 2010年5月7日 ユーロ圏16ケ国の緊急首脳会議で緊急支援の基金創設などで合意 ギリシャに800億ユーロの拠出 財政赤字の削減 金融規制・監督の強化など
 2010年5月9日  IMF ギリシャに対する300億ユーロの金融支援決定 ユーロ圏の合意と合わせ1100億ユーロ  
 2010年5月10日 EU 緊急融資制度創設で合意 IMF(最大2500億ユーロ)と合わせて最大7500億ユーロ
 2010年5月10日 ECB 国債の買取措置決める 市場が沈静化して市場機能回復するまで 債券市場の安定のため市場介入 従来は国債担保融資を行っていた。  
 2010年5月   スイス国立銀行(中央銀行)は大量のユーロ買いでユーロを買い支えた(スイスフラン高防止が狙い 外貨準備高4月末1270億ドル→5月末2000億ドル)
 2010年6月   フランスのサルコジ大統領はEU加盟27ケ国のうちユーロ導入16ケ国だけが参加する首脳会議の定例化等を主張→ドイツなどの反対で実現しなかったもののEUに分断の危機
 2010年6月7日 1ユーロ1.18ドルの安値 4年ぶりの低水準
 2010年6月9日 スイスフラン対ユーロでユーロ導入後の最高値 
2010年6月17日 スイス国立銀行総裁が記者会見で為替介入続行を表明(輸出力を維持する デフレを防止する)
 2010年6月21日 6月末を控え また欧州不安の後退からユーロを買い戻す動き 1ユーロ1.24ドル
 2010年6月26日 トロントでのG20で欧州連合による7500億ユーロの緊急融資制度(欧州金融安定化基金)(うちIMFが最大2500億ユーロを負担)について、首脳間の協調が確認される(新興国の一部に慎重論)(3年間の時限なので恒久化が必要 それをもってEMF設立ともいえる) 
 2010年6月28日 1ユーロ110円程度
 2010年6月29日 1ユーロ一時 107円台(世界経済の不透明感)
 2010年7月7日  1ユーロ109円台
 2010年7月8日  欧州中央銀行ECB定例理事会 政策金利年1.0%据え置きを決定
南欧諸国(スペイン ギリシャ ポルトガル)やアイルランドの銀行が銀行間市場で資金を調達しにくい状態
 2010年7月中旬 一時 1ユーロ1.30ドル(緊縮財政が経済成長をダウンさせ1ユーロ1ドルという声もある)
 2010年7月22日 1ユーロ110円台(前週に一時113円台)
 2010年7月23日 欧州銀行監督委員会CEBS 欧州の銀行を対象にしたストレステストの結果公表(域内91行)
         銀行間金利上昇 スペイン ギリシャなど一部の銀行は欧州中央銀行の資金供給に依存(欧州中央銀行が無制限に資金を貸し出して支えている)
 2010年7月28日 一時1ユーロ114円台
 2010年8月13日 スイス国立銀行が2010年1-6月の為替介入で143億スイスフラン、1兆1700億円の損失発生を報告。
 2010年8月27日 ECBトリシェ総裁 金融引き締めに慎重姿勢(危機対策の資金供給と金利引き上げは連動しない)
 2010年9月2日 ECB定例理事会 政策金利を年1.0%で据え置く 2011年1月まで供給額に上限を設けずに短期資金を潤沢に金融市場に放出する措置の継続を決定 1ユーロ 1.3ドル近辺まで上昇(ユーロ安による成長押し上げ効果は限定的とも)
 2010年9月7日 1ユーロ107円近辺 
南欧諸国の財政赤字 財政プレミアム ソブリンリスク(政府債務の信認危機) PIGS(ポルトガル アイルランド イタリア ギリシャ スペイン)イタリアは国債は多いものの日本同様に国内投資家が多くの国債を保有している(また利払い負担が少ない)。ギリシャは国債を海外投資家が保有していることが問題を複雑にした(国外保有が高いほうが財政規律が働くという考え方もある)。
 STUPIDとも。スペイン、ポルトガル、イタリア、トルコ、英国、ドバイ首長国。
欧州には生産性が高く経常収支黒字のドイツと、慢性赤字体質の南欧という南北問題、構造問題がある。財政規律の回復、労働生産性の改善による域内不均衡の解消。

