星を読む会(福井読書感想交換会)

福井市内で開催する読書会にあなたも参加しませんか? 一冊の本についておしゃべりしながらティータイムを楽しむ会です。

R2.3/25 第39回福井読書感想交換会レポート【桑島かおり著「ことぶき酒店御用聞き物語」(光文社キャラ文庫)】

2020-04-10 21:51:48 | 読書感想交換会
 「星を読む会」主催、第39回福井読書感想交換会が令和2年3月25日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 課題図書は、桑島かおり著「ことぶき酒店御用聞き物語」(光文社キャラ文庫)。
 福井読書感想交換会の名物企画、福井ご当地作家作品を読もうの回。
 女性らしい文体と、会員がなんとなく覚えがある地名やお店が作中に出てきて読書熱を加速させたようです。
 さて、どのような感想が出てくるのでしょうか、聞き耳を立ててみましょう。
 各会員から3分程で感想を聞き、次の3分で質疑応答をしました。

会員 1
 最初は、畠中恵さんの「しゃばけ」に似ているような気がした。よく読んでみると人情物だった。
 屋敷神が見える特殊能力はおもしろい。普段から超能力が使える、ということで話が作れる。
 登場人物の名前が難しくなかなか覚えられなかった。
 もっと人情物に傾いてくれたらおもしろかったかも。
 どこまであわら温泉の地名や名所をもりこんだのか。色が変わる湖やリゾートホテルはないかも…

会員 2
 前回初めて参加したが楽しくて、今日の読書会を楽しみに待ってた。
 課題本がおもしろくて4巻まで読んでしまった。
 神様、幽霊が出てくる作品は好きで楽しく読めるが、この本の神様にも性格や個性があり存在意義があった。
 表紙が中高生向けのタッチなので、読書会の課題本でなければ手に取らなかった。
 エピソードはテンポがよく、主人公の恋物語と絡めて進んでいく。読者があわら市の町人になったような目線でミツルを応援する気持ちになり、心地よかった。
 日本酒の説明がくどくなく、説得力があり、美味しそう。素人でも興味がわく説明。酒屋さんを見ると暖簾をくぐって、黒龍があるかどんな店員さんがいるか見たくなる。
 こんなにおもしろい小説を書く地元の作家さんがいらっしゃるのを知って、大変良かった。
 悪人が出てこない。

会員 3
 はじめはおもしろいと思わなかったが、読んでいくと楽しい作品だと思い、作者が女性、だと強く感じた。
 芦原温泉の風景を思い浮かべながら読んだ。
 福井の方言がなかなか出てこなかったが、「はよしねま」を強く出すために福井弁を封印していた?
 女将さんを継ぐ人は大変だと思う。

会員 4
 最初の感想は、「読みやすい本だなぁ」。灰汁がなく読みやすい。
 原田マハさんのような作品に雰囲気が似ている。
 登場人物のキャラが薄い?もう少し掘り下げても良いのでは。主要人物二人がくっつくのかな?と思いきゃくっつかない。
 有賀さんが一番印象に残った。最後熱い経営者の顔が出てきた。一番よく書かれている。自分が営業の仕事をしていた時の記憶が蘇る。
 作家としての言葉のセンス、表現力がすごい。「やっぱりプロは違う」と感じた。

会員 5
 すごくおもしろくてハマった。2、3巻も買って読んだ。
 地元あわらのことが描かれており、松島水族館のことかな?金津創作の森のことかな?と想像でき、読んでいて楽しくなる。
 あまりにも福井のことが出てきたので、普段本を読まない母に勧めたところ、「面白い面白い」と3巻まで読んでしまった。本を苦手な人にも読ませてしまう作家の力量がすごい。
 主人公寿ミツルが代々酒屋をやっているように、自分も自営業を亡くなった父から継いだ。父から継いだお店を自分の色に変えていくことが10年かけてやっとできてきた。お店をやっていくことの大変さや屋敷神とのつきあい方を自分の経験と置き換えて読んだ。
 有賀のホスピタリティの考え方に共感。

