袋田病院ブログ

茨城県大子町にある精神科・直志会袋田病院のブログです。

美術館で再現される「座敷牢」 ~院内誌「輝」5月号より~

2018年05月16日 08時54分25秒 | 院内誌 「輝」 より
 先日たまたま目にした地元の新聞記事(沖縄タイムス4/19)の一覧で、かつてこの国で合法的に行なわれていた「座敷牢」についてのシンポジウムと写真展が沖縄県立美術館で開催された情報を知りました。
記事によると展示会場(県精神福祉連合会主催)では、沖縄県立芸術大学のデザイン科の学生達によって、実際に県内にあった座敷牢を再現して作成された実寸大レプリカの展示がされたとありました。
 
 思い返せば、昨年から今年にかけて大阪府寝屋川と兵庫県三田市で起こった、精神疾患者への監禁事件も、記憶に新しいものとして残っています。
こういった事件について世間では、家族による「非人道的な加害の責任」として、取り沙汰されがちですが、その一方で、ハンディーキャッパーに向けられる世間からの冷ややかな「偏見」や「世間体」を過度に意識することによって、家族が追いつめられ、表面化されない密室空間において、問題がより深刻化している実態も浮き彫りになってきています。
 
 では、一体何故美術館というジャンル(医療業界)を超えた場所で、こういった極めてセンシティブなテーマが取り上げられ、議論されているのでしょうか。
それは、これまで、医療や福祉の業界内で抱えてきた(あるいは抱えきれなかった)問題が、美術館やアートが媒体にされることによって、その実態が、これまでと違った層に改めて問題提起され、広がり始めているからなのかもしれません。
もしかするとこういった取り組み自体が、近年のダイバーシティー(※業界を超えた、様々な人種や専門職の連携)的な時代の発想と言えるのかも知れません。
勿論「座敷牢」は、一般的には、まだまだ認知されていない業界内の固有名詞なのかも知れませんが、病気への理解を促していく啓発活動にこそ、追いつめられていくその家族や、当事者を孤立させない為の手掛かりがあるのではないでしょうか。(現場で尽力されている皆さんを前に述べるのは“せんえつ”ですが)そしてそれは、新聞やテレビのような一方的な報道とは異なり、医療福祉の現場だからこそ発信出来る、独自のアウトリーチの意義だと私自身は感じています。
何故なら、アートによる疑似体験や現場の実体験は、ネットや教科書で知識として観るものとは全く違った次元の、私たちの皮膚感覚に訴えかけるものがあるからだと、実感しているからです。DC上原



引用元2018/4/19沖縄タイムス


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