EU 構造改革基金 ギリシャを支援中
  金融安定基金
2010年9月27日 EU財務相会議 財政規律(GDP比3%以内)違反で厳罰主義(自動的に制裁発動)で基本合意→10月下旬の首脳会議での合意目指す
2010年9月29日 欧州委員会は財務規律違反ヲ頻繁に繰り返す国からGDP比0.2%の預託金を有利子の預託金として徴収 対GDP比60%超の国にも制裁を科すことができるようにして、3年間で5%以上の低下を求めるなど 経済ガバナンスを強化する法案をまとめた。→このような制裁強化論はEUにふさわしくないという議論もある。
2010年10月29日 EU首脳会議で欧州版IMFの創設が発表される
        欧州版IMF創設
        財政協定(安定成長協定)違反国への制裁強化
        経常収支等の域内不均衡是正策(制裁)
        加盟国の中期財政計画の事前評価制度導入  
2010年11月16日 EUの来年度予算案 加盟国政府と欧州議会の協議が決裂 暫定予算執行の見込み
2011年1月 銀行 証券 保険など業態別規制スタート

アイルランド 2010年10月6日 フィッチがアイルランド政府国債をAAマイナスからAプラスに格下げ。銀行への公的支援策が9月末に発表され、財政の悪化が懸念された。2010年の財政赤字はGDPの32%(約20%?).2014年までに3%に引き下げる再建計画を2010年11月内に発表予定。2011年度予算が期限の12月7日までに議会を通過するか。
    2010年10月26日 財政赤字を国内総生産比3%に引き下げるには150億ユーロ 1兆7000億円の歳出削減必要とする
                 歳出削減(従来見通しの2倍)で景気悪化懸念       
         2010年10月末 アイルランド国債利回り7%超え
         2010年11月4日   歳出を40億ユーロ削減した11年予算骨格発表
         2010年11月4日 欧州中央銀行理事会 ユーロ圏16ケ国に適用する政策金利を1%で据え置き決定         
         2010年11月上旬 7%台後半
         2010年11月10日 欧州の証券決済機関LCHクリアネットがアイルランド国債取引の証拠金を15%引き上げた
         2010年11月11日 9.2%まで急騰(前日比0.3%前後上昇)→9%続けば市場調達はできず、EU IMFに駆け込むはずとの観測広がる(アイルランド政府は2011年半ばまでの資金は手当て済みとの立場) 
         2010年11月12日 声明受け8.5%に低下 -0.7%
         2010年11月15日 8.1%前後に低下 
         2010年11月16日深夜 欧州ユーロ圏16ケ国財務相会議がアイルランド支援策の検討入りで合意(EUとIMFによる総額7500億ユーロの緊急融資制度を活用する是非などが議論されている) 欧州金融安定基金EFSF(ギリシャ危機後導入 4400億ユーロ規模 ユーロ圏全体の最後の貸し手)に融資支援を求めるかどうか アイルランド政府は支援要請、金融システムの強化策(不良債権を抱えた銀行部門の抜本的改革)を迫られている→銀行の取り付けに備えて、保護対象預金をほかの銀行に移すこと 負債処理を進める清算機構を設立すること      
ギリシャ  
         2009年11月 ギリシャ政府が財政赤字幅之大幅な拡大を発表
         2009年12月 EU首脳会議でギリシャの財政悪化が議題に
         2010年3月 ギリシャが財政再建策を公表    
2010年5月2日 EU IMF 3年で1100億ユーロ 12兆5000億円の協調融資で合意 経済規模でEUの2%のギリシャがなぜ全体に影響するのか
(2012年まで市場での資金調達、国債発行は回避できるがギリシャ政府は2011年にも国債発行再開を希望している)→逆に3年後に時限爆弾がやってくる 発行済国債の償還 新規財政赤字 EUとIMFに対する返済 総額700-800億ユーロが必要とされる 市場で借り換えできなければ債務リストラ必要→金融機関に損失発生
         2010年5月7日 ユーロ圏16ケ国の緊急首脳会議で緊急支援の基金創設などで合意 ギリシャに800億ユーロの拠出 財政赤字の削減 金融規制・監督の強化など
         2010年5月9日  IMF ギリシャに対する300億ユーロの金融支援決定 ユーロ圏の合意と合わせ1100億ユーロ  
2010年5月   暴動が発生
         2010年5月18日 ギリシャ政府(パパンドレウ政権) EU IMF 200億ユーロ融資で合意
         2010年9月   EUとIMFがギリシャの経済プログラム進展を評価 90億ユーロ追加融資供与
         2010年10月7日 2011緊縮予算案(公共事業3.3%削減 軍事費大幅削減 税制改革による税収増 財政赤字の対GDP比率を7%に引き下げる)への大規模スト実施
         2010年10月中旬 国債利回り9%未満 
         2010年11月上旬 10年物国債利回り11%前半
         2010年11月7日 地方選挙(政局不安定になる可能性)
         2010年11月11日 11.7%まで急騰
         2010年11月12日 11.5%に低下 -0.2%
         2010年11月15日 欧州連合統計局が2009年のギリシャの財政赤字の数値を対GDP比15.4%(前回公表値13.8%)に修正
                 債務残高の対GDP比率は126.8%(115.1%)に修正         
                 2010年の財政赤字(計画)は9.4%(8.1%)に修正 

