Entrance for Studies in Finance

仕組み債structured bonds

仕組み債structured bonds
投資する側はデフォルトリスク以外にも懸念するリスクがあります。これらのリスクを軽減する仕組みを組み込んで、リスクを投資家が受容しやすい形に変形した債券です。
金融の証券化securitisationでも仕組み性は見られます。もとの債権が集合され、リスクの違いで階層化されたりといったところには、リスクを組みなおしている点が見られます。そうした意味で証券化も仕組み金融stuructured financeの一つだといえます。ただそこではキャッシュフローの再編成という側面が強くでています。しかし仕組み債といったときには、ベースの債券に、いわゆるデリバテブを組み込むことが強くでています。仕組み金融でまとめることは可能ですが、証券化と仕組み債では、焦点を当てる問題に違いがあるようです。

2004年12月の銀行の証券仲介業解禁で銀行の姿勢も積極化
        顧客の要望に応じてオーダーメードで仕組み債を組成 
        運用難の地銀・企業・法人への売り込みを銀行・証券は図っているとされます

リスクの問題は、損失の軽減という問題と、儲けられる機会リスクの喪失の回避の問題とがあります。
リスクで問題になるのは、まずは損失の軽減です。たとえば
為替変動 → 通常の外貨建て債は円高が進行すると利回り・償還とも円での受け取りは目減りする 
例 そこで
  dual currency bondsデュアルカレンシー債(払い込み金利は円 償還は外貨)
reverse dual currency bonds逆デュアル債(払い込みと償還が円 金利は外貨)
    発行時の為替相場を使うのが支払い額が確定するという意味で理屈としてはあっている。支払い時点の相場を使うこともあり。

他方、株価変動や金利変動では収益機会の喪失回避がむしろ動機になっています
例 株価の上昇期待のもとで機会を失わないために
  転換社債=普通社債+コールオプション
   転換社債ではベースの普通社債性(ただし低利)が安全弁になる    
  他社株転換社債:株価が一定以上であれば割り増し金利のまま償還
  日経平均連動債:同上
          株価が一度でも一定以下に下がると金利が低下 かつ 値下がりした株式で償還(あるいは償還額が時価変動)
          投資家はプットオプションを売っている立場になります そのプレミアム代分利回りが上がります。
        オプションoptionsとは: 売買権(原資産)
           コールオプション(買う権利 選択権) 
           プットオプション(売る権利 選択権)

  他社株転換社債:株価が一定以上であれば割り増し金利のまま償還
          株価が一定以下に下がると金利が低下
          株価が一定以下に下がると株式で償還
          投資家はプットオプションを売っている立場 
  リスク限定型投信 投資家はプットオプションを売る立場
 他社株転換社債やリスク限定型投信が、トリガー価格を境に投資家にとっての商品性が逆転する点は、投資家保護の観点から問題になっています。

例 金利上昇局面 固定金利債は相場が下落 収益が固定
  そこで  → 変動金利債floating rate bonds or floating rate notes, floater, FRNs, FRBsともいう。
通常は6ケ月置きに変動金利を見直すもの。LIBOR(銀行間金利)+一定の上乗せ金利

ところでこのような商品は投資家の段階でデリバテブを組む手間を減らしているともいえます。
固定利付債の投資家:収入を変動金利とするには、自分で金利スワップをからませればいい(スワップ取引)。
固定金利と変動金利を交換。しかしこれは面倒で大変ですね。他方では発行者の側には低金利で固定で調達したいニーズがあるはずです。
そこで両社のニーズを考慮して、仕組み債(変動利付債)に仕立てて投資家に売る商売が成立します。

つまり仕組み債とは、発行者と投資家の異なるニーズを満たすため、金融派生商品derivativesを組み込んだ債券です
さてここでデリバティブとは、先物futures、先渡しforwards、スワップ、オプションを指しています。これらは相対(店頭)取引型:先渡し、スワップと取引所型:先物、オプションに分けることがあります。また取引所は現金決済、店頭は現物決済といった言い方もありますが、先渡しに含まれるFXAやFRAは現金決済です。
仕組み商品とは、このようなデリバティブを利用して原資産のキャッシュの流れ(フロー)を組み替えた商品だといえます。

為替
exchange forwardsは 店頭取引 forwards exchange agreements(FXAs) 為替先渡契約 現金決済
                 forwards 為替先物(為替先渡と呼ぶべき)      現物決済
currency futures 取引所取引
金利
 forwards rate agreements(FRAs)金利先渡契約 現金決済  

もともとは現物資産との組み合わせでした
 値下がり予想 先物売り
        プットオプション購入 protective put
portfolio insurance
 値上がり予想 先物買い
        コールオプション購入

 金融派生商品 先渡しforwards: 将来取引を現時点で相対で約束
        先物futures: 将来取引を現時点で市場取引
               規格化された商品を取引
        オプションoptionsとは: 売買権(原資産)
           コールオプション(買う権利 選択権) 
           プットオプション(売る権利 選択権)
            ヨーロピアン・オプション(特定日だけ売買)
            アメリカン・オプション(特定日までいつでも売買)
           現物保有+プットの買い:protective put
同一行使価格、同期間でのコールおよびプットの売り
           :ストラドルstraddle 行使価格近くでの価格のこう着 
双方の買いはバタフライ 価格は行使価格から大きく離れる          
        スワップswapsとは交換のこと:異種金利の交換 通貨の交換
            ベースは変動金利と固定金利の交換
         スワップレート 6け月変動レートと交換する固定金利
                 円/円 ドル/ドルで表示
        スワップション: スワップをオプションの原資産とするもの
         権利行使日に行使価格>固定金利
           固定金利受け取るレシーバーズ(コールスワップション)
         権利行使日に行使価格<固定金利    
           固定金利支払うぺイヤーズ(プットスワップション) 


仕組み債にはつぎのような金利の低下とともに、受け取り金利が増える商品もあります。
 インバース(リバース)・フローター債 基準金利ー短期金利 低金利が持続するもとでは高い利回りを確保できる。短期金利上昇すると金利は低下します。ところがこの商品は低金利が進むと金利収入が増えるのです。これはまず変動金利債に変換したあとキャップ取引(=カラー取引)というものをかませたものです。キャップ取引ではキャップ(上限金利 カラーは上限下限の金利幅)を超えるとキャップの売り手は超過金利を買い手に支払う必要があります。投資家はキャップの売り手になっています。この商品はもちろん金利が上昇すると不利になります。

同様に円安の進行が話題になったときは、円安になると金利が高くなる商品も生みだされました。リバースデユアル債にも円安時に円での利息が膨らむ面はあったのですが、それを強めた形です。クーポンは円高では最悪ゼロになるというものです。パワー・リバース・デュアル債 円安になるほど金利が高くなるように設計{クーポン=外貨建てクーポン×(利払い時為替/発行時為替)ー円建てクーポン}。円高進行で場合によっては無利子化するものです。当時は資金運用の方法、効率化として注目された(地方自治体などでの余裕資金運用として重宝された しかし円高になるとリスクが表面化した)。この経験は、地方自治体における仕組み債を厳禁する動きとなっている。

証券市場論講義 
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
0riginally appeared in Sept.29, 2008
Corrected and reposted in November 6, 2010 , January 28, 2011 and Oct.26, 2011
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