今年の超目玉、早稲田実業高の清宮幸太郎選手。もはや指名されるのかではなく、何球団が1位で競合するのかの興味となっています。
もちろん、各球団は外れ1位に指名する選手も決めていることだと思います。でも、ドラフトの面白さは1位指名選手だけではありません。特に下位指名選手の中に、「あっと驚く」隠し玉がいるはずです。その隠し玉も面白いと思います。
■中山匠 / 株式会社キャプティ
サイド気味のフォームから最速149km/hのストレートを投げる社会人軟式野球キャプティ所属のピッチャー。
小学一年のとき、学校のクラブ活動で野球を始め、中学では宇都宮スターボーイズに所属。文星芸大付進学後、一年春からベンチ入り。一年夏に県4強。二年夏、三年夏は初戦敗退。専修大では1部だった二年春に2試合計4イニングに登板。高校、大学ともプロ志望届は出しておらず、大学卒業後の進路として社会人の硬式野球部にもアピールしたものの、どこからも声はかからず、それでも野球を続けたかったことから、軟式野球の道を選びます。大学最終年で変えたフォームが徐々に完成し、軟式の環境で才能が開花。軟式球は一般的に硬式よりも球速が出づらいとされ、硬式球ならば150km/hを超えるスピードが期待されます。
「指名されたら挑戦したい気持ちはある。会社も『ダメなら戻ってくればいい』とまで言ってくれました。チャンスがあるなら、飛び込んでみたい」
■小村翔悟 / 横浜BBCスカイホークス
「『もう一度、お前と野球がしてえよ。だから絶対にやめるな。プロでまた対戦しよう』って。本田の言葉があったから、今の自分があります」最速149km/hのストレートで今秋ドラフト上位候補の星槎国際湘南高・本田仁海選手との約束だそうです。
小学六年のとき軟式野球チームでキャッチャーとして野球を始め、中学では軟式「湯河原ベースボールクラブ」でピッチャー。星槎国際湘南高進学後、一年春からベンチ入り、秋からエースナンバーを背負いますが、二年春に右肩を故障し、内野手に転向。しかし、新任で野球経験がないコーチの指導に納得がいかず、二年秋に高校を中退し、社会人クラブチーム「横浜BBCスカイホークス」に所属。何らかの事情を抱え、高校を中退した選手や社会人が集まり、通信教育で高卒資格を取得しながら大学進学や独立リーグ入りなどを目指し、練習に励むクラブチームです。日本学生野球協会に属していないため、公式戦記録はないものの、オープン戦で大学生相手に木製バットで3割を超える打率を記録。プロ3球団のスカウトが視察に訪れるなど、バッティングの評価は折り紙つきです。
「本田とプロで対戦したい。でも、一番はコーチを見返してやりたい気持ちですかね」
■田中耀飛 / 兵庫ブルーサンダーズ
小学二年から野球を始め、英明高では三年夏の4強が最高で甲子園出場はなく高校通算ホームラン18本。芦屋大へ進学後はベースボール・ファースト・リーグ兵庫に所属。無名に近い存在ながら同僚で元阪神タイガースの井川慶選手が「プロが育ててみたい選手でしょう」と素質を認める長距離砲。在籍4年目の今シーズンは109打数46安打の打率.422、ホームラン15本、39打点で三冠王。長打率.954、出塁率.552を誇り、詰まった球もホームランに出来、ライト方向へも一発が打てるようになってきています。特にリーグ選抜で出場したプロとの練習試合で、7月の読売ジャイアンツ戦ではホームラン2本を含む4安打6打点。9月の東北楽天ゴールデンイーグルス戦でも2試合連発で、二・三軍相手とはいえ、バックスクリーンへたたき込んだ一発にはスカウト陣から驚きの声が上がり、MLBスカウトからは「ドラフトにかからなかったら、うちでメジャーに挑戦してほしい」とラブコールを受けています。
「独立の環境はみんながプロを目指しているぶん、ハングリー精神がすごい。10歳上の選手が、必死になってプロを目指す姿を間近で見てますから。だからこそ六大学とかの野球エリートには負けたくないんです」
■日下部啓太 / 日大国際関係学部
最近ドラフトでも指名が目立ってきた東海地区大学野球連盟静岡リーグに所属する日大国際関係学部の変則サウスポー。
フォームはサイドからインステップするため、左バッターにとっては背中から球がくるような感じであり、サイドスローでありながらも沈むボールで勝負するタイプ。球速は140km/hは出ていないものの、4季連続で最優秀防御率を獲得しています。ちなみに同じようなタイプで今年新人で活躍した東北楽天ゴールデンイーグルスの高梨選手(ドラフト9位)投手が43・2/3イニングで防御率1.03という成績です。左ピッチャー不足のプロで左バッターキラーとしてワンポイントで一軍戦力になる可能性はあると思います。
他にBCリーグ・滋賀ユナイテッドの山本祐大選手(捕手)、泉祐介選手(外野手)、同じBCリーグ・信濃グランセローズの山崎悠生選手(投手)、大阪ガスの岸田行倫選手(捕手)、大分商高の広沢伸哉選手(内野手)などの名前が挙がっています。ただ、不思議なのはいつも「隠し玉」ということで名前が出るのは阪神タイガース、オリックスバファローズがほとんどで、ソースがデイリースポーツであることです。
上位指名の選手と違って、まだまだ粗削りな点はあると思います。今は育成ドラフトもありますので、近年は一芸に秀でる選手を指名することもあり、また、環境が変わることで大化けする可能性もあると思います。
下位指名の選手が活躍することこそ、スカウト冥利でしょうし、ファンとしても面白いものです。
さて、今年はどんなドラマがあるのでしょうか。