ポルトガル 2010年10月16日 2011予算案(公務員給与5%カット 付加価値税税率引き上げ 銀行税導入 税制優遇措置の廃止 財政赤字の対GDP比率を7.3%から4.6%に引き下げる 2013年までに国防費を4割削減する) 国債利回り6%台半ば(過去最高) 
         2010年11月3日 2011年予算が成立(野党が協力)財政赤字2010年対GDP比7.3% 2011年に4.6%に圧縮ヲ目標
2010年11月11日 7.3%にまで急騰
         2010年11月12日 7.0%に低下 -0.3%         

ドイツ
対比 安全資産とされるドイツ国債    利回り10月末2.5%前後
                    11月上旬 2.4%前後
 域内経済をドイツ経済(ユーロ安をいかした自動車輸出が好調 中国・インドなど新興国へのドイツ製高級車輸出 BMW ポルシェ(ポルシェは2008年にVWに対する持ち株比率を上げて子会社化を狙う。しかし巨額の買収資金債務が経営を圧迫。2009年には一転してVWがポルシェを事実上統合することになった。ポルシェによるVW買収の失敗。2011にVWと経営統合) アウデイ(VW) そのほか小型車でVW ダイムラー 商用車では最大手ダイムラーもブラジル等に伸びる)がけん引する構図 周辺国はドイツへの輸出で潤う 2011年には輸出の鈍化が予想される
         ユーロ圏16ケ国 2010年実質経済成長率予測(2010年9月13日欧州委員会)1.7%
         ユーロ圏の失業率は10%で高止まり 手厚い社会保障制度で個人消費が失速しにくい
         ユーロ圏域内シェアの高いドイツとフランスは輸出依存体質
         GDPシェア ドイツ 27% フランス21% ちなみにギリシャはEUの2% 債務の3%
輸出のGDP比率 ドイツは約40% フランスは約25% 日本は2割弱
         →ドイツの輸出依存体質には米英から批判 内需拡大による安定した経済成長目指すべきとの。
          1990年の東西ドイツ統一直後の経済ブームの再来 失業者低水準→財政再建の貢献
          経済規模に占める政府支出の割合は5割前後 日本の4割前後より高いが財政規律回復を目指す
          現在の赤字は2010年でGDP比率5%の見込み 先進国では優等生
          東欧 中欧が生産コストの安さから活況(ドイツの生産拠点は旧東独 から東欧 アジア アフリカに移りつつある)         GDP実質成長率 
ドイツ 3.4%(11年は1.8%見込む)
フランス 1.6%
イタリア 1.1%
スペイン -0.3%
EU27ケ国 1.8%
英国   1.7%
ポーランド3.4%

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