10月号より
不思議な夢
デイケア・K.H
昨年五月に入職させて頂き、はや一年が過ぎました。
初めは、医療相談部門でワーカーの仕事を学びながら、病棟で患者さんの話を聴かせていただいたり、記録を読んで、病気に至るまでの経緯や環境、病状など多くのことを勉強させていただきました。
私は精神科病院で仕事をするのは初めてで、3ヶ月ほど経つと、何だか胸がいっぱいになってしまいました。
深い苦しみや悲しみを抱えて生きている人達の希望はどこにあるのだろうと悶々としている中、先輩方は忙しく動き回って、
「生まれて来なければよかった。」
「生きていてもしかたがない。」
と訴える患者さんの気持ちを受け止めながらも、毎日、患者さんを淡々と治療に繋いでおられました。
先輩方の仕事ぶりに感心するとともに、自分も精神保健福祉士として働きたいと強く思うようになり、しばらくして、デイケアに異動することになりました。
デイケアでメンバーさん達と過ごしていると、昔みた不思議な夢を思い出すことがあります。
十年ほど前、私は福祉の専門学校に入って初めての実習で、知的障がい者の入所施設に行きました。
一週間が過ぎた頃、昼休みに大部屋で利用者さんとくつろいで過ごしていた時のこと、何か言いたそうにこちらを見ている青年がいました。
その方は、重度の自閉症で、いつも無表情で穏やかですが、たまに大声で叫ぶことがありました。
私は思わず、
「ずっと頑張ってきたんですね。」
と小声で話かけると、じーっとこちらを見つめたまま、片眼から一筋の涙が流れたのです。
その夜、私は夢の中で彼に会いました。
いつものように利用者さん達と散歩道を歩いていると、後ろから彼が、
「K・Hさん」
と声をかけながら、颯爽と坂道を登ってきました。
彼は大学の先生のような仕事をされており、柔らかな表情で楽しそうに話してくれました。
内容は忘れてしまいましたが、雑談したり、私にアドバイスをしてくれたようです。
気がつくと、年配の女性の利用者さんも来て、彼女は良妻賢母で自信に満ち溢れ、優しい笑顔で子供たちの話をしてくれました。
夢の中で彼らは、現実とは全く違う姿で現れたのですが、とても生き生きとして存在感がありました。
今でもありありと思い浮かびます。
何だか変な夢だったけれど、それが本当の姿だったのかも・・と思いながら、やがて仕事として障害のある方々と関わるようになり、時々、あの夢を思い出しました。
そして、現実の世界の彼らと過ごすうち、キラッと輝く一人ひとりの個性が、大好きになりました。
デイケアにも、そんな個性の輝きがたくさん見られます。
創作活動に集中している時、美味しい物を食べている時、何気ない日常の中でメンバーさんの個性の輝きがみられます。
もちろん、個性がぶつかる事もありますが、突出した個性たちが調和して生きていく練習をしながら、私自身も四角い個性を、彼らに丸く磨いてもらっているような気がします。
今後、メンバーさん達も老いを迎えるにつれ、地域の支援も必要になってきます。
支援の課題はたくさんあると思いますが、
「生きていて良かった」
と思える日々を積み重ねて頂けるよう、頑張りたいと思います。
袋田病院に来て、まだ一年、やっとスタートラインに立ったばかりで、ご迷惑をおかけしますが、やりたい事がいっぱいありますので、皆様宜しくご指導お願いいたします。
不思議な夢
デイケア・K.H
昨年五月に入職させて頂き、はや一年が過ぎました。
初めは、医療相談部門でワーカーの仕事を学びながら、病棟で患者さんの話を聴かせていただいたり、記録を読んで、病気に至るまでの経緯や環境、病状など多くのことを勉強させていただきました。
私は精神科病院で仕事をするのは初めてで、3ヶ月ほど経つと、何だか胸がいっぱいになってしまいました。
深い苦しみや悲しみを抱えて生きている人達の希望はどこにあるのだろうと悶々としている中、先輩方は忙しく動き回って、
「生まれて来なければよかった。」
「生きていてもしかたがない。」
と訴える患者さんの気持ちを受け止めながらも、毎日、患者さんを淡々と治療に繋いでおられました。
先輩方の仕事ぶりに感心するとともに、自分も精神保健福祉士として働きたいと強く思うようになり、しばらくして、デイケアに異動することになりました。
デイケアでメンバーさん達と過ごしていると、昔みた不思議な夢を思い出すことがあります。
十年ほど前、私は福祉の専門学校に入って初めての実習で、知的障がい者の入所施設に行きました。
一週間が過ぎた頃、昼休みに大部屋で利用者さんとくつろいで過ごしていた時のこと、何か言いたそうにこちらを見ている青年がいました。
その方は、重度の自閉症で、いつも無表情で穏やかですが、たまに大声で叫ぶことがありました。
私は思わず、
「ずっと頑張ってきたんですね。」
と小声で話かけると、じーっとこちらを見つめたまま、片眼から一筋の涙が流れたのです。
その夜、私は夢の中で彼に会いました。
いつものように利用者さん達と散歩道を歩いていると、後ろから彼が、
「K・Hさん」
と声をかけながら、颯爽と坂道を登ってきました。
彼は大学の先生のような仕事をされており、柔らかな表情で楽しそうに話してくれました。
内容は忘れてしまいましたが、雑談したり、私にアドバイスをしてくれたようです。
気がつくと、年配の女性の利用者さんも来て、彼女は良妻賢母で自信に満ち溢れ、優しい笑顔で子供たちの話をしてくれました。
夢の中で彼らは、現実とは全く違う姿で現れたのですが、とても生き生きとして存在感がありました。
今でもありありと思い浮かびます。
何だか変な夢だったけれど、それが本当の姿だったのかも・・と思いながら、やがて仕事として障害のある方々と関わるようになり、時々、あの夢を思い出しました。
そして、現実の世界の彼らと過ごすうち、キラッと輝く一人ひとりの個性が、大好きになりました。
デイケアにも、そんな個性の輝きがたくさん見られます。
創作活動に集中している時、美味しい物を食べている時、何気ない日常の中でメンバーさんの個性の輝きがみられます。
もちろん、個性がぶつかる事もありますが、突出した個性たちが調和して生きていく練習をしながら、私自身も四角い個性を、彼らに丸く磨いてもらっているような気がします。
今後、メンバーさん達も老いを迎えるにつれ、地域の支援も必要になってきます。
支援の課題はたくさんあると思いますが、
「生きていて良かった」
と思える日々を積み重ねて頂けるよう、頑張りたいと思います。
袋田病院に来て、まだ一年、やっとスタートラインに立ったばかりで、ご迷惑をおかけしますが、やりたい事がいっぱいありますので、皆様宜しくご指導お願いいたします。