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霊安室 『すべてのひとつ』
かたち在るものはやがて朽ち果て、大地と調和し人々を包摂する。お皿と部屋(霊安室)の物質的関係は、人と世界の関係に似ている。
個々の人は、個別の細胞のようであり、それを包み込むこの世界はわたしたちの身体そのもののよう。
どこにも必要とされず行く宛のない、いびつな破片も、他で代用が効かない程にぴたりとはまる場所がある。
生あるうちに自身の活きる場に恵まれることは誰にとっても得難い偶然的なもの。生涯それを得られなかったものも、いつの日か大地に溶け落ち世界を優しく包み込む。
すべてでひとつ。すべてがひとつ。すべてのひとつ。
上原耕生
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この空間は袋田病院で亡くなられた方々のご遺体をご家族が来訪されるまで一時的に安置する為の部屋です。割られた瀬戸物やタイルはこの制作が始まる前に、本法人に関わる皆さんのご家庭で眠っていた物を集めて砕き、バズルの様にランダムに貼り合わせた作品です。
この公開制作は、2011年から私が手がけている霊安室プロジェクトの途中経過のお披露目を目的にしています。この10年に至るまでに私が関わってきた何人もの患者さん達がこの場所を通って逝かれました。10年に及ぶこのプロジェクトが始まった当初、多くの職員の賛否両論があり、 答えのない大きな課題に日々悶々と自問自答を繰り返していました。10年後の今日も、未だにその答えは解りませんし、今後の作品の位置付けも予想出来ません。鑑賞される一人一人が、それぞれ感想や印象を持たれるものだと思いますし、そういった多様な見え方や感じ方、個々の生き方や死生観の幅や広がりを促す空間であって欲しいと願っています。
向かって右壁と正面の壁の設営は 2022年以降に取りかかる予定です。
引き続きどうぞ宜しくお願い致します。
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