野球小僧

第101回 全国高等学校野球選手権大会 決勝 履正社高(大阪) vs. 星稜高(石川)

石川・星稜高のエース奥川選手が、大阪・履正社高を3安打17奪三振で完封した今春の選抜大会から5ヶ月。再戦は夏の甲子園の決勝という、この上ない舞台が準備されました。

2回裏に星稜高はチーム初ヒットから岡田選手のタイムリーヒットで先制。しかし、履正社高は直後の3回表に連続フォアボールのチャンスで井上選手が今大会3本目となるホームランを放ち逆転。中盤以降は、履正社高・清水選手と星稜高・奥川選手の両エースによる無失点の投げ合いが続く。

7回裏に履正社高・清水選手が星稜高打線につかまり、2本のタイムリーヒットで3-3の同点。しかし、またも直後の8回表に野口選手と、清水選手をリリーフした岩崎選手が奥川選手を捉え勝ち越し。履正社高はこのリードを守り切り、選抜大会のリベンジを果たして、春夏つうじて初優勝を飾りました。北陸勢初優勝を目指した星稜高も奥川選手が9回を投げ、打線も終盤以降に猛追をみせましたが、チャンスであと1本がでませんでした。

履正社003000020|5
星稜 010000200|3


履正社高・岡田監督:「日本一の気分は格別。子どもたちは苦しいときに踏ん張り、本当によくやってくれた。奥川君から5安打は打ってほしかったが、2桁も打てるとは」
星稜高・林監督:「奥川は本調子ではなかったが、最後までマウンドを守ってくれた。全国の頂点に立つのは簡単なことではない。星稜らしく粘り強く戦ってくれた」

履正社高・野口主将:「みんなで日本一目指してやってきたんで、日本一目指したことがしっかりできたんでよかったなあと思います」
星稜高・山瀬主将:「駄目な主将だったけど皆がついてきてくれた。このメンバーと日本一になりたかった」


1979年の選手権大会の和歌山・箕島高との延長18回の激闘。1992年選手権大会の松井秀喜さん(元・ニューヨーク・ヤンキースほか)の5打席連続敬遠。2018年選手権大会で愛媛・済美高と延長13回タイブレークから逆転サヨナラ満塁ホームランを打たれ11-13の敗戦。

甲子園で伝説と呼ばれる数々の名勝負を演じてきた星稜高。

今年もエース・奥川選手を擁し、決勝まで勝ち進んできたものの、頂点まではあとわずかというところでした。

就任して今年で9年目になる林和成監督は、同校OBで二年生時の選手権大会で松井秀喜さんと三遊間を組んだ経歴を持ちます。その後、日本大に進み、卒業後母校へコーチとして戻りました。

星稜高と言えば甲子園で22勝を挙げた名将・山下智茂監督(現・総監督)がこれまでの礎を築いてきており、林監督も「自分は山下先生のもとで育ってきた人間なので、山下先生のモットーだった“耐えて勝つ”という言葉が根本的なところにあります。今の子たちは我々とは世代も社会構図も違うので、何もかも手に入りやすい時代で育ってきているので我慢する機会が少ない。だから、野球を通じて我慢することや耐えることを学ばせてあげたいと思っています」と指導も山下総監督の教えがベースとなっています。

大学卒業後、すぐにコーチとして指導に携わり、部長時代も務めた約10年間は結果を求めすぎて練習で力を出し切らせてしまい、試合で結果が出ませんでした。余力を残して練習を終わらせると選手たちは自分たちで考えて室内練習場に行って個人練習していたりして、好きなように練習させた方が効果的と考えていたそうです。

そして、練習を押し付けるのではなく、選手との距離感、雰囲気作りが大事だと考え、やりやすい環境をどう整えてあげるべきかを考え、道を作れば選手たちは乗ってきてくれると思い、その“道づくり”をしました。野球の厳しさも教えつつ、怒り方にも気を配り会話も多くしながらコミュニケーションを取るように指導に変えてきました。

練習は授業を終えた3時半ごろにスタートします。グラウンドは学校から自転車で5分ほどのところ。しかし、近隣に住宅地などがあるため、夜間照明などの兼ね合いで夏場など日が長い時期だけは日没後の20時近くまで練習しますが、夜遅くまでの練習はできません。当然、テスト前などは練習時間の規制があり、冬場は積雪で外では練習できないため、校舎近くの室内練習場になります。

強豪校でありながら、他の私学に比べると練習時間は短い方だと思います。平日は3時間くらいで、バッティング練習が主体ですが、守備も含めて実戦練習を多く取り入れています。また、効率を上げるために、バッティング練習をしながらランナーをつけたり守ったり、いろいろなことを同時進行させます。大会が近くなればなるほど、実戦練習は多くしています。なおかつ、日本海側は天気が急変することが多く、天気予報は晴れでも突然雨に見舞われることもあり、空を見ながら進行状況を見てメニューをこなしていきます。

過去には、充実した戦力で評判が高った時期があり、春の北信越大会こそ勝てましたが、県では秋も春も夏も勝てなかったこともあり、。経験者がいても勝てるとは限らないと分かったそうです。

注目されればされるほど、力を発揮させることの難しさを感じ、それだけに、指導者としてどんな環境で選手をプレーさせてあげられるか。雰囲気作りから一層気を配ってきました。

さて、林監督は昨夏の二回戦で敗退した日の夜、宿舎でのミーティング中に突然、「1曲歌ってええか?」と選手に断り、沖縄出身のバンド「かりゆし58」の「オワリはじまり」を涙ながらに歌いました。

ちなみに、ミーティング中に歌い出すのは林監督の恩師でもある山下総監督も同じだったそうです。ただ、こちらは軍歌「男なら」でした。

2019年8月22日の夜。林監督は何を歌ったのでしょうか…

もうすぐ今日が終わる
やり残したことはないかい
親友と語り合ったかい…


コメント一覧

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eco坊主さん、こんばんは。

「でも、ここで優勝できないのが、星稜。母校のそういうところも大好きです」と、松井秀喜さんが、コメントしてましたね。松井さんらしい、コメントで、優勝できなかった選手や関係者の皆さんにとって、救われるものではなかったのではないでしょうか。

履正社高は、選抜大会の借りを最高の舞台で返せたのは、優勝に花を添えられましたね。

今年の甲子園も、楽しませてもらいました。
eco坊主
おはようございます。

星稜にとっては遠い遠いてっぺんですね。
でも今大会の戦いぶりは見事でした。
それ以上に見事だったのが履正社であるというのも事実でしょう。
チョットしたことで勝利の女神が履正社に微笑んだだけですよね。

履正社の皆さん初優勝おめでとうございます。
そして両校の皆さん熱い夏をありがとうございました。
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