会員 6
 選書した雑感として。地元福井県の作家作品を選んだことが数回あり、昨年FM福井の番組で紹介されていた。福井新聞でも取り上げられていた。
 福井の女性作家として柔らかい表現や落ち着いた文体が好きで、読書会の課題として色んな感想が出てくるのではないかと思い選んだ。
 登場人物の誰に感情移入するかで感想が大きく変わるのではないか、と感じる。

 会員全員の感想、その感想についての質疑応答を終え、次に雑談形式で深化をはかりました。

●登場人物の名前が覚えづらい
 →最近のラノベの名前はみんなそう
●表紙の絵を見ると有賀さんが若い
●女性陣には好評、男性陣は物足りない
●あわら温泉の栄枯盛衰を知っていると旅館の浮き沈みがリアルに分かる
 →双葉亭は開花亭?
●屋敷神の特徴があんまり出てこない
 →物語が進んでいくと出てくる?
●架空の話の中に現実にある名前、地名を入れると文章が閉まる
●池波正太郎のエッセイを何度も読むが文体が面白い。自分に合う文体、合わない文体があると思う
●事件と恋愛のバランス
 →男性と女性の見方?性差別はいけないが…
●「読みやすさ」は読み手の問題?
 →言葉のチョイス
  →見立てや比喩
●1巻は一番面白い?
 →3巻連続刊行は面白さの証!
●編集者の差?
●匡くんの神社は三国神社?から始まる地名論争
●酒と神様と男と恋愛
●ワインと天使のちょっと良い関係
●日本と酒と神様
●結局宗教の話にもっていく
●屋敷神はあなたの隣にいます
●あしわら湖と湖鳥温泉と屋敷神
●有賀さんのオカルト嫌いは伏線ですよね…
●嫌いにさせないキャラの書き方
 →頑固一徹
●「真実」や「フィクション」の書き方
 →光の当て方で変わる
●気になる三角関係
●気になった人は次巻買うべし!!
 →面白いよ~
●文体の重要部分は文末ではないか?
●なぜか突然池波正太郎推し
●わたし、やっぱり福井が好き!
 →どこの都道府県の人でもお国自慢は下手なもの
●日本酒談義
●突然はじまるコロンボ談義


今日のまとめ
 「海外作品の人物も覚えづらいが日本の作品でもそう変わらない」
 「2、3巻目もすっごい面白い!!」

 時節柄、かなり短い時間で閉会とし、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回40回福井読書感想交換会は、令和2年6月3日(水)19:00から。
 課題図書は、宗田理著「ぼくらの七日間戦争」(角川文庫)を取り上げます。
 ずっこけシリーズでおなじみ宋田理さんの作品。ぼくらのシリーズ第一作目。子供向けと侮れず、序盤から日大全共闘が出てくる骨太の作品。
 映画版は某女優さんの可愛さが際だつ作品でしたが、さて小説はどんな風に読まれるんでしょうか?
 時節柄健康に気をつけ、読書ライフをお楽しみください。IMG_20200411_133505.jpg


R2.1/29 第38回福井読書感想交換会レポート【筒井康隆著「時をかける少女」(角川文庫)】

2020-02-15 20:44:29 | 読書感想交換会
 「星を読む会」主催、第38回福井読書感想交換会が令和2年1月29日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 課題図書は、筒井康隆著「時をかける少女」(角川文庫)。

 ヤングアダルト向けSFの金字塔。
 色んなクリエーターに影響を与えた大ベストセラーを今一度読んでみました。
 さて、会員の皆様はどのように読まれたのでしょうか。

 また今回は飛び入りの方がお二人参加され、会に新しい風を呼び込んでくださいました。

 会は定刻過ぎに始まり、5分程で本書の振り返りを行い感想を述べる準備をしていただきました。
 それぞれ自己紹介と好きなジャンルを述べ3分で意見を発表、その後質疑応答に3分の時間を設けてました。

