「キャンセルカルチャー(cancel culture)」とは、個人や組織、思想などのある一側面や一要素だけを取り上げて問題視し、その存在すべてを否定するかのように非難すること。文化的なボイコットの一つ。ソーシャルメディアの普及に伴い、2010年代半ばから多く見られるようになった。大勢の前で相手のどんな誤りやミスも徹底的に糾弾する行為「コールアウトカルチャー(call-out culture)」のひとつ。
さて、いろいろと国会議員のみなさまが話題になっていますが、2021年は秋までに第49回衆議院議員総選挙が予定されています。どのような方が選挙に立候補し、当選するのか、はたまた、話題を振りまいた議員の方々の当落がどうするのかは、有権者となる私たちが何をどういう視点で投票するかにかかっていると思います。
そんななか、2021年1月31日に投開票された埼玉県戸田市議選が、なかなか興味深い選挙結果になりました。
戸田市は、埼玉県の南東部に位置する市で、荒川を境に東京都と接する、人口約15万人のベットタウンです。江戸時代には御鷹場として栄え、荒川の「戸田の渡し」は全国的にも有名です。また、東京オリンピックのボート競技会場にもなっています。
その戸田市議選は定数26に対し、36人が立候補する大乱戦で、しかも個性派候補が揃ったことで、国政選挙並みのにぎやかさとなりました。
地方選ブームの火つけ役ともいえるNHKから自国民を守る党からは、黒瀬信明さんが出馬。元ラガーマンで、NHK集金人トラブルに対応するコールセンターで働いていたという経歴です。
ポスター掲示板で一際、目を引いたのが、無所属の三谷ありささん。18歳の時から埼玉を拠点に芸能活動を始め、女優として映画や舞台に出演し、CMモデルなども務めてきました。文化芸術活動の推進を公約に掲げ、「埼玉は芸術家が多いが、(戸田市内は)アーティストさんが活躍する場所が少ないので誘致したい」と訴えていました。
「戸田を分煙先進都市に!」と喫煙・分煙所の設置拡大を公約としたのが、愛煙党・渡久地ゆうきさんでした。
残念ながら、このお三方は落選してしまいました。
そして、異色中の異色とも思えるなかで見事当選し、選挙前、選挙中、選挙後と話題に事欠かないのが、スーパークレイジー君党・スーパークレイジー君さん(本名:西本誠、以下、クレイジー君とします)です。
当選後、クレイジー君さんは選挙管理委員会(選管)の事務局長から深夜に呼び出され、「今すぐ辞職すれば、株が上がる」「戦う相手は巨大組織」と遠回しに辞職を促され、選管は「発言は不適切だった」として、事務局長は異動となりました。
しかし、その後も騒動は続いており、辞職圧力や住居実態がないことを理由にした当選異議申し立てが出た件について、市議選に落選していたN党の黒瀬さんが「現職市議から『クレイジー君に当選異議申し立てを出さないか』との電話があった」とYouTubeで暴露(?)し、これを知ったクレイジー君さんは、現職市議に直接問いただすべく面会を試みたのですが、ドタキャンされました。それでも現職市議は電話で、この話を事実だと認めたとのことです。
クレイジー君さんは宮崎県出身の34歳。金髪に特攻服姿で訴えを重ね、最終的には得票数912票を獲得し、定数26のうち25番目で当選を果たしました。実はクレイジー君さんは2020年7月5日に投開票された東京都知事選にも立候補しており、このときは366万1371票を獲得して再選を果たした現職の小池百合子知事に対し、1万1887票を獲得していました。
クレイジー君さんは宮崎県出身の34歳。20代で上京し、クラブ従業員や介護職員を経験し、10代のころは少年院に入っていたという時期もあるそうです。
都知事選出馬については、「売名のつもりだった。軽いノリだった」としていますが、若い世代が街頭演説の会場に集まるようになり、「弁護士や医師の候補の話なんて、みんな聞き飽きている。僕みたいな人間のほうが若い人から支持される」と、選挙で訴えを繰り広げることのおもしろさにのめり込んだとのことです。都知事選後、親族や親友が住んでいた戸田市で市議選が行われることを知り、2020年秋ころに引っ越し、「都知事選に出てから、国会議員の先生たちから中身をつけろと勉強会に誘われたりした。都知事選に出る前までは衆院と参院の違いも分からなかったぐらいですからね。今回はダンスとかもしないし、勝ちにいきたい」と地固めをしてきました。
選挙期間中は、都知事選のときと同じ、金髪、特攻服姿で街頭演説に臨みましたが、今回は主張を真剣に聞いてもらいたいという思いから、ダンスなどのパフォーマンスは選挙戦最終日以外には行わず、「教育格差是正」「市内のバリアフリー化促進」「新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた中小企業への支援拡充」などの公約を訴え続けたものでした。
ちなみに、都知事選では芸名使用ができませんでしたが、今回は通称の「スーパークレイジー君」が認められており、当選後の議会での呼称は「スーパークレイジー君議員」となっています。なお、髪は黒くし、特攻服は着用ていません。
クレイジー君さんが、今回の選挙戦で感じたのは有権者の政治への無関心だったとのことで、「自分のような人間が議員になれば政治への興味を持たせることができる。全国で一番注目される市議会にしたい。みんなに注目されれば、市議会にも緊張感が出る」「自分には固定観念がないから、いろいろな人の話を素直に聞ける。教育分野を中心に働きたい」と意気込みを語っていましたが。
とはいえ、クレイジー君さんに対して、受け入れられないと反感を持つ方々の心情もわからないではありません。今でも若者だからとか、性別や人種というだけでも排除しようとする考えがあったりします。それでも、戸田市民が選挙で選んで選ばれたのですから、堂々と市政での活躍を期待したいものです。
政治的にも関心を持っているであろう、この世代の方々は気候変化、人種差別、男女平等化などでも意見を持っているでしょうし、また活発に活動している方もいます。これからの社会を創っていく希望の世代で盛ると思います。
今の社会的環境は誰かを非難する場合ではないと思います。特に将来が不確かになっている世代を不当に非難するのではなく、世代を超えて一緒に闘うことでしか、私たちは今を乗り越え、未来を創ることはできないと思います。
あらためて、2度とこない今日という1日を大事に大切に過ごしたいと思います。
良いことはずっと続き、良くないことには、必ず終わりが来ると信じていきましょう。
今日も、私のブログにお越しいただいてありがとうございます。また、明日、ここで、お会いしましょう。