今年のプロ野球ドラフト会議では例年以上に高校生候補の注目度が高く、最初の1位入札時に11球団が高校生指名でした。もちろん大学生にも大きな期待を集める選手が多数おり、最終的には高校生5球団、大学生6球団、社会人1球団という結果でした。
中でも、東洋大150km/h三人衆の評価はドラフト前から高く、甲斐野央選手(福岡ソフトバンクホークス指名)は186cmの長身から最速159km/hを投げ込む右の本格派。大学三年春までのリーグ戦では通算0勝1敗と目立った成績を残していませんが、昨年秋のリーグ戦ではすべてリリーフ登板で5勝を挙げ、最優秀投手とベストナインを同時受賞しています。その時は35回を投げ被安打17、奪三振40、防御率2.06という好成績。真っすぐに加えフォークで空振りが取れる点も評価が高いです。
上茶谷大河選手(横浜DeNAベイスターズ指名)は、大学入学後はケガの影響もあって、昨年までの3年間はリーグ通算で計5回1/3の登板で、未勝利でしたが、四年生となった今年春のリーグ戦で大ブレイク。計14戦中10戦で先発し、70回2/3を投げ、被安打47、奪三振87、防御率2.29。6勝2敗の好成績でMVP、最優秀投手、ベストナインの3冠に輝いています。中でも駒澤大との三回戦では9回途中まで投げて8連続奪三振を含む1試合20奪三振のリーグ新記録を樹立。柔らかい腕の振りから最速152km/hを投じるスリークォーター右腕で、直球にスライダーやカットボールなどの変化球を交えて両サイドに投げ分け、投球の安定ぶりが高評価されています。
さて、我らが中日ドラゴンズの2位指名の梅津晃大選手。何とこの梅津、リーグ戦では大学四年春まで0勝と白星なし。その間、1部リーグでは計5試合で17回を投げ、被安打10、奪三振18、防御率1.59で0勝2敗という成績でした。それにも関わらず、ドラフト上位候補として名前が挙がったのは、潜在能力の高さが挙げられています。三年秋のリーグ戦では先発・救援で4試合に登板。全戦で150km/h以上をマークし、国内外のプロスカウトから評価を獲得。その最速は153km/hで威力のある直球で内角を突き、スライダー、フォークなどの変化球を織り交ぜバッターを打ち取っていきます。
そして、大学初勝利になったのが、ドラフト会議直前の10月18日の東都大学第7週第3日の国学院大戦でした。この試合、7球団が視察する中、5点リードの5回から登板し、この日最速の151km/hの直球で押し、4回をパーフェクトに抑えました。勝利球を渡された梅津選手は「泣きそうになった。もう、(勝利は)届かないのかなと思ったこともあって…。他の投手、野手に感謝の気持ちでいっぱいです」と満面の笑みでした。
実はこの大学最終戦で初勝利を挙げた、その3日前の10月15日。お母さんが脳出血で倒れたとの一報がお父さんから告げられていたそうです。ショックを受けながら、つかんだ大学初星。直後の練習休みにウイニングボールを持って病院に駆けつけたそうです。きっと喜んでくれたことでしょう。
また、10月25日のドラフト会議ではドラゴンズから2位で指名されました。指名をされた瞬間は、「ホッとしましたが、周りの友人の反応などをみて、プロになった実感が湧いてきた」と質問に丁寧かつはっきりと答え、ドラゴンズに指名されたことに対しては、「大学の先輩である大野奨太選手や、憧れの松坂大輔選手がいるので、いろんなことを学びたい」と先輩と憧れの存在から多くの技術を吸収する姿勢を見せています。
会見では気丈に受け答えしていたものの、内心ではお母さんのこともあり不安だったようで、「ホッとしました。脳出血で入院している母に、いい報告になったと思います」。まだ話すことはできないそうですが、この日は両親そろって病院のテレビでドラフト会議を見守ってくれていたそうです。
この秋にリーグ戦初勝利を掴み取った梅津選手。大学4年間で掴んだのが1勝ですが、その分、「プロでは誰よりも多く勝ちたい」と勝利に飢えていると思います。
また、終始会見で語ったいた、「感謝」の一言。「支えてもらっている人を思い出して、そんな人たちに恩返しができるようなプロ野球生活を送りたい」と、これからのことを語っています。
今までの感謝を胸に秘め、大学時代に勝てなかった分、プロで勝ち星を積み重ねてくれると思います。