セイバーメトリクスの中に“ピッチャー酷使指数(pitcher abuse point ; PAP)”という、何とも恐ろしげな名前が付いた指数があります。
これは先発ピッチャーの球数から100を引いて、その数を3乗したポイント数をシーズンを通じて累積していくことで表す指数です。
TポイントやPontaポイントと違って、たくさん貯めれば“うれしい”と言うものではなく、1シーズン通算10万ポイントを越えると“故障の可能性が高くなり”、20万ポイントを越えると“いつ故障してもおかしくない状態”と判断する“うれしくない”ポイントなのです。
たとえば
100球なら(100-100)^3 = 0ポイント
110球なら(110-100)^3 = 1000ポイント
120球なら(120-100)^3 = 8000ポイント
150球も投げてしまうと(150-100)^3 = 12万5000ポイントと危険ゾーンに一気に突入です。
この考え方はMLBでは「ピッチャーの肩や肘は消耗品。休息しても完全に回復せず、擦り減っていく」という考え方があるからです。
ですから、近年のMLBの先発ピッチャーは100球しか投げないのです(契約を交わしてるピッチャーがほとんどらしい)。
よって、MLBのピッチャーはシーズンを通じても10万ポイント以下が平均値になるそうです。
ちなみに、昨年NPBでの田中将大選手はレギュラーシーズンで21万4666ポイント、ポストシーズンが24万3683ポイント。合計45万8349ポイントでした。だから、田中選手の故障は起こるべくして起こったと考えられているようです。
一方、MLBで既に投げていたダルビッシュ有選手は9万8298ポイントだったそうです。
投げ過ぎだけが今シーズンの故障に繋がったとは思えませんが、田中選手にしてもダルビッシュ選手にしても肘の故障を抱えてしまいました。
ちなみに先日の中京高のピッチャーで計算してみますと(1047-100)^3 = 8億4927万8123ポイントとというとてつもない数字になってしまいました。
このPAPは医学的、科学的根拠は希薄だと言われていますが、投げ過ぎを防止するという意味では、参考になる一つの指標であるかも知れません。