会員 1
 好きな作家は江戸川乱歩。
 筒井康隆の本ははじめて読んだ。細田守監督版の映画を見たばかり。その映画にも原作の主人公「芳山和子」が出ていた。
 本作では和子は「深町一夫」を忘れているが、映画版では30年たっても深町一夫を待ち続けており、差異が見られた。本作を読んでいて寂しく感じた。
 作品では深町の「また帰ってくる」という言葉があったが、帰ってきたかどうかが気になる。個人的には、二人がまた出会って恋に落ちてほしいと感じた。
 深町の優しさは、おこるべき事故を未然に防いで未来に帰ったところ。
会員 2
 月に4冊は本を読む。
 本作は自分から選んで読む本ではない。青春のライトノベルという感じ。高校生に戻って読む雰囲気か。
 高校時代に雑誌に掲載されていた。
 描かれている時代は、おおらかで懐かしく感じながら読んだ。高校当時は、ビートルズや「帰ってきたよっぱらい」が大ヒットした。
 経済的には右肩上がり、東京オリンピックの1、2年後、日本人全体がまじめに働けば明るい未来がある展望があった。

会員 3
 金沢在住で福井に寄る用事があり、たまたま読書感想交換会の情報を知り参加した。
 小説はほとんど読まない。
 本作が出版された当時は小学生だった。赤川次郎がヒットして世に出てきたのを覚えている。
 スムーズに読めた。
 タイムスリップが報道されたことを思い出した。

会員 4
 最近読書会の課題本しか読んでいない。大人ゲームにハマっている。
 筒井康隆は「旅のラゴス」を読んだことがある。途中合わずに読めなくなったが、本作は少年少女向けに書かれているためか読みやすかった。さーっと読めた。
 話言葉が独特で上品な感じがした。昔のドラえもんみたい。
 タイムスリップの力を使って冒険する話かと思いきや、力を持て余す主人公の葛藤が意外な話だった。

会員 5
 最近あまり本を読まなくなってきて、会で会員の方々からすすめられる本を読んでいる。
 本作は尾道三部作原作の一つとして有名な作品だが、読みながら「転校生」と勘違いをしていて、どこで主人公が入れ替わるかと勘違いをしながら読んでいた。
 映画「君の名は」の元祖だと感じた。当時としては革新的だったのではないか。
 筒井作品は他に「残像に口紅を」を読んだことがあるがすごく実験的な作品で、作家としてのスタイルが共感できるおもしろい作家だと思う。
 本書は、最初のミステリー部分は楽しく読めた。後半の恋愛部分は「学生特有のアレ」と感じた。惚れっぽさ?好きと言われたら意識してしまう唐突な感じ。もう少し丁寧な書き方をしてほしかった。

会員 6
 ノンフィクションばかり読んでいたが、最近は色んなものを読んでいる。最近読んだのは「ラストレター」
 本書は滑稽な話だと思った。いかがなものかと感じた。コメディのような雰囲気。歴史を変えちゃいけないと言いながら、自分が歴史を変えて去っていくケン・ソゴル。なんだかなぁ。
 タイムリープ物のカテゴライズについて。

会員 7
 読書会という物に初めて参加した。主にミステリー作品を読むことが多い。6~7割ミステリーなので、頭の中は死体だらけ。図書館をよく利用する。
 中学1年のときに本書を読んだ。自分が本好きになったきっかけの本。タイムリープ物は複雑で分かりにくいが、その複雑さに「大人」を感じて中高生が読んだんではないか、と感じた。
 今でも「ラベンダー」という単語を聞いたり匂いを嗅いだりすると、本書を思い出す。
 本書の読みやすさと比べると、最近の本は盛りすぎている気がする。古い版だと挿し絵も素敵に感じた。
 冒頭に盛り上がりが来るテンポの良さが心地よい。

