もうすぐ、MLBスプリングトレーニング(キャンプ)が始まります。今シーズンの見どころはダルビッシュ有選手(テキサス・レンジャース)、田中将大選手(ニューヨーク・ヤンキース)の復活度合いと、ロサンゼルス・ドジャースに移籍した前田健太選手の活躍になります。
さて、MLBから日本球界に復帰した
松坂大輔選手 (現; 福岡ソフトバンクホークス)
藤川球児選手 (現; 阪神タイガース)
和田毅選手 (現; 福岡ソフトバンクホークス)
の三人のピッチャーと、今年もMLBで活躍が期待される
田沢純一選手 (ボストン・レッドソックス)
田中将大選手
の二人のピッチャー。偶然なのか必然なのかは判りませんが、過去にMLBへ行ってから米国でトミー・ジョン手術を受けた日本人ピッチャーです。
ここに遅かれ早かれ、前田選手が仲間入りするかもしれません。
田沢選手以外のピッチャーは高校時代から注目されており、日本のプロ野球を経てメジャー入りしています。
田中選手がポスティングでメジャー入りする際に「高校時代からの投げ過ぎ」が懸念されていて、それが現実になりました。また、ここで前田選手の契約の中にヒジに異常があり、手術前提での契約内容ということが言われていますが、まさしくそれが現実的になってしまったということでしょうか。
田中選手はイーグルス時代、日本シリーズ第6戦で160球を投げ、第7戦でもクローザーとして連投。そのニュースは米国でも驚きを持って伝えられていました。
高校時代から甲子園で投げ続け、プロ7年間で公式戦175試合に登板。そんな田中選手はメジャー側が慎重な態度だったこともあり、交渉前に渡米して健康診断を行い、ヤンキースへの正式入団前にも球団のメディカルチェックをして、問題なしとされていました。
今回ドジャースに入団する前田選手は健康診断で右ヒジの問題が明らかになりました。詳細は報道されていませんが、ピッチャーの持病ともいうべき遊離軟骨(通称ネズミと言われています)が原因とは考えにくく、米国メディアが指摘するように、右ヒジ靱帯にはおそらく、すでに傷があり、遅かれ早かれトミー・ジョン手術が必要になるということになります。
昨年の前田選手は29試合に先発し、206回1/3を投げて15勝で最多勝を獲得しました。登板間隔は中6日が12回、中5日が10回、中4日と中7日が2回、中9日(交流戦明け)と中13日(オールスター明け)が1回ずつという状況でした。クライマックスと日本シリーズの登板はありませんでしたが、プレミア12で2試合の登板がありました。極端に投げすぎたようには思えませんけど、それでも長年の勤続疲労が要因であることは間違いないと思います。
それでも、今回の前田選手の契約条件が田中選手らに比べても基本契約がシビアな内容だったのは、ドジャース側のリスク込み料であることは明らかだと思います。でも、これは単に前田選手だけの話ではなく、今後、MLBを目指す日本人選手に対しても同じ状況になる可能性があります。となると、将来、MLBを目指す選手にとっては、日本での投げすぎを回避したいという思いも出てくることでしょう。もしかして、高校生・大学生の中には直接MLBという道を考える選手も増えるかも知れません。
既に米国では「Koshien elbow(甲子園エルボー)」という呼び名で日本人ピッチャーのヒジの状態を呼んでいるそうです。
また、世界最強の労働組合であるMLB選手会も、今回の契約が選手側から見て明らかに不利な契約内容になったことに対して、将来的にMLB入りを目指す選手たちにとって悪しき前例となり、交渉するチーム側に足元を見られやすくなってしまうのではないかと懸念しているとのことです。米国では才能のある人間が巨額の報酬を手にすることが当たり前とされる文化です。その文化の中で異例ともいえる成果報酬型の契約については疑問があるようで、こちらにも、何らかの影響を与えかねません。
今後、MLBの最大の興味は大谷翔平選手(北海道日本ハムファイターズ)であることは間違いないでしょう。現行のポスティングシステムがこのまま存続すれば2019年オフになります。でも、先輩たちが「ヒジ」というリスクを繰り返してしまっていれば、少なからずも大谷選手に与える影響はあります。
1964年の村上雅則さん(元サンフランシスコ・ジャイアンツ)から50年以上続く日本人MLBピッチャーの系譜が連綿と続いていくか。
そういう意味では前田選手の成功の可否は、いろいろな意味で今後の日米球界に影響を与えるかも知れません。