栄冠は君に輝く / 山崎育三郎

「栄冠は君に輝く」は2020年12月2日にリリースされた、山崎育三郎さんの4作目のシングル楽曲「君に伝えたいこと」に収録されています。作詞は加賀大介さん、作曲は古関裕而さん。

古関裕而氏の母校である、福島県立福島商業高等学校 吹奏楽部と福島大学付属小学校 合唱部とのコラボ

夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」は1948年に朝日新聞社が歌詞を募集し、合計で5252もの作品が寄せられました。

当時、入選したのは加賀道子さん。石川県根上町（現；能美市）で郵便貯金の仕事をしていたそうです。

道子さんは当時、「職場に電話がかかってきて、ウワァッちゅうてびっくり。朝日新聞の方が『宝くじに当たったようなものですね』といわはった」と語っています。

その賞金は5万円。当時の公務員の初任給の10倍以上という大金ですから。

しかし、実は本当に作詞したのは、道子さんと婚約していた大介さん。

当時、大介さんは短歌や演劇の会を主宰し、脚本を書いていたプロの執筆家。でも、「賞金目当てと思われるのが嫌や」と道子さんの名で応募。

道子さんはこのときのことを、「夫は『絶対、本当のこといっちゃだめだ』って。はいはい言うよりしかたなかった」と語っています。

新聞記者などに作詞のきっかけを聞かれても、「スポーツが好きですから」と話すだけ。

そして、20年後の1968年第50回記念大会をきっかけに大介さんは真相を公表しました。

また、「苦しめたな」と道子さんをいたわったそうです。

作曲は早稲田大の応援歌「紺碧の空」や阪神タイガース「六甲おろし」、読売ジャイアンツ「闘魂込めて」などを手がけた古関裕而さん。

誰もいない甲子園のマウンドに独り立って曲を作ったそうです。

道子さんは大介さんが亡くなったあと、大会に招かれてスタンドで古関さんと初めて出会い「いい歌詞ですね」と話しかけられたそうです。

根上町と言えば、ニューヨーク･ヤンキースなどで活躍した松井秀喜さんの出身地。

松井さんが甲子園で活躍した年、道子さんは友人から誘われて、松井さんの自宅を訪ねたことがあるそうです。

「この歌、大好きです」という松井さんからサインをもらい、年賀状も来たそうです。

後年、道子さんの長女の新川淑恵さんは2003年の甲子園で開会式を見たそうです。

森山良子さんが唄った「栄冠は君に輝く」を聴いて「ああ、父は生きている」と思い、涙が止まらなかったそうです。

厳格で無口だった大介さんとは、淑恵さんが大学一年のときに亡くなるまで、あまり話さなかったとのこと。

その後、淑恵さんは小学校の先生になり、2007年から母校の根上町浜小学校の教頭先生になりました。

「夢に向かって生きろ、そういわれている気がします」とのことです。この浜小学校は松井さんの母校でもあります。

道子さんは夏が来ると趣味のカラオケで「栄冠は君に輝く」を唄うそうです。

♪ たまのいのちにかようもの 美しくにおえる健康

この三番の歌詞が一番好きだそうです。

「やりたくても野球ができなかった夫の思いがこもっている」

農家の次男に生まれた大介さんは少年のころ、裸足で野球をしていたそうです。そして、試合でのケガで16歳の時に右足のひざから下を切断。

それでも、大介さんは松葉づえで自宅前の浜小学校に行き、子どもたちの野球をみつめていたそうです。

その大介さんは、1973年、58歳という若さでこの世を去りました。

今年も夏の甲子園の季節がやってきました。

本日も、拙文最後までお読みいただきありがとうございます。

今日という日がみなさまにとって、よい一日になりますように。

また、明日、ここで、お会いしましょう。それではごめんください。