袋田病院ブログ

茨城県大子町にある精神科・直志会袋田病院のブログです。

「病院らしくない病院」−アートフェスタを終えて

2016年12月19日 19時07分09秒 | 院内誌 「輝」 より
12月号より


「病院を地域から孤立させないこと。地域の人々が病気でなくても気軽に立ち寄れる場所にしたい。」

英国チェルシーには、元々地域にあった幾つかの古い病院を統合して1993年に大改革を行い、立て直されたウエストミンスター病院という施設があります。
冒頭の言葉はこの病院の専属アートディレクターであるスーザンロバート女史の言葉です。
この病院には近隣のビジネスマンが昼食を食べにカフェに来たり、主婦がコンサートを聞きに気軽に訪れるといった、病院とは思えない様な文化的な空間になっていて、職員や利用者による詩の朗読会やオペラ公演等が定期的に行なわれていると言われています。
私自身最近読んだ本の中でこの病院の存在を初めて知りました。
英国と日本では社会補償や文化支援の法基準が違っているので、この施設の運営方法を私達がそのまま模範にすることは難しいかもしれません。
しかし「アートフェスタ(以下af)を毎年行なっている私達にとって、ウエストミンスター病院のような話は刺激的な1つのサンプル情報になるのではないでしょうか。


 今年のafでは400人以上の一般の来場者がいらっしゃいましたが、ふらりと迷い込んだ一人の来場者が会場の熱気に衝撃を受け、婦人会の友人達を引き連れて再訪され、いたく感激されて帰られていったのが印象的でした。
他にもafをきっかけに「袋田病院(法人)の活動に関心を持ちました」との声がアンケートで何通も集計されています。
しかしこれは裏を返して言えば、地域に はびこっていた「フクロダビョウイン」に対するこれまでの先入観がどんなものだったのか私自身、来場者の言葉を通して改めて思い知らされた2日間でした。
そしてこれまで“忌避(きひ)施設”として地域社会から排他され、敬遠されてきた病院(法人)が、文化を積み重ねることによって、人々が徐々に私達に振り向き始め、関心を寄せ始めているのを実感した時間でもありました。
最初は物珍しさで訪れる人が殆どかもしれません。
しかしこれからもマイペースでこの活動を継続することによって、私達にしか伝えきれない現場からのメッセージを発信していくことが出来るのではないでしょうか。
今年、時期を同じくして行なわれた行政主催のKENPOKU芸術祭をはじめ、今や日本中に乱発される打ち上げ花火のような「地域興し系アートイベント」と私達のafとの違いを相対化しながら、改めて私達の足元を見つめ直す良い機会になればと思います。
充実感もひとしおですが、皆様ひとまずお疲れ様でした。  
デイケア・上原