会員 8
 古本を大量に買って積んどくのが趣味。東野圭吾、宮部みゆき、有川浩、池井戸潤を読む。好きなのは、重松清や浅田次郎。
 去年スポーツ物をよく読んだので、今年は戦国物を読みたいと思っている。
 昭和47年にテレビドラマ「タイムトラベラー」を一所懸命見た。話し言葉が話題になっているが、そう当時の人からすると背伸びをする話し方だった。
 中学生が学校の外で話すことなんてなかった時代。「好きだ」なんて言えなかった。
 現実にはありえない男の子女の子のやりとりがおもしろい。
 途中で終わってしまっていたので、丸々一冊続けばいいのに。

会員 9
 主催とおさなじみで、最近会に来られなかった幽霊部員。
 本書はすごく好きな作品。
 タイムトラベル物は好きで、アベンジャーズ、バタフライエフェクトなどの映画も大好き。成就しない恋愛も好き。
 本書の中でとても好きな点が3つある。
 「和子に平和な日が戻ってきたのである」という一文。平和な日とは、すべてを忘れてしまったということ。恋をしているときは平和ではない。切なくて良い。
 「ラベンダーの香り」。人間の記憶中枢は匂いを感じる部分と近い。
そのため、過去のことを思い出すきっかけとして「匂い」がある。筒井先生はそのことを知っていて書いたのだと思う。そこが好きな点。
 過去にしか行けない和子が、「いつかすてきな人が私の前に現れる気がする」と未来を見ている。物語の最初と最後に主人公が成長している話が好きなので、この部分も好きな点。

会員 10
 読書会の主催。ミステリーが好きだが、読書会のために色んな本を
読むことが多くなった。好きな作家は横溝正史、江戸川乱歩、眉村卓、夢枕獏、菊地秀行、田中芳樹。
 2019年11月に眉村卓先生が亡くなって同時代の匂いを感じたく、本書を選んだ。
 勘違いをしており長編だと思ったら中編程度の長さだった。色んな作品のモチーフになっており賛否が出やすい作品として選んだ。


 会員全員の感想、その感想についての質疑応答を終え、次に雑談形式で深化をはかりました。

●物語には「リアリティライン」がある。こんなもんやと思って読めるかどうか。許せる部分、許せない部分がある。
●日付が出てくるあたりでつっこみが激しくなった
 →つっこみたくなるのは読みこんでる証拠
●当時としてはその複雑さがうけた?
 →今ではタイムリープ物がたくさんある
 →メモとってまで読むことがなくなった
●理科の先生が真犯人かと思った
 →怒るばかりの先生が親身になってくれることがなかったことの裏返しか?
  →友達のような先生があこがれの先生
●多様性を認めなかった時代
 →逸脱を認めない、封建的な時代
  →それしか知らないから反発のしようがなかった
●「理科の先生」=「不思議なことへの検証」
●磁気テープは古い
●文体の古めかしさは読みづらさにつながらない
●章題のネタバレ感
 →昭和の感覚?匂わせ?ラベンダー的?
●誰も触れないずんぐりむっくりの朝倉悟郎
 →登場人物が少ないので読みやすい
●時をかける少女のドラマ
 →内田有紀のお母さん役が原田知世
  →「転校生」との勘違い
●カテゴリーとしてのジュヴナイル=ヤングアダルト=ラノベ?
●パプリカ
●やっぱり成就しない恋愛がいい
●純真な登場人物たち
●高校生より頭のいいケン・ソゴル
●2600年代未来人の磁気装置
 →睡眠学習が流行ったころの作品か?
  →スピードラーンニングみたいなもん
●ケン・ソゴルは栄養失調
●未来人の体格についての考察
●武田騎馬軍からハイセイコーについて
●巨人大鵬卵焼きハイセイコー
●ラベンダーで始まりラベンダーで終わる
 →ポプリ
  →ラベンダーの香りにときめきを感じる
   →流行りを取り入れる筒井康隆御大
●嗅覚は本能的な物?
 →プルースト現象について
●悪霊払いのはじめはファブリーズ
 →除菌=除霊
●多重人格探偵サイコにも出てくる匂いの場面
●収録されている他の作品の言及
●多重次元の存在
●眉村卓の「とらえられたスクールバス」
 →「戦国自衛隊」への流れ
●タイムスリップ物と呼んでいた頃
 →現状に満足できない人が異世界で輝く

