世の中には職人と呼ばれる方がたくさんいますが、この職人技は何の役に立つかはわかりませんが、唯我独尊的な職人技だと思います。
東京にある野球専門店の方は金属バットが打球をとらえた音を聞いただけで、「これは〇〇社の〇〇という型ですね」と見事にいい当ててしまうそうです。
「僕だけじゃなく、業界関係者は、だいたいわかると思いますよ」
とのことですが、そんな技を一般人が身に着けても何の役にも立ちません。
「近年、高校生の7割から8割くらいがミズノの『Vコング02』か、SSKの『スカイビート31K』を使っている。今年は特にVコング02が圧倒的に多かったですね」
というのが、昨年夏の甲子園でのホームランを記録した金属バットです。
Vコング02は10年以上前に発売された金属バットの「最高傑作」と言われる人気のあるバットです。高校通算ホームラン87本をマークした中田翔選手(北海道日本ハムファイターズ)が愛用したことで知られ、それをきっかけに大ベストセラーとなりました。
その牙城を崩したのが、2015年に発売されたスカイビート31Kなのだそうです。
「Vコングは『打感(打った感触)』が柔らかい。バットが凹むぶん、その反発で飛距離も出る。打者からすると、芯の部分が広く、捕らえているというか、乗せてる感じがするようです。神戸製鋼で開発された金属バット専用のHS700とういう特別なジュラルミンを使っています。ただ、選手によっては、柔らかい素材は、スピードボールに負けていると感じてしまう。その点、逆にスカイビート31Kは硬い。凹みは弱いけど、戻りが早いので飛ぶ。また、とても高い音がするので、バッターは気持ちがいい。そこも人気の秘密かと思います」
というのは、先の店員さんです。
ちなみに高校通算ホームラン記録を更新した清宮幸太郎選手(北海道日本ハムファイターズ)はローリングス社製を使っていました。昨夏の甲子園で、新記録となる大会通算6本のホームランを記録した中村奨成選手(広島東洋カープ)はゼットの「ネオステイタス」というバットだったそうです。
「清宮選手のバットは完全にスラッガータイプ。非常に珍しい。別格だと思われているのか、彼と同じバットを使いたいという問い合わせがきたことはありません。中村選手に関しては、やはり問い合わせがけっこうきてます。これは操作性重視の、アベレージタイプのバット。このバットで、あれだけ長打が打てるというのは、さすがです」
というのも、先ほどの店員さんです。
う語っていたものだ。
高校野球で使用される金属バットは、2001年秋から「900g以上」という規制が設けられています。800g台だと金属を薄くし、反発力を高めるという細工が出来るそうで、それを防ぐのが狙いになります。また重ければ重いほどスイングスピードが落ちるため、ボールが飛ばなくなるという計算もありました。
しかし、近年では肉厚でも反発力の高い金属が開発され、トレーニング法の発達で900g以上のバットでも高校生は軽々と振ってしまいます。また、重心の位置を変えることで軽く感じるバットもあります。
「スカイビート31Kは、ニアバランスといって、重心をバットの手元に寄せた。それと、ヘッドキャップに金属を使用したことで、900gあるとは思えないほど振りやすく、かつヘッドの効くバットに仕上げた。それから数年前までバットの長さは84cmが主流だったのですが、今は、83cmを使う選手が急増した。重くても振りやすいバットは日進月歩で変化しています」
というのは、先ほどの店員さん。
ということで、2017年夏の甲子園でのホームラン68本を金属バット別に並べてみました。
17本 Vkong02(ミズノ)
13本 スカイビート31K(SSK)
6本 ネオステイタス(ZETT)
5本 ZETT POWER 2nd(ZETT)
4本 スカイビート31(SSK)
4本 Fzero730(ZETT)
3本 ネオフライト21(SSK)
3本 J Kong(ミズノ)
2本 ミズノプロ(ミズノ)
2本 VKong TH(ミズノ)
2本 MG セレクト001(ミズノ)
2本 J Kong L1(ミズノ)
1本 ベクサム(ディマリニ)
1本 ビッグバンショット(ZETT)
1本 ネオフライト21(SSK)
1本 スピードアクセル(アシックス)
1本 スカンディウムK(ルイスビル)
1本 スカイビート31K LF(SSK)
1本 ZETT POWER X(ZETT)
ただし、同じバットを使ったからと言って、必ずしもホームランを打てるという保証はありません。