袋田病院ブログ

茨城県大子町にある精神科・直志会袋田病院のブログです。

袋田病院アートフェスタ2018・スタッフ・インタビュー vol.4

2018年08月09日 11時05分40秒 | アートフェスタ・2018
4回目に紹介するのは、ベテラン看護師の佐藤恵さんです。
名前から推測すると可愛らしい女性かと思いきや?男性の看護師さんです(笑)
今は看護師さんと“師”で呼ぶことが定着しましたが、ひと昔前は、看護婦さんと“婦”でしたよね。
なので、女性のイメージを持ってしまうのですが袋田病院は男性の看護師さんが全体の半分ぐらいです。
精神科は男性が多いのか?と最初は若干違和感があったのですが、すぐに理由が分かりました。
精神科は、体力面でも気力面でも「力」がいる。
患者さんに叫ばれ、怒りの声が鳴り響くと、怖いと感じてしまう事が私にはあります。
そんな中、男性の看護師さんがドンっと対応する姿に、心底安心します。
これまた昔のTVのCMで「男は黙って○○○」なんでしたっけね?
商品名は忘れてしまいましたが男は多くは語らずも優しさを秘めていることを表している内容でしたが、恵さんをはじめ男性のベテラン看護師さんは多くを語らずもみんな優しく、看護師さんに男性女性関係ないことを知りました。

以下、佐藤看護師:さ / 榎:え


さ:俺、アートフェスタ実行委員2年目だから、まだよく分からないんだよ。
え:私が担当しているこのブログ記事は、アート専門外の精神科分野のスタッフさんがアートを前に四苦八苦するリアルな姿を伝えるのが目的なので、分からなくって全然いいんです。
リアルな姿ですから(笑)
恵さんは、何年に入職されたんですか?

さ:昭和63年かな?ん、ちょっとまてよ62年だったかな。
え:勤続30年越えですね。すごい。
この間、病院で芸術に触れるということはあったんですか?

さ:安彦先生の「癒しとしての自己表現展」の本を読んで精神科病院(精神を患っている人)で、こんなすごい絵を描ける人がいるんだって驚いたんだよ。
その後、実際に平川病院へ行って研修も受けてきたよ。

※安彦耕平先生は東京八王子市にある平川病院(精神科)で造形教室を開かれていて、作者(入院や通院している方)が自作の前で語るギャラリートークがある自己表現展を行っています。この取り組みはドキュメンタリー映画にもなり、袋田病院には月1回来ていただきアトリエホロスにて造形教室を開いて下さっています。
え:患者さんを見る目が変わって、病院にアーティストがいるってことに気づいた?

さ:そう、うちの病院にも仏画を描いている人がいてね。すごかった。
え:仏画ですか。。。その時の病院ってどんな感じだったんですか?
さ:大変さもあったけど楽しかったよー。
大型バスを借りて大洗まで海水浴に行ったり、つくばまでミカン狩りに行ったり。

え:海水浴ですか。
大勢の患者さんで行って、しかも海で色々な面で危険というか、大変だったんじゃないですか?

さ:いや。外に出ると患者さん達は「しっかりしなきゃ」ってしっかりするんだよ。
患者さん同士で助けあうし、自分たちも助けてもらったり、みんなで協力していたね。
掃除や配膳も患者さんと一緒だったよ。
今は、みんな職員がやるようになったけど…。

 ※国の方針で、精神科病院入院患者の人権尊重や専門性の作業療法内でADL(Activities of Daily Living 日常生活を送るための最低限の動作)を維持、向上させるという流れに変わった為。
昔はおおらかだった。みんなで雑魚寝したりして…。
え(心の中で):[ 一つの大きな家族みたいで温かい気持ちがする。恵さんもイキイキと話されているなぁ。 ]
さ:海水浴の他にやぐらを組んで、患者さんとお揃いのはっぴまで作って二日連続盆踊りもしたよ。
え:2日間も!楽しそー。
さ:そこの久慈川の河川敷で打ち上げ花火も上げたんだよ。数は少なかったけど。
え:えぇぇ、打ち上げちゃったんですか。
さ:消防署にちゃんと許可出してさ。
でも、段々消防が厳しくなって許可が出なくなって普通の持つ花火に変わっちゃったけどね。

え(心の中):[ 普通の持つ花火に変わったって火気厳禁が常識だと思っている私には、すごいと思っちゃうよー。危なくなかったんだ…。 ]
さ:秋は運動会。しかも仮装行列してさ。Iさんに金太郎になってもらって。
え:Iさんが!適役~。
さ:冬はクリスマス。これも各病棟で出し物(演劇)をして。
え:確か患者さんのお誕生日には花を贈ることをされていたんですよね。
さ:そう、誕生日会もやってた。
患者さんの担当看護師が患者さんに対してバースディカードを書いたんだよ。
このコメントがさ。(ちょっと照れるなという感じで話されていました)


話しは尽きず…。
最後に、恵さんに、30年どうでしたか?と問うと、
「いいことも悪いこともあったな。」と。
30年という重みが含まれた一言が返って来ました。


男は黙って…シャイな佐藤看護師を隠し撮り(笑)
注:ご本人さんから写真撮影OKを頂いています。


【インタビュー後記】
ソフトボール大会やゲートボール大会の話なども聞かせて頂き、ほっこりとした幸せな気持ちになりました。
お話しを聞いていて、キーワードは「みんな同じ」と感じました。
患者さんと職員。

そこには分け隔てなく、ひとつにつながり得るからこその安心感がある。
一緒の釜の飯を食べ、一緒に働く。

今は、患者様の人権を尊重し掃除や配膳なんてもってのほかというけれど、私は全体性を基盤とし日常生活を通して心身を健康にしていく伝統医学アーユルヴェーダを仕事にしていますので、掃除や配膳という行為が立派なケアになると捉えます。
だからこそ、昔はなんて豊かなケアだったんでしょうと感じます。
でも、その反面、精神疾患の理解がまだ不十分で、患者さんの症状(言い換えると自由)を作用の強い薬で抑えるのも事実あったとのこと。

今、看護課の今年のテーマについて話し合いが重ねられています。
まだ仮ですが「旧体制の看護(管護)」について表現していく方向です。
精神科病院は、社会の縮図だと感じます。
精神科病院で起こっていることは時代を反映しています。
単純に昔は良かった悪かったの比較では語れない、そこにはドラマがあります。
 あの時代のケアがあり、今の時代のケアがある。。。
このドラマを表現することで、この同じ時代に暮らすみなさんの未来につながる、
「生きるヒント」
と言ったらいいでしょうか、「何か」を感じて頂けたらと思っています。
インタビュアー 榎 尚子
(アーユルヴェーダヒーリングコンサルタント)

袋田病院公式サイト

https://www.fukuroda-hp.jp/index.html

―袋田病院Artfesta2018『精神科病院によるアート的社会実践』―


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