今日のまとめ
「作品自体が時をかけた」


 最後少し雑談とし、本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回39回福井読書感想交換会は、令和2年3月25日(水)19:00から。
 課題図書は、桑島かおり著「ことぶき酒店ご用聞き物語」(光文社キャラ文庫)を取り上げます。
 福井読書感想交換会の名物企画、ご当地作家作品の読書会。今回はあわら市在住の小説家、桑島かおりさんのあわら温泉街を舞台にしたファンタジー作品を取り上げます。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。

L1100104.jpg
L1100100.jpg
L1100106.jpg


R1.11/25 第37回福井読書感想交換会レポート(宮口幸治著「ケーキの切れない非行少年たち」)

2019-12-22 20:43:29 | 読書感想交換会
KIMG0003.jpg 「星を読む会」主催、第37回福井読書感想交換会が令和元年11月25日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 課題図書は、宮口幸治著「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)。
 会では初めての「実用書」。以前、「もし高校野球の女子マネージャーが…」通称もしドラで読書会を開きましたが、完全実用書は初。
 さて、会員の皆様はどのように読まれたのでしょうか。

 定刻過ぎに始まり、まずは15分で振り返りを行い、本書の中で気になった点を抜粋。昨今の報道や身の回りのできごとにからめながら、感想を述べる準備をしていただきました。
 それぞれの発表に3分、質疑応答に3分の時間を設けています。

会員 1
 この本を読んで、NHKの番組「ねほりんぱほりん」が浮かんだ。その番組で紹介された人々がこの本に出てくる人々と似ている。
 本人たちはやる気があっても能力的にできないことがありそこで挫折感を味わう、と番組内でも言っていた。それを思い浮かべながら、この本を読み進めた。
 本中の実例では、発達障害や知的障害を持った子供達が「鬼ごっこ」において被害妄想に近い感情を持つ場面の描写がすごく気になった。

会員 2
 久しぶりに新書を読んだ。自分が持つ新書のイメージよりは柔らかく、読みやすかった。反面、少し物足りない感じがする。
 教会に通っているが、そこに通う人々を思い出した。中には「発達障害」の病名を持つ人もいる。その方々に接するときに本書のようにできるかというと、できないだろうなぁと思う。本書の実例では「感情のペットボトル」社会面トレーニングに興味をひかれた。
 自分が若い頃、少年法が話題になっていて、当時から「矯正より懲罰意識が強い感情の生き物」という考えもあったが、先々のことを考えると矯正する方法も模索しなければいけないと思う。

会員 3
 発達障害については在職中に本を読んでいたが、接する機会が少なかった。今回本書でよく分かった。
 酒鬼薔薇聖斗の事件や、人を殺してみたかったという事件を思い出した。
 私のような普通の人間から見ると、異常な状態だと思う。
 対処の方法が後半書いてあるが、もう少しページ数を増やしてもよいかと思う。本書を手に取る様な人は答えにたどり着きたい人が多いと思う。
 医療・教育の分野を分けるよりはその中間分野を設けた方がよい。
 子育てを家族に任せていたので、反省がある。

会員 4
 本書を読んで、登場する人たちが大人になったときに営利企業で働けるのか、という点を考えながら読んだ。本文中の入所者を納税者に変えるという点が気になった。
 生活保護者申請に関わる仕事をしていたときの体験から、矯正を受けて仕事ができるようになるのかと思う。
 少年院の中で生活ができても社会に出てこられるのか、という点が非常に気になった。

会員 5
 本書を読んで、まとまりがないと感じた。
 発達障害、自閉症、学習障害がメインで話が進むが、途中でIQ70以下の「正常だけど勉強ができない子」へのアプローチに話が変わってしまう。精神科の専門家なので重々承知のはずなのに…
 また本書は「役に立たなさそう」と思った。ベストセラーと聞いているが、何を目的に買われているのかよく分からない。

会員 6
 前から実用書で読書会を開きたいと考えており、今回本書で開催することができた。
 本書を選んだのは売れている本、図説がおもしろいと感じたからが大きい理由。以前から犯罪者の半分ぐらいはなんらかの障害を持ってる人ではないか、と考えており本書でもその説で展開している。
 自分の周囲にも近所でコミュニケーションがとれない人がいたり、スーパーで急に怒る人がいる。
 元TBSアナウンサーの小島慶子さんが41歳で自分がADHDと診断されたと告白して話題となっているが、自分がそのような立場ならどうかという「気づき」をくれる本だと感じた。

 会員全員の感想、その感想についての質疑応答を終え、次に実用書としての本書の「よくなかった点、書き方としてどうか」と思う部分を雑談形式で15分程粗探しをしました。

●自分が発達障害ではないか?と思っている人が読むと不安をあおるのではないか
 →不安な人が買うのか?
●発達障害をグループ化し過ぎている
 →自閉症『傾向』をどのようにとらえるかが難しい
●グレタ・トゥーンベリさんの話題について
●ワーキングメモリについて、
●最初の話題から内容がずれてくる
●受刑者、少年院収容者が納税することも結構だが、社会に適応するまでのコストも計算されるべき

 次に実用書として良かった点、ベストセラーとしての原因や理由を15分で考えました。
◎発達障害や知的障害を持つ受刑者、少年院収容者がいると分かった
 →罪と認識せずに罪を犯してしまう人たちがいる
◎第7章がなければ良かった
 →発達障害や知的障害が治るような完全な治療法は未だ見つかってな
  いのでみんなで社会がよくなるように考えましょう、で終わっても
  良かったのではないか
◎図説がもう少し多くあっても良かった
◎CAPAS、WAIS、WISCの実例を示されても良かった
◎専門用語の解説が少ない
 →一般の人が読むことを想定していなかった?
◎発達障害や自閉症とIQの高低を同軸で書かない方が良かった
◎タイトルがキャッチー過ぎ
 →キャッチじゃないと本が売れない時代

 最後少し雑談とし、実用書での読書会の可否をうかがったり、最近の精神疾患事情なりを色々と情報交換。
 本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。
 参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回38回福井読書感想交換会は、令和2年1月29日(水)19:00から。
 課題図書は、筒井康隆著「時をかける少女」(角川文庫)を取り上げます。ヤングアダルト向けSFの金字塔。色々なクリエイターに影響を与えた大ベストセラーを今一度読んでみたいと思います。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。
KIMG0004.jpg
KIMG0002-1.jpg


R1/9/25 第36回福井読書感想交換会レポート(灰谷健次郎「兎の眼」)

2019-09-26 20:21:48 | 読書感想交換会
 「星を読む会」主催、第35回福井読書感想交換会は令和元年9月25日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 課題図書は、灰谷健次郎著「兎の眼」。会員の皆様はどのように読まれたのでしょうか。

 定刻過ぎに始まり、まずは皆様の感想をそれぞれいただきました。
会員 1
 本を読んだのは二度目。前回も「良かったな」と感じたが、今回読んでハンストの話、給食当番の話について引っかかった。
 給食当番をさせない先生の意見が正しいような気がして、最後まで引っかかったまま読んでしまった。
 処理場の子でも差別しない先生の姿は、自分にはマネできないと感じた。
会員 2
 自分が勧めた本。学校ドラマ「GTO」や
小学校のことを思い出した。
 年中鼻をたらしていた子や変わった子と思っていた子供たちは、今の時代だと病名がついてしまうのではないか、ということを考えながら読んでいた。

会員 3
 1960年代を感じる。自分が中学生のころ、東京オリンピックの時代。社会派の小説だと思う。
 みんながいやがるハエを登場させることで後半の展開につなげている、すばらしい書き方。
 足立先生がハンストで社会に訴える手法が、イデオロギーに傾かなかったのが良い。話がぼやけていない。
 教員や教育委員は組織の論理が優先してしまう。子供の立場に寄り添えなくなる人や立場が出てしまう。
会員 4
 灰谷健次郎をはじめて読んだが、冒頭の一文に引き込まれた。
 文章に映像が浮かぶ。登場人物が思い浮かべられる文章は力を感じる。作品の文体が柔らかく日常がクローズアップされていく。
 先生たちがクズ屋を始める話が非常に心に残った。
 紹介していただいて感謝します。
主催
 何度も読んだが、何度も号泣した。昨日も会の前に確認で読んで夜中に泣いた。足立先生の告白で号泣してしまう。
 兎の眼と鉄道員(ぽっぽや)は何度読んでも泣いてしまう。
当日参加できなかった会員からの読書感想文を掲載します。
 学校教育の過酷さと、手に負えない子供たちに、最初は偏見を持ちつつも、挫けずに、生徒と同じ目線に立ち、彼らの心に寄り添う小谷先生の姿に、とても感動しました。おそらく鉄三は、自閉症なのだろう、と感じました。キャラクターも本当に魅力的で、とくにバクじいさんが好きでした。
 「兎の眼」が書かれたのは、1974年ということなので、現代の学校事情に置き換えて考えると、また違った悩みが生まれていそうですが「生徒の心に寄り添う」ということは、いつの時代も求められる「不変の教師像」のように感じます。
 わたしの弟も去年から、小学校の教員になりましたが、弟も、このような想いをしながら、生徒や、その両親と向き合っているのか、と、小谷先生に、弟の姿が重なり、尊敬の気持ちを覚えました。色々な家庭の子供たちと向き合わなければいけないこと、そしてまた、自分自身の家庭が犠牲になること。学校の先生は、本当に大変な仕事だと感じました。
 そしてこの時代に、一つの職業を持ち、奮闘している小谷先生は、とてもカッコいいと感じました。小谷先生目線で描かれるご主人が、とても残念です。お互いの「共通言語」がまるで違ってしまっているし、きっとこの夫婦は今後上手く行かないだろうと感じます。それに今後、事業に失敗して、土地も取られてしまうのかな、と不安になりました。女性が働くことの大変さも、この本で、改めて感じました。
 最後に、まちよかカフェでご紹介頂いてから、随分読むのが遅くなってしまいましたが、ステキな本をご紹介下さった会員の方、本当にありがとうございました!心がとても温かくなりました!
 一通り感想をいただき、それらを基に雑談形式で深化を図りました。
●夫婦はある程度の距離を持った方がよい
●「舟を編む」の夫婦像とは違う
●パートナーに期待しすぎない
●校長先生の立ち回りがすばらしい
 →適材適所ができている
●現場で「怒らない」ために、ほめるテクニック
●権利意識が高い親
●60年代はハエがいっぱいいた
●鉄三は、学習障害、自閉症、アスペルガー?
●平均的な能力が良いのか、良いところをのばすのが良いのか
●「ファクトフルネス」を平行して読んでいた
●登場する処理場の子供達は経済的に恵まれないままではないか
●イメージ:小谷先生=小西真奈美≠松嶋菜々子
●イメージ:足立先生=馳浩
●やっぱり出てきた「一発屋芸人列伝はいい!」
●野犬狩り、せっしゃのおっさんは当時の日常を表す説話か
●ひらがなが多用された文体
●子供のせりふはひらがなが多い
 会員の思い出話が主となってしまい、本についての感想を交換する時間もままならないまま本日はここで時間となり読書会お開きとなりました。
 参加された会員の皆様、お疲れさまでした。
 次回37回福井読書感想交換会は、令和元年11月25日(水)午後7時から。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。
 課題図書は、宮口幸治著「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)を取り上げます。
 福井読書感想交換会初の実用書。どんな感想が出るか、どんな交換ができるのか今から楽しみと不安が……「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり」。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。ダウンロード.png




R1/7/20 第35回福井読書感想交換会レポート(スティーブン・キング「霧」)

2019-08-02 22:13:26 | 読書感想交換会
 「星を読む会」主催、第35回福井読書感想交換会は令和元年7月20日(土)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 課題図書は、スティーブン・キング著「ミスト 短編傑作選」より中編小説「霧」。
 会員の皆様が少々苦手とする?海外文学を、伝説的スリラー作家キングの代表作で読んでみようと思い選んでみました。
 また、今回は「海外作品だったので会に来てみました」と飛び入りの参加もあり華やいだ雰囲気ではじまりましたが、会員の皆様はどのように読まれたのでしょうか。
 定刻過ぎに始まり、まずは皆様の感想を一通りいただいて、雑談形式で深化をはかりました。
●映画版のラスト
●読書会として、海外作品が苦手との声がありリベンジとしての海外作品
●登場人物の呼び方の変化
(ミスター、ミセス、ファーストネーム、あだな等)
●ちょくちょくはさまるアメリカンジョーク
●シェークスピア文学など教養を要求されるジョーク
●地の文も読み難い場合も
●映画版と小説版との違い
●キング原作の他の映画作品について
●アローヘッド計画とダーク・タワーシリーズとの関連性
●ゲーム「サイレントヒル」との関連性
●キングのインタビューより、「霧」の怖さの話
●キングの密室劇としての怖さ
●やっぱり外国の作品は登場人物が頭に入ってこない(だめ押し)
●描写が気持ち悪い
●キングの作品としては物足りない
●キングの作品の中では傑作の部類
●キング作品は映画化しやすい?
●脱出ゲームのように感じた。
 →スーパーにいた方が安全か危険か
●怪異がはっきりとし形で出てこない
 →13日の金曜日やエルム街の悪夢といったホラーとは違う
●触手は気持ち悪い
●人間が一番怖い
 →キング作品はこれが多い
  →強い想いに取り付かれた人は怖い
●ミセス・カーモディの立ち位置
●閉鎖空間での人間の振るまい
 →あさま山荘事件との関連性についてそれぞれの見解と考察
●情報が遮断された状態とストックホルム症候群について
●ヒロインとしてのアマンダの立ち位置
●90年代アメリカの色恋沙汰編集
●ホラーやサスペンスには三大欲望としての睡眠欲、食欲、性欲が出るのか
●セックスと死亡フラグ
 →極限状態でのセックス
●やっぱりあさま山荘事件
●オリーが死亡したことでデヴィッドが孤独になる
 →相談する相手がいなくなる
●「霧」の恐怖-日本の感覚と外国の感覚
 →山陽自動車道開通当時の思い出
 →キリスト教での霧 →ヨハネの黙示録
●クトォルフ神話との関連性
●「生け贄」と「人柱」
 →ロンドン橋落ちた
  →丸岡城の「霧」も人柱の恨み-お静さんの恨み
   →「饅頭」も川への生け贄の代わり
    →そして「火の鳥」
●若者がよく死ぬ話だった
●小野不由美の「屍鬼」-山の中の寒村で次々と人が死ぬ
●怪物よりも人間怖い-パニック小説
●澤村伊智の「ぼぎわんが、来る」
●ステファニーは死んでると思う
●アマンダは他の男性とも関係を持っていた?
 →ミセス・カーモディは知っている?
  →アマンダは杉本彩、峰不二子、薬師丸ひろ子?
●男衆はビール飲んでるだけ
 →外国だと水よりビールの方が安全か
●ミセス・カーモディがみんなをひきつけていくシーンに引きつけられる
●集団ヒステリー
 →徒党と組む
●もし、ニホが急に霧に包まれたら
●「ハンニバルライジング」との関連性
●ラストの解釈
 →スーパーの人々は死んでるよね…
  →カーモディもデヴィッドもいない
   →エースがいない組織はどうなるのか?
●『「霧」が出る』のは気持ち悪い
●実際の地図との比較
 →九頭竜正志「さとり世代探偵のゆるやかな日常」
  →読書会の思い出語り
●やっぱり触手気持ち悪いよね……
 本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。
次回36回福井読書感想交換会は、令和元年9月25日(水)19:00から21:00まで。会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。
課題図書は、灰谷健次郎著「兎の眼」(角川文庫)を取り上げます。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。s_L1090748.JPG