銭形幸一は、モンキー・パンチさんのマンガおよびそれを原作とするアニメ「ルパン三世」シリーズに登場する、通称「銭形警部」です。
ルパン三世の逮捕に執念を燃やす警視庁所属の警察官で、階級は警部。現在は、国際刑事警察機構(International Criminal Police Organization=ICPO。通称:インターポール)総務局国際協力部第一課に出向中。
江戸時代の有名な岡っ引・銭形平次(小説「銭形平次 捕物控」の主人公)の6代目(来孫)となります。仕事熱心かつ真面目で人が良い性格で正義感、責任感が強く、「ワシはICPOの銭形だ!」「逮捕だ、ルパァ~ン!!」が口ぐせです。
さて、元;日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告は、現在ICPOから国際手配されています。また、2020年1月9日には、ゴーン被告の奥さんのキャロルさんについても東京地検が警察庁をつうじて、ICPOに国際手配を要請しています。そして、先日には東京地検特捜部がゴーン容疑者と、国外逃亡に協力したグリーンベレーの元隊員ら3人について、不正に出国した疑いなどで逮捕状をとりました。
そのICPOは、国際犯罪の防止を目的として世界各国の警察機関により組織された国際組織で、本部はフランス南東部の都市リヨンにあります。現在の加盟する国・地域は194を数え、国際連合に次ぐ国際的な組織になっています。ちなみに、加盟国の分担金により運営されており、日本が拠出する分担金は2番目に多くなっています(2019年時点)。
主な活動は、国外逃亡被疑者や行方不明者、盗難美術品などの発見、身元不明死体の身元確認などに努める「国際手配制度」や、国際犯罪および国際犯罪者に関する情報のデータベース化とフィードバックなどです。
司法警察権は、各国の主権事項に属するため、ICPOには逮捕権はなく、現場にで犯人を追い詰めるような任務は負っていないのです。
日本は1952年のICPOの前身組織の時代から加盟しており、1996年にはICPOの総裁も輩出し、警察庁から若干名ですがICPOに人材も派遣しています。
さてさて、2020年1月2日にレバノン当局は、ゴーン被告について日本の要請に基づいて出されたICPOからの「赤手配書」を受理しています。この「赤手配書」とは、犯人の引き渡し請求が前提となり、逃亡犯人などの身柄の拘束を求める手配書のことです。手配書には、右上に塗られた色から、さまざまな種類と呼び名があ、「赤」「青」「黄色」「黒」「紫」など7色の手配書に加え、美術品の盗難に関する手配書などもあります。「赤」は一番重要な手配書になります。
2007年にはイラク・フセイン元大統領の長女、2011年はリビア・カダフィ大佐、2017年は韓国の朴槿恵元大統領の知人の娘、金正男さん事件に関わったとされる北朝鮮籍の男4人が国際手配されています。
ただし、ICPOには、「政治的」「軍事的」「宗教的」「人種的」などの性格を持ついかなる干渉や活動を行うことが憲章で禁止されています。よって、ゴーン被告が会見で、日本で「政治的迫害を受けた」と主張したのは、ICPO憲章を念頭に置いていた可能性があるとも考えられます。
ということで、銭形のとっつぁんが、「ワシはICPOの銭形だ!」とレバノンに乗り込んで、「逮捕だ、ゴォ~ン!!」というわけにもいかないのです。