この決定は、今後、他の競技大会に対して、一石を投じるものかもしれません。近年の夏の猛暑に備え、東京都少年サッカー連盟が今年から7月、8月の公式戦を全面的に禁止する方針を決めました。
昨年までは小学五年生、六年生の全国大会までつながる約600試合が組まれていました。同連盟委員長は「試合をこなすことよりも子どもの命、安全が大切だ」と話しており、区や市の大会も7月、8月の開催を避けるように要請しています。熱中症対策で一律に公式戦の開催を禁止するのは、異例なことです。
日本サッカー協会では、以前より選手の年代を問わず、体調面を考慮して夏の公式戦の在り方が議論されており、今回の都少年連盟の決定は先駆的な事例となります。地方組織が、こういう決定が出来るのが、野球の組織とは違うところです。ちなみに、大学サッカー関係者も関心を示しているそうです。
直接的には関係ありませんが、現在Jリーグのシーズンは、春から始まり秋に終わる春秋制を採用しています。Jリーグの前身であるJSL(日本サッカーリーグ)では、最後の7年間の1985年度(9月6日から1986年3月26日)~1991年度(9月7日(1部は9月14日)~1992年3月29日)までを、秋春制で行っていた時代がありました。しかし、これは日本の新年度が4月から始まるため、それに合わせたスケジュールになっています。日本海側の北部を中心に豪雪地帯も多いこともあり、1993年に創設されたJリーグでは、春秋制が採用されています。
以後、2008年に秋春制が提言されたことがありましたが、北海道コンサドーレ札幌、モンテディオ山形、アルビレックス新潟、カターレ富山、ガイナーレ鳥取などの雪国のクラブを中心に反対の意見もあり、移行には至っていません。
2017年にJリーグの秋春制の移行時期を、「(1)2019年から移行、(2)2022年から移行、(3)現状維持で当面移行しない。この場合向こう10年間はこの議論を凍結する」の3つの案を掲げ、議論を重ねた結果、Jリーグ理事会でシーズン秋春制の移行を正式に見送ることが決定しました。現行方式の方がリーグ戦の実施可能期間が1か月以上長く、学校の年度などとほぼそろっていることなどが理由でした。また12月、1月、2月頃は、地域によっては雪が積もるため、Jリーグの試合を開催しづらいデメリットもあります。
今のところ、夏の暑さについては議論には上がっていませんが、改めて検討することがあるかも知れません。
ところで、ヨーロッパのシーズンは日本とは違い8月下旬にシーズンが開幕して、5月頃に終わる秋春制を採用しています。ちなみに、ロシアは、寒く雪が多く降るため春秋制でしたが、2012年に他の国と同じ秋春制に移行しています。
年度が秋から始まる西ヨーロッパのカレンダーを元にしていることもあり、夏は年度末であるため長いバカンスに出かけ、集客力が低下することもあります。それに、ヨーロッパの夏は暑いため、サッカーをやる環境ではないと思われていることもあるでしょう。そのためワールドカップなどの国際大会は、シーズンが終わる6月に開幕する日程となっています。
さて、都少年連盟には小学一年生〜六年生の約3万6千人、803チームが登録されており、都道府県別では全国最大規模となります。昨年は各チームに熱中症への注意を促した上で7月に公式戦を実施していますが、同月中旬に小学六年生が熱中症を起こし、管理責任を問う苦情が寄せられたそうです。その後、「注意喚起をしても事故が起きては意味がない」(委員長)との問題意識から、8月末までのほぼ全試合にあたる500試合以上を9月以降に延期しました。気温などの条件を満たす場合だけ特別に許可しています。
熱中症の予防には、気温や湿度から総合的に計算する「暑さ指数(WBGT)」があり、環境省の熱中症予防サイトで各地方の予報を見ることができます。日本スポーツ協会はこのWBGTが25~28度になると「積極的に水分、塩分を補給する」、28~31度だと「激しい運動や持久走は中止」という指